プロローグ
周りは気がついたら火の海だった。
ここにいるのは、ずっと敵として睨み合ってきた
アイツと俺だけ。
命の最後とはこんなにも呆気のないものなのかと
霞む視界にアイツを移しながら思う。
『最強』と『厄災』と言われたきた
アイツと俺がこんなにもあっさりと
命の終わりを迎えようとしていた。
なんとも滑稽で今の自分に笑いさえ起こる。
血だらけで立っていることもままならない
鉛の様に重い身体。
自慢の黒髪は炎で焦げて。
魔眼と言われた紅い眼は今やその力も発揮しない。
只今あるのは、命の終わりをゆるりと迎えようとする
肉の塊だった。
目の前のアイツも同じだ。
血だらけの体。
絹の様だと謳われた長く美しい白髪は黒くなり。
なんでも見通せる『千里眼』と言われた澄んだ青色の瞳には光が入っていなかった。
だか、そんな終わりを前にして
俺と同じく
アイツも笑っていた。
「…ねぇ、私たち…もう、終わりみたいですね…。」
クスクスと場に似合わない笑いを含みながらアイツは話しかけてきた。
「そうだな…マジでまったくなんでテメェと一緒に死ななきゃなんねーんだよ、俺ァ…」
俺も口元をにやつかせながら
アイツの呼びかけに応えた。
「…私は、少し。嬉しい。気もしますがね…」
「はぁ?きもっ!マジできもっ!テメェのそういう意味わからんところマジで無理!」
「はははははっ!」
俺の返答を聞いたアイツは穏やかそうな女みたいな顔で大口開けながら大笑いをした。
そんなアイツを俺は軽蔑の目で見返した。
「そんな、汚物をみる様な目で見ないでくださいよ…。…私はね。案外貴方のことを敵ながらも憎めない部分があったんですよ…」
「…はぁ?!マジで意味わからん…」
「そうですね…もし…貴方と私の生まれや立場が違えば…友、と呼びたいぐらいには…。」
「…アホか、テメェ…それが死際の敵に言う事かよ…」
アイツはまた俺の返答にそうだね、と言いながら笑った。
「ヒジリ」
少しの沈黙の後、アイツが俺の名前を呼んだ。
そして、アイツは今まで見た事のない満面の笑みを浮かべて俺に告げた。
「…私と一緒に謀反者を見つけませんか…?」
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プロローグ
昔、むかし、ムカシの始まりの話