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*小説・エッセイ・散文・その他*

しらたま

作者: a i o

 

 茹だるような暑さの午後だった。


 ぽこん、ぽこんとしらたまは次々と浮かび上がった。

 私はくつくつと煮立つ小鍋のなかで踊るように跳ねるそれを、じっと見つめる。

 白い肌がお湯の表面にずらり並んでも、すぐに掬い上げるのではなく数分の間待たなければならない。その間にシンクに水を張ったボウルを置いて、氷を放り、頃合いになったらそこに掬い上げたしらたまを入れて冷ますのだ。

 水のなかでしらたまはつやつやと生きものみたいに輝く。だから硝子の器に映えるだろうと食器棚から、厚くて重たい、だけれど涼しげな色合いの硝子皿を引っ張り出す。

 ととと、と盛り付けてきび砂糖ときな粉をたふたふと振りかければ、その一皿はとても美しいたべものに見えた。

 小振りな銀の匙で、そうっと驚かさないように掬うと、しらたまは茹でる前よりも確かな重みを指先に伝えてくる。

 ひょい、と一つ。ぱくっ、ともう一つ。どこまでもなめらかな舌触りと、噛みしめる度に感じるささやかな甘味と弾力。

 溶けて欠片になった氷が、空っぽの硝子の器のなかで微かな光を放つ。

 開け放った窓の外で、真青の空を切り開くように、飛行機雲がひとすじ駆けていった。





挿絵(By みてみん)






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― 新着の感想 ―
[一言] 涼やかで、美味しそうなのです^_^
2023/06/21 18:30 退会済み
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