喜々とした鏤刻の日々
決まった時間など無い。けれども、彼女はそれに向かって行く姿勢が好きのようだ。それは何のことか? もちろん、推敲することだ。
そこに決められたルールなど無い。実際はあるが、今はそれは省く。日々の中には、通常の仕事があり、家事があり、他その他諸々……。問題はそれに非ず。24時間365日の限られた一年の中の自分を喜々とさせるのは、鏤刻をする喜びを味わうことにある。
彼女は生きていく中の一ページに鏤刻を加えた。これは誰のものでもない。自分のものだ。他人も家族も関係が無い。関係を持たれるのは関わり合いのある人間だけだ。いつしかそれは喜々として、自分を奮い立たせて、気を逸らせ、家族も知り合いをも驚愕とさせてしまうものになっていた。
「きみ子、ご飯出来たけど食べるの? 食べないの?」
「邪魔しないで!! 今から長編900ページ仕上げるんだから! 邪魔しないでよ」
「……ここに、置いておくから」
「誰にも邪魔はさせない……この喜びはわたしだけのものなんだ。鏤刻、鏤刻……鏤刻――」
これでいつしか、わたしは認められるんだ。そうに決まっている、そうでなければここまで喜々とした表情になんてならないわ。誰にも邪魔はさせない。そう、それが誰だろうと何であろうと、練る練り、練られる。この喜びは誰も何にも、代えられない喜びなのだから――




