しらたま
茹だるような暑さの午後だった。
ぽこん、ぽこんとしらたまは次々と浮かび上がった。
私はくつくつと煮立つ小鍋のなかで踊るように跳ねるそれを、じっと見つめる。
白い肌がお湯の表面にずらり並んでも、すぐに掬い上げるのではなく数分の間待たなければならない。その間にシンクに水を張ったボウルを置いて、氷を放り、頃合いになったらそこに掬い上げたしらたまを入れて冷ますのだ。
水のなかでしらたまはつやつやと生きものみたいに輝く。だから硝子の器に映えるだろうと食器棚から、厚くて重たい、だけれど涼しげな色合いの硝子皿を引っ張り出す。
ととと、と盛り付けてきび砂糖ときな粉をたふたふと振りかければ、その一皿はとても美しいたべものに見えた。
小振りな銀の匙で、そうっと驚かさないように掬うと、しらたまは茹でる前よりも確かな重みを指先に伝えてくる。
ひょい、と一つ。ぱくっ、ともう一つ。どこまでもなめらかな舌触りと、噛みしめる度に感じるささやかな甘味と弾力。
溶けて欠片になった氷が、空っぽの硝子の器のなかで微かな光を放つ。
開け放った窓の外で、真青の空を切り開くように、飛行機雲がひとすじ駆けていった。