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不変

 僕には秘密がある。誰にも明かせない秘密。


 だけど、それを知っている人は何人かいる。最愛の人、親族、そして、友人。


 僕は、友人達との日々が楽しかった。少々少ない時間ではあったが、確かに充実し、そして僕の中の空虚が埋められる感覚がした。


 それでも僕は、知られたくなかった。


 受け入れてくれるのは分かる。そしてきっと僕を許してくれるのも想像に容易い。だけど、だけど、それが嫌なんだ。


 僕は僕を演じる。僕が演じる僕は、何よりも強く、そして美しく、そして可憐だった。


 だけど僕は、実に哀れで、そして罪深く、その罪は全て自らの意思で行ったこと。仕方が無くてやった訳じゃ無い。僕が、僕の為に、自分の為だけに行った罪、そして秘密。


 それを知られたくない。罪だから、そう言う理由だけじゃ無い。


 それを知って、関係が崩れるのが嫌なんだ。友人としての関係は確かに続く、そして僕達はこれからも共に行動するだろう。


 だからこそ、僕は嫌だ。それならただじっと、ここに蹲っている方がよっぽと良い。


 友人として関係に、僅かな、しかし確かな、溝が出来る。僕はそんな小さな溝さえも飛び越えられない臆病者だ。


 ああ、そうだ。僕は臆病者だ。産まれた時からそうだ。ずっと、ずっとそうだ。僕は臆病者だ。だから僕は最愛の人から離れた。そして妹を捨てた。


 弟を、殺した。


 何もかも逃げ出そうとした。けれど結局それは誰も許してくれなくて、結局捕まって、僕はここにいる。


 ああ、僕はどうすれば良かった? あのまま一緒に逃げ出してしまえば良かったの? あそこで死んでしまえば良かったの?


 ああ、分からない。


 僕は何をすれば良かった? 僕は、この呪いを背負いながら、最愛の人と共に苦楽を共にしようとしている。ああ、それだけは駄目だ。この呪いは性格が悪い。


 僕を縛って離さない。きっと今後も、僕の意思も関係無く、そしてそれは大きな愛へと毒牙を向ける。


 僕はどうすれば良かったの? 僕は、どうすれば幸せになれたの?


 僕は、何がしたかったの?


 何も苦しかった訳じゃ無い。僕は幸せだった。だからせめて、貴方の、貴方達の幸せを願います。


 僕は変わってしまった関係を受け入れられない。貴方達の所為じゃ無い。これは僕が臆病だから。僕に勇気が無いから。


 ごめんなさい。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。


 ただ、幸せになりたかっただけなの。

子供じゃあるまいし

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