人権集会
今日の五限目は、人権集会。年に一度、各学年ごとに体育館に集まって、外部から招いた講師の話を聞く日だ。今日は私たち二年生の番だ。
「みなさん、こんにちは。今日お話させていただく講師のクゲです」
午後イチの気だるい空気が一変し、体育館がざわめいた。
颯爽と登壇した女性が、あまりにも美人だったからだ。
ピンクベージュのセットアップスーツをサラッと着こなした、八頭身スタイル。艷やかな黒髪はウェーブがかったセミロングで、遠目にも美人と分かる顔は、人気女優に似ている。
「戸羽瑠璃に似てない?」
体育座りで座る列の後ろから、顔を出して星来が言った。
「思った! とばるり、似てるよね」
前を向いたまま、小声で答えた。
「もしかして、あれかな。芸能人が突然学校へ来て驚かせるテレビ番組、よくやってるやつ」
「うちの高校に来る?」
「来るわけないか」
ここは田舎の無名高校だ。偏差値レベルは中の下で、誇れる特色もない。
「今日は多様性についての特別講演いうことで、『ルッキズム』について、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。最初に説明動画を一通り見てもらってから、お話に入ります」
とばるり似の講師がマイクを通して話し始めた。声も綺麗だ。女優似の美人がルッキズムについての講義をするなんて、ちょっとモヤる。
『ルッキズムとは「外見至上主義」のことで、容姿の優れた人を優遇し、そうでない人を下に見たり、差別する思想や社会現象を指します』
大きなプロジェクタースクリーンに映し出された、ルッキズムについての解説動画を眺めながら、そりゃそうだよなあという感想が湧く。
だってやっぱり、みんな美人とイケメンが好きだもん。私だってそうだ。




