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グランド・ウォーリアーズ  作者: 滅びの人
7/8

第六話『作戦失敗』

作戦失敗


俺たちがこの作戦で得られたものはその事実だけだった。

輸送マシンの中でも皆顔が深刻で、話しかけるのははばかられる。つまり超話しかけにくい。この重い空気を打ち破る勇気と自信は俺には無く、ただ流れる静寂が終わる事だけをひたすらに祈っていた。しかし、そういう時ほど時間が流れるのは遅いものだ。

恐らく誰も話し出しはしないだろう。まあこの状況ならしょうがないと言っておこう。

みんなもあるだろ?言いたいことがあっても言えないとき。それだよ、それ。

まあ、このまま何も言わなかったら時間が滅茶苦茶長く感じると思うから、無理矢理にでも話すことにした。


「なあ、皆?今日の事は残念だったが、次があるから、な?」


「そうは言ってもねぇーあの警備の薄さで失敗した上に、その理由がうちの隊にあるとなると…他の隊からまた責められことになるわ」


「何のメリットもなかったわ、あたしたちの評判が下がるだけよ」


「敵に狙いがばれてしまった以上、攻め込むことが難しくなったことは否めないな」


おっと?皆が結構辛口評価だねー。気が重くて喋れなかったんじゃなくて、ただ喋らなかっただけなのね。地雷踏んだわ、完全に。気が付いたら黄泉子を除いた全員が死んだ目でこちらを見ている。完全に俺が悪いムードだ。


「す、すまん…今回は他の隊と合同で行くべきだった。敵の警備の薄さで油断した俺の責任だ」


とりあえず謝っておくしかないか。敵の警戒度を読み間違えたのは紛れもない事実だしな。ここは俺が悪いと割り切って考えるしかないか。するとさっきまで気まずそうに下を向いていた黄泉子が顔を上げて俺を見る。


「私のせいで…本当にすみませんでした」


今にも泣きだしそうな瞳と声で真剣な表情で謝る。

そりゃそうだよな、辛いよな。だが、謝る必要なんてない。


「心配するな。お前の行動はどう見ても正しい。俺が保証する」


俺は黄泉子に抱かれた猫を見る。猫も悲しそうな声で「にゃー」と鳴く。黄泉子を励ましているつもりなのかもしれない。実際、黄泉子の行動は正しい事だ。それを敵に利用されてしまったのは残念ではあるが、俺はそこを否定するつもりはない。だって新入生だよ?優しくしてあげないと、俺そこらへんは寛大だからね。


「そうね、考えても無駄だわ。今は謝る言葉でも考えときましょー」


千代も笑ってそう言う。そうさ、心配なんて必要ない関係ないのさ、他の隊なんて。俺たちは


ただの零番隊だ


「もうすぐ着くよ」


耀の声だ。やっぱり話していた方が速いわ。俺たちは輸送マシンが到着するのを待つ。そしてついたのを確認すると作戦開始と同じように降りた。

着いてすぐ俺はあたりを見る。案の定、他の隊の連中が集まって俺たちを睨んでいた。分かってたことだ。俺たちを責めに来たのだろう。事情の一つも知らずに、だ。


「おい」


降りてすぐに聞きたくない声を聞くことになった。見ると零が静かな怒りの表情で俺を見ていた。その後ろには憤怒の炎が見えるような気がした。その幻想の炎を纏って俺を睨み近づいてくる。


「また、しでかしてくれたみたいだなぁ?」


俺の顔を覗き込むように見て、そう問う。その目つきは今にも俺の首を飛ばしそうな勢いだ。俺も負けずに睨み返す。隊長として。


「何だ、その目は?失敗した元凶のくせにむかつくんだよ。どうせそこのチビがへマしたんだろ?」


零が黄泉子を指さして激昂する。その言葉に黄泉子が俺の後ろに隠れる。大体事情の察しはついているらしい。嘘はつくつもりはない。

「ああその通りだな」


「殺すっ」


そう言うと零は思い切り拳を振り上げる。その狙いは黄泉子!!


