第四話『戦争の時間』
戦争の時間が始まった
サイレンを聞いた後、俺は隊員たちと共に施設内地下へと向かっていた。しばらく歩いていくと大きな部屋にたどり着く。四角いその部屋の床には今から俺たちが戦うフィールドマップが大きく映し出されていた。その中には主要都市とされる部分が赤い点で表示されていた、が今の東和連合の戦力じゃどこも攻められるはずはない。黄泉子も見たことない景色に目を輝かしていた。だが、そんなことより思うのは…
「やっぱり他の隊には人入ってる…」
その場で既に待機している他の隊を見ても、明らかに俺たちの隊より増えてる。思わずため息が出る。ここまであからさまだとねぇ、困ったねぇー。
「おい」
ふと後ろからドスの効いた声が掛かる。誰だかはもちろん知っている。
「何だよ?零?」
「何だよじゃねぇ」
俺の質問に噛みつくように答える(答えてないな)赤髪の青年。狂峰零は悪い目つきを更に悪くして俺を睨む。怖えよ。
「てめえ何呑気に真ん中の方に来てんだよ?才能無え奴は端で縮こまって居やがれ。そこの姉貴と一緒にな」
そう、狂峰という苗字でわかるかと思うが、零は千代の双子の弟に当たる。荒いが隙の無い強さで東和連合でも屈指の実力を誇る。だから零でも零番隊には入っていない。零が隊長を務める八番隊は予想通り一年生も多かった。く、悔しい。
「自由待機だ。お前に場所を決められる筋合いはない。行きたきゃ自分たちが行けばいいだろ」
俺の言葉に零は顔を歪ませる。
「ああ?何様なんだよその口のきき方はぁ!!」
零が拳を振り上げる。はあ…面倒だな。俺には避ける気もなかったが、その拳は別からの力によりノータイムで止められていた。それをした張本人である青年は自身の白髪をかき上げこう告げる。
「仲間割れは良くない。場をわきまえて」
「なっ!?放せ終!!」
「無理」
鴛弩終、七番隊隊長だ。穏やかな見た目からは想像できない格闘力で敵を捻りつぶしてきたWWSでもなかなか上位の実力の持ち主だ。
「天、零は僕が預かるから。静かにしてて?」
終は零を軽々と持ち上げ、肩に担ぐ。
「はいはい、言われなくたってそのつもりだ」
罵声を浴びせてくる零の声が終に連れていかれて小さくフェードアウトしていく。ああよかった。隊の皆も気を遣って俺のことを離れて見ていた…いや、単純に面倒ごとに巻き込まれたくなかったんだろうな。特に千代は零とあんまり仲良く無さそうだしな。
「あ、あーあー。マイクついたか。皆こちらに注目してくれ」
女性の声が響き渡り、あらゆる方向に向いていた全員の視線が一点に集中する。声の主は…
「先生か」
東和連合の教官を務める常本先生だった。黒スーツでビシッと決めていていかにも“出来るオンナ”みたいな雰囲気を醸し出している。
「今日の作戦について説明する。」
どうやら今日の作戦について説明してくれるらしい。いやー流石“出来るオンナ”は違うね。これでモテない訳がない!まあ実際は独り身なんだけど。そんな俺の考えを知ってか知らずか先生がこっち見てる気がする、てか見てる!?まあ後で俺がぶん殴られる話は置いといて作戦について聞こうか。
「今回の作戦で攻めるのは、サウス諸国所有の{カメロ市街地}だ。この東和連合の所有地からも比較的近い場所にある。ここを全部隊の戦力をもって侵略する」
との事らしい。まあ全域マップを見てもそこを攻めるのが無難だろう。俺には戦略立てる才能とかないからあんまりわかんないけど。
「それでは作戦を開始する。全員各隊のマシンに乗って目的地へ向かえ。では解散」
「「了解!!」」
全員がそれぞれの持ち場へと移動を開始する。俺たちも急ごう。隊の皆に呼びかける。
「俺たちも行くぞ」
「「了解、隊長」」
俺たちは零番隊の輸送マシンが格納されている格納庫へと向かう。もちろん零番隊の格納庫はさっきの指令室から一番遠い。ので耀は俺が毎回おぶって行っている。格納庫に到着すると、耀をマシンの操縦スペースへと乗せ、俺たちは後ろの扉から乗り込む。中は結構綺麗だ。ただ、それは入る人が少ないからっていうだけの理由だ。くっ、皮肉な話だぜ。
「じゃあ離陸するから」
機内アナウンスで耀の簡素な連絡が入る。出発時間だ。
そして俺たちは大空に向かって飛び立った!
・・・
とは言ったものの、到着にはそれなりの時間がかかるので、俺たちは装備の確認をしていた。まあ大した物は揃ってないので、する必要はないかもな。
「天さん」
「ん?何だ?」
「天さんの武器、なんで属性値が無いんですか?」
どうやら俺の武器が気になるらしい。確かに俺は黄泉子のことを属性適性の高さで採用した。では、属性適性とは何か。簡単に言えば属性の適性だ…流石に適当過ぎか。
属性適性っていうのはその人間がどの属性の武器を使うのに適しているかというのを表した値だ。
火属性の値が高ければ、火属性の武器を。水属性の値が高ければ、水属性の武器を支給されそれを使って戦う。黄泉子が強いのはその値が高ければ高いほど強化されるという点だ。
なら属性値の無い武器を使っているのはどういうことか。
「簡単な話だ。俺には属性適性が無い。だから属性武器は使わないんじゃなく、使えない」
そう、俺にはこのWWSで重要な要素である属性適性が無い。だから零に無能と称されるのも間違っていない。つま弾きにされるのも、もう納得した。俺には才能がない。俺が使っている武器は{アイアンソード}という属性を使わない研修生が使うような実践ではほぼ確実に使われない武器だ。たぶん使ってるのは俺だけだと思う。
「あ…ご、ごめんなさい」
「気にすんなよ」
というかむしろ申し訳なさそうにされる方が傷つくかもしれん。それを見ていた千代が口を開く。
「ていうか属性適性が無くてもこの戦場に立ち続けられるってことはどういうことか分かるでしょ?」
「そうよ、こいつ心配しなくてもやられないから」
「うむ、頼り甲斐がある」
圭、風華先輩も続けて言う。み、皆。そっと涙をぬぐった次の瞬間に皆が言う。
「「だから安心して盾にしよう!!」」
馬鹿野郎!!これっぽちも褒めてねえじゃねえか!てか今耀も混ざってなかった!?
俺が盾役に任命されて暫くすると、耀のアナウンスが入る。
「着いたよ、目的地」
どうやら着いたらしい。
「じゃあ行くか、お前ら!!」
全員が頷く。マシンの扉がゆっくり開き、光が差し込む。
「さあ、戦闘開始だ」