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第四話 聖剣さんが仲間になりたそうにこちらを見ている、どうしよう




「……さて、あいつは上手く聖剣を黙らせたかな」


 目の端に見えた銀に輝く髪を青年は己の耳にかけ、一段落した事務仕事を机の上に置いた。長い足を組みなおし、優雅に書類を眺める姿は一国の王としての風格が漂う。見た目は若いが、細められた赤い瞳と酷薄な笑み、そして比類なき実力から彼を侮る者はこの国にいない。


 大陸の西の果て、聖王都より西の砂漠から更に大砂海を越え、その更なる先にある大峡谷を抜けた場所に位置する国。何百年もの間、人間に知られることなく歴史を刻んできた大国。それが魔国であり、銀の青年はその国の王である――魔王であった。


 彼は終わった仕事を転移魔法で各部署に届け、豪奢な執務椅子に身体をゆっくりと倒す。執務室に立て掛けられている時計を見ると、もうすぐ昼時になるな、とぼんやり思った。部下と食事を取っても堅苦しくなり、周りも王と一緒の食事の席など恐れ多いと遠慮するため、魔王様は基本一人で食事を取るのが常であった。


 食事の時ぐらい、ほどほどに無礼講にしてもいいのになぁー、と魔王様は思っているのだが、王の心僕知らず。物思いにふける今の魔王様のお姿を見ても、大抵の魔族はきっと深いことをお考えに違いないと思うらしい。ちなみに本人は昼は何食べようかなー、と魔国産の渋茶を湯呑でごくごく飲む、掘りの深い美丈夫である。彼の最近の趣味は、産地ごとのお茶の飲み比べであった。



「それにしても、やはり主戦派と保守派に分かれているな。召集までに、中立派をどれだけ引き込めるかも重要か…」


 去年の誕生日に友人からもらった湯呑を置き、青年は乱暴に自分の髪を掻き撫でた。彼はこの三年間、人間との戦争の保守派として盛大に動いてきたが、それまでは完全に主戦派の旗頭だったのだ。王様一人で、人間の国に突撃するぐらいの傾倒っぷりであった。


 その結果、人間の少年にボコボコにされて、完膚なきまでに鼻っ柱を盛大に折られた。五十歳過ぎて、一からお勉強のやり直しである。三年前のノリノリだった自分の黒歴史をうっかり思い出し、魔王様手で顔を覆って机に突っ伏した。ここが自室なら、間違いなく転げ回っていたことだろう。


 数刻後、なんとか落ち着いた魔王様は今後の予定を立てることで、先ほどまでのことを忘れようと考えた。先日考えた全体召集は、すでに手配を整えている。ただ全ての魔族を集めるとなると時間がかかってしまう。いくら魔王でも、自分より何百年も生きている魔族の老中もいるため、無理やり呼び出すという訳にはいかない。魔国から出払っている魔族だっている。相手にだって都合はあるのだ。


 理性的に話し合うことが大切。三年前のように、力でなんでも押さえつける自分からは卒業したんだからな! また黒歴史を思い出しちゃって、魔王様は悶えた。


「……はぁ、焦っても仕方がないか。俺が戦争反対派になったことをわかってもらうだけでも、かなり時間がかかったんだ。召集の時間ぐらいでイライラしても仕方がない」


 とりあえず、その待っている時間の間に自分ができることをしよう。世界平和って大変だな、と笑いながら魔王様は肩を竦めた。これも全部、あの破天荒の所為だと思いながらも――仕方がなさそうに彼は笑ってしまっていた。


 結局のところ、どれだけ大変だとわかっていても自分は止まる気が全くないのだ。あの困った人間と友人でいる自分を、悪くないと思ってしまっている。自分勝手な理由だと感じるが、それが紛れもない彼の本心であった。



「さて、それにしても昼はどうするか。さすがに昨日の今日で、食事に誘いに来ることはないか」


 昨日もちょうどこれぐらいの時間に、自分の頭の中に『神託』をおろしてくる友人を思い浮かべる。ちょくちょく向こうに行くこともあるため、王様でありながら彼はお昼をセルフ形式にしていた。たぶん連絡はないだろうと、部下に昼食を頼もうと立ち上がる。そして、魔力を練り上げた魔王様の頭に――ポンッとお告げがおりてきた。


『こんにちは、友人。今日もお昼を一緒にどうかと思うんだけど、いけるだろうか?』

「うおっ!?」


 不意打ち気味であったため、変な声が出た。慌てて誰にも聞かれていないか、首を右往左往して確認し、しばらくしてホッと息を吐いた。一国の主として、自国でぐらいそれなりの尊厳は守りたいと思う魔王様であった。