バキッ


俺は反射的に零と黄泉子の間に立ちはだかるようにして入り込んでいた。

当たり前だが零の拳が俺の顔面にヒットする。意識が飛びそうになるぐらい物凄い威力のパンチだ。これを女の子にしようとしてたんだから、こいつやっぱりヤバいわ。

超痛いし、一瞬よろめいたがまた体勢を元に戻し零の瞳に睨み返す。


「てめえ、何してやがる?」


「愚問だな。女の子に手を上げてる奴がいたからその女の子かばったまでだ。それに、下の責任は上の責任っていうだろ?だからだよ」


「何だと?」


俺のカッコつけ発言に零の表情がより一層険しくなる。


「これで許せよ。お前に被害はないんだからな。あと、俺も後輩殴られかけて…イラついてんだよ」


その言葉に零が一歩引く。この程度でビビるなら、突っかかってくんなよ。零が後ろを向きそのまま歩き出す。もう終わりらしい。しかし、途中で「おいチビ!」と言い振り向く。


「お前の今回の失態を俺が見逃すのは、そこの薄金髪が身代わりになったからだ。次があったら、俺はその身代わりを貫通させててめえを絞める。分かったか?」


それ以上は何も言わず歩いて行ってしまった。このままだと黄泉子が悪い雰囲気になりかねないので、俺は悪あがきすることにした。


「彼女は、黄泉子はこの猫を助けるために行動した。敵に見つかったのは結果論に過ぎない。それとも何か?お前らは、そんなことすらできないのか?」


俺の威圧で俺たちを取り囲んでいた奴らの空気が変わる。最後に何か言おうとしたところで、白髪の青年が歩いてくる。終だ。


「天、そこらへんにしなよ。失敗したのはそっちなんだし、謹慎処分はあるだろうね。まあ誰も…死ななくてよかったよ」


暗い声でそう言う終の言葉には“今のうちに逃げた方が良い”という意味合いが込められていたんだろう、そう思いたい。「行くぞ」と言い俺は隊の皆を率いて、先生のいる教官室のもとへ向かった。


・・・


「大体事情は聞いている。今回はまた早い終了となってしまったな」


「申し訳ない…」

俺は教官室で先生に謝っていた。タバコを吸った先生が俺を見ている。普通の学校だと全校禁煙らしいけど、ここは関係ないみたいだな…俺はさっき失敗した癖に偉そうに開き直ったが、教師の前ではそうはいかない。真面目に謝罪する。作戦を棒に振るったんだからな、しょうがないだろう。

作戦は隊長会で綿密に練られているものだ。あ、ちなみに俺は行ってないよ。屋上で先生と会った時も、多分隊長会の後だったんだろう。俺は逆に来るなって言われるからな。行きたくても行けないんだよね。


「謹慎処分はいつまでが良いんだ?」


先生が問う。


「いや、別にいつまででも良いんですけd」


「は?」


先生がタバコを机に押し付ける。ジュ―と煙が上がる。怖っ!


「い、いえ。次は失敗しないように訓練します」


「そうだろう?早く復帰できるように努力したまえ」


そうして先生に背中を押されるようにして俺は教官室を出た。


・・・


次に俺は部隊室で黄泉子と向き合う。とりあえず皆には出て貰った。黄泉子の顔がこわばっている。安心させるために笑って話しかける。


「大丈夫さ。俺は責めない」


「本当…ですか?」


恐る恐る顔を上げる黄泉子。よほど怖かったんだろう。小刻みに震えている。


「当たり前だ。俺だって一年の時は作戦で足引っ張りまくって、よく皆に怒られた。そんなことの繰り返しだった」


正直、思い出したくない事だ。一年の時の俺は全てにおいてダメだった。今までやってこれたのが奇跡なくらいに。だが、それを乗り越えてここにいる。最強の主人公になってヒロイン救う冒険とか、美少女たちとほのぼののんびり暮らす異世界生活とか、そんな夢物語は手に入れてないし、望んでもいない。ただ、見せてあげたい、知ってて欲しい。こいつに。最強じゃなくたっていい、かっこよくなくったっていいんだって。


「俺は黒歴史でも、笑って話せてしまうような最弱隊長にしかなれなかった。アイツに、零に殴り返せないくらいだしな。だがな」


「!?」


「仲間ぐらい守れればそれでいいんだよ。だから、お前がもっと強くなって仲間を守れるようになるまで、俺がお前を守って育てないといけないだろ?」


「天…さん」


「だからさ、黄泉子」


「はいっ!」


良い返事だ。褒めてあげて、後でなんかあげないと。


「これからもよろしく」


「よろしくお願いいたします!」


実は俺はこの時、密かにある計画を考え付いていた。


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