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デフォルト名はジャック

アプリ「にゃんすこ」を開くと「異世界って?」とQ&Aが出た。



Q.異世界って何?

A.キミが住んでる世界じゃない世界のことだよ!


Q.どうすれば異世界に行けるの?

A.このQ&Aを閉じると『異世界転移』『セーブデータ管理』『図鑑』が出るから『異世界転移』をタップ! すると『はい』『いいえ』が出るから『はい』をタップ! すると『潜る時間は?』が出るから数字を入力してね!

異世界に潜る時間は一時間ごとに決められているよ、時間切れになる前にセーブポイントに行ってね!


Q.異世界に潜る時間って?

A.たとえば一時間潜るって決めると、異世界を十時間冒険できるよ! 時間の流れが違うんだね! キミが向こうに居る間、キミはこっちでは眠ったことになるよ! 毎晩忘れずに潜ってね!



余白では赤いドレスを着た長い黒髪の女のディフォルメキャラがウインクをしている。


「…………バカにしてんのか」


幸せにしてもらえるらしいし、女神だが、言動がいちいちムカつく。しかしこういうものは読んでおかなければ後々困る、隅々まで目を通そう。



Q.セーブって何?

A.進行状況を記録しておくことだよ! 普通のゲームと一緒だね! これをしておかないと攻略をどれだけ進めても水の泡だから気を付けてね。逆に言えばセーブをしなければ何回でもやり直せるから活用して上手く攻略を進めてね! 


Q.セーブはどこでするの?

A.セーブポイントだよ! 光ってるところがそうだよ、キミとお助けキャラにしか見えなくて、お助けキャラはセーブポイントを感知できるから見つからなかったら聞いてみてね! 詳しいセーブの仕方はお助けキャラに聞いてね!


Q.お助けキャラって?

A.攻略を手助けしてくれるお手伝いさんだよ! キミに渡せるのはセーブ・ロード能力とお助けキャラだけだから、頑張って!



スクロールはこれ以上できない。魔神王とやらについてだとか、向こうのことや女神について色々と知りたいのだが、教えてくれないらしい。

とりあえず行くだけ行ってみるか。『異世界転移』をタップして『はい』をタップして……『潜る時間は?』どうしようかな。仕事を終えた父が退院する僕を迎えに来るのが大体五時間後、準備に一時間もかからないとは思うけれど、一応四時間にしておこうか。


「四時間っと……何? 携帯端末を頭の傍に置いて体を楽な姿勢に……?」


寝転がり、携帯端末を枕の下に入れる。もし早めに父が来て携帯端末が見つかったら何をされるか分からない。


「…………っ、ん……? 急に……眠、く……」


ぐらぐらと天井が歪み、僕の意識は闇に落ちた。




次に目を開けたのは森の中だった。


「…………は?」


起き上がる──あれ? 左半身が素早く動く。


「……火傷がない」


自分の左手を見たが、綺麗な肌をして……なんか骨ばってる。さっきから目線が高いような気もするし、股間に違和感があるし……


「おはよう、ユウ」


「うわぁっ!? えっ……な、なに……鎧?」


気付かなかったが隣に西洋甲冑を着込んだ……男? かな? どっちかはよく分からないが、とりあえず鎧を着た人間がいた。金属板で全身を覆っており、肌は見えない。


「……も、もしかして、お助けキャラ? さん……ですか?」


「あぁ、全力でサポートするぞ」


僕が立ち上がると彼も立ち上がる。彼と身長はほぼ同じだが、現実の僕よりも背が高い気がする。


「……あの、体に違和感があるんだけど」


「女神様が世界間を移動させられるのは魂が限界だから、肉体はこっちで用意しないといけない、その体はこの世界での肉体だと思え。それなりに顔とか髪型は似せている」


手で触れた感じの髪型は短めのボブヘア。現実の僕は長めのボブヘアのウィッグを被っているが、この体は地毛のようだ。


「年齢は十代後半から二十代前半、性別は男性、身長は168cm、体重は──」


「男性……!?」


「基本的には男性の方が筋力がある、戦いやすいだろうという判断だ。女性の方が体温が下がりにくくていいと思うのだがな」


僕は男っぽい名前を付けられて母に男であることを強要され、男っぽい生活を心がけていた。母が居なくなってから本当の男になるなんて、皮肉だな。


「今更男になったくらいじゃ驚かない……です。えっと、お助けキャラ……さん、名前ないんですか?」


「敬語は必要ない。デフォルト名はジャックだ、名無しだな。ユウが付けてくれ」


「え……? ジャックなんでしょ? ならジャックで。えっと……敬語、敬語やめるんだね、分かりまし……分かっ、た。えっと、まず何すればいいの?」


「…………まず街に移動する。こっちだ」


森の中に放り出すなんて女神は何を考えているんだか、声に出さず心の中だけでそう呟いて、ジャックの後を追う。

知らない間に僕には肩がけの鞄がかけられており、それはかなり重く、舗装されていない道を歩き慣れていないのもあって上手く進めず、ジャックとの距離が離れていく。


「待っ…………」


待って、そう言おうとして躊躇う。

ジャックは鎧を着ている。それも肌が少しも見えない全身を覆うものをだ。彼の方が大変なんだから僕はもっと頑張らなければ。決意した僕は木の根に躓いて思い切り転んだ。

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