『友人? もしかして、今日は忙しいのか。それならすまなかった』

『いや、問題ない。先ほど俺も仕事を切りのいいところまで終わらせたところだ。あと昼食もそっちで食べられるが、……連日は珍しいと思ってな』

『友人にも付き合いがあるだろうと思って連日は遠慮していたんだが、本当に大丈夫なのか?』

『今日はちょうどあいていたからな』

『そうか、僕は運がよかったようだ』


 まさか付き合いなんてなくて、しかも友人から連絡が来るかもしれないからとセルフ形式にしているとは言えない。一人寂しく昼食を食べているから、普通にいつでも誘ってくれていいぞ、……と言いたいが見栄を張って言えない魔王様であった。


『ちなみに聞くが、変なところで真面目なお前が連日食事に誘うと言うことは、まさかまた何かあったんじゃないだろうな』

『ふむ、友人にはお見通しか。実はまた困ったことが起きたんだ』

『今回、お前は何をやらかしたんだ』

『えっ、断定?』


 神託越しの相談相手の困りごとは、巡り巡って自業自得なことが大抵であった。魔力で相手のスキルに『同調』しているおかげか、困惑している神官の様子を感じ取る。自覚なしか。


『……まぁ、いい。昼飯ついでに聞いてやるよ』

『ありがとう、友人。いつも通りの店でいいか?』

『い……いや、ちょっと待て。店は替えないか』

『えっ、なんで』

『なんでって…』


 むしろ平凡な食事処になんで帝王がいるのか、こっちが逆に聞きたい。普通はそんな者いないだろう。魔王と勇者が食事処に出没していることについて、彼は堂々と棚に上げていた。


『お前こそ、その食事処がいい理由とかはあるのかよ』

『五つほどは。まずは価格が安い。次に味も満足できる。さらにオーダーをすると、それほど待たされずに料理が届く。食い逃げや泥棒の検挙率トップで高ランク冒険者同士が喧嘩を始めたって、すぐに沈めてくれる安全性』

『食事処の警備力高すぎないか』

『あとは、ポイントカード制度と言う大変画期的なシステムだ。食べた値段に合わせて、色々な特典があるらしい。友人と二人で行けば、ポイントは二倍だからな。これはもう行くしかないだろう』

『そして、お前は相変わらずブレないな』


 しかし…、と魔王様はふと思う。おそらく自分が強く嫌がれば、彼は他の店に替えてくれるだろう。自分中心な破天荒人間だが、決して捻くれてはいない。むしろ素直なのだが、変な方向に特出しているだけなのだ。そのため、ここでもうひと押しすれば……。


 そこまで考えて、魔王様は大きな溜め息を吐いた。店を替えたいのは、完全な己の都合だ。彼のおすすめ通り、店自体に文句はない。ただ、後頭部の辺りが心身共に痛みに呻くだけである。個人的には問題だが、それも感情のコントロールができない自らの未熟が原因。当たり前だが、お店の迷惑にならないようにすればいいのだ。


 第一、このまま別の店に替えたら、おぼんが怖くて逃げたように感じてしまう。おぼんに敗北して逃げ出すなど、魔王としてカッコ悪すぎる。本来の実力からは弱体化しているとはいえ、そんなものは言い訳にならない。おぼんが怖くて、魔王をやっていられるか。


 故に、魔王様は拳を握りしめ、覚悟を新たにする。俺はおぼんに立ち向かい、真正面から超えてみせるんだっ! 斜め上の執念を燃やす彼は、結局のところ勇者に絆されているだけだったりするのだが、それを教えてくれる相手はいなかった。



『あぁー、わかった。いつも通りの店で大丈夫だ。これからの俺は、今までの俺とは違うからな。食事処のマナーを守り、そしてヤツを超えてみせるッ!』

『よくわからないが、友人がとても燃えている。楽しそうで何よりだ。それでは、今日もいつも通りの時間に迎えに行くので、よろしく頼む』

『くくくっ、 あぁ転移ですぐに行く。今日はどんな相談が来ようと、覚悟を決めた俺はそう簡単に動じたりはしないからな!』


 それから数刻後、ぼっちの聖剣さんが寂しくて泣いてしまった相談にツッコミを入れる、結局いつも通りの日常風景が展開されるのであった。




******




「なんでお前は、毎度斜め上から来るんだ」

「さすがに僕だって、聖剣が泣くとは思わなかったんだ」

「いや、そうだけど」


 後頭部のあたりを抑えながら呻く友人に、さすがの彼も予想外だったのであろう。ぼくもびっくりだ。


「はぁ……、お前が素直に言うことを聞いてくれることを前提に考えていた俺が悪かったな。しかも、聖剣をまさか説得してくるとは」

「あぁ、僕に勇者は似合わないと聖剣が太鼓判を押してくれたんだ」

「嬉しそうに言うな。決して褒めてないからな、それ」


 今日のおすすめの野菜たっぷり焼きうどんを口に含み、モグモグと咀嚼しながら、友人と何気ない話をする。それにしても、聖剣に意志があったとは今更だけど驚きだ。ピカピカ光っていた時から感じていたが、実際に言葉を交わしてみると何とも不思議な剣である。


 声の感じと、話した感じで、聖剣はおそらく女性の人格だと思う。……いや、待てよ。僕はそういえば聖剣にそのあたりを確認していなかった。もし男性だったら、女性と間違えられたら悲しむだろう。でも、オネェ系なら逆に喜んでくれるかもしれない。……とりあえず、それは今は置いておくか。


「……それで友人、どうしたらいいだろう」

「どうしたらって、そのまま見なかったことにはできないのか。お前は勇者になる気がないんだろう。聖剣なんて関わらない方がいい」

「うん、以前友人に相談にのってもらった時は、僕もそう思っていた。今だって勇者になりたくない気持ちに変わりはない。だけど、聖剣だからと言って、それで一人ぼっちにしていい理由なんてないとも思うんだ」


 一人ぼっちが寂しい、という聖剣の言葉に僕は共感できてしまった。確かにずっと白い部屋にいて、誰とも関わらずに過ごすなんて、さすがに想像したら僕だって嫌だろう。だから関わるのを戸惑う気持ちと、なんとかしてあげたい気持ちの両方が存在しているからこそ、僕は困ってしまったのだ。


 聖剣を引っこ抜いたのは僕の責任だけど、それで勇者を強制されるのは納得できなかった。そのあたりはちゃんと拒否権を示す。友人だって、それに協力してくれているのだから。だけどそれ以外のことなら、僕が協力するのはせめてもの責任じゃないかとも思うのだ。


 少なくとも、聖剣はちゃんと僕に助けを求めてきた。勇者に無理にならなくてもいい、とも言ってくれた。そんな伸ばされた手を、無遠慮に振り払うのは違うと思った。全てを救うなんてことは僕にはできないけど、それでもできることがあるのならそれぐらいはやってあげたい。


 何より、僕は聖王都で働く神官である。給金と保障第一で選んだけど、それでもこの仕事を選んだのは僕自身だ。迷える子羊を導くなんて、まさに僕のやるべきことじゃないか。困った時に頼りになる友人が僕にいるように、誰かの頼りになれる存在に僕がなれたら素直に嬉しいと思う。



「……魔族だからと言って、友達になれない理由なんてない――か。お前って、本当に背景とかは二の次で相手を見るよな」

「ん? あぁ、三年前に僕が言った言葉か。それがどうしたんだ」

「いーや、別に。そうだな、実行可能かは置いといて、俺がまず思いついた方法としては三つあるぞ」


 デザートのプリンを頬張りながら、ビシッと指を三本立てる友人のなんと頼もしいことか。僕からの尊敬の眼差しに、満更でもなさそうに彼の口元がニヤついている。慌てて口元を隠しながら、二つ目のデザートに突入した友人は、まず一本の指を突き出した。


「それじゃあまず一つ目の方法としては、聖剣を長い眠りにつかせることだ」

「友人は聖剣に恨みでもあるのか」

「お前の困りごとのワーストワードトップだから本当に眠らせてやってもいいが、葬る方じゃねぇよ。数週間前までは、聖剣は普通に五百年も眠りについていたんだろうが。だから、もう一回眠らせる方法を考えるって訳だ」

「あぁ、なるほど」


 確かに眠ってしまえば、今度こそ僕とは違う勇者が世界の危機のために引っこ抜いてくれるかもしれない。しかし、聖剣の様子から自分で深い眠りに入れる訳ではなさそうだ。何かしら、条件などが必要なのかもしれない。


「聖剣に意志があるんだから、一回壁とかに思いっきり叩きつけて、昏倒できるかどうか試してみたらどうだ。案外上手くいくかもしれん」

「なぁ、友人。聖剣にやっぱり恨みでもあるのか」


 いつになく、友人の思考がデンジャラスであった。



「二つ目は、聖剣のおしゃべり相手を見つけてやることだ。寂しいのなら、相手を用意してやればいいだろう」

「あぁ、それは僕も思いついたことだ。ただ、僕以外に話せる相手を作るということが難しい。聖剣と話をしても大丈夫な相手となると、こちらの事情を知っている相手じゃないと厳しいと思う。……それができるのは、友人ぐらいじゃないか?」

「俺は魔族だぞ。聖剣と仲良くおしゃべりができる訳がないだろ」

「そうか? 友人と似て、よく叫んでいたが」

「……ある一点に関しては、共感はできるかもしれないな」


 とりあえず、友人は聖王都に住んでいないので除外となる。あと昼時や休日ぐらいしか時間があいていないのは、僕と同じだ。聖剣のことを隠して話をするにしても、その方法はできるだけ取らない方が無難だろう。本当の最終手段って感じだ。


「俺の他に聖剣を任せられそうな相手を知って……いる訳ないか」

「うん、僕が聖剣のことを気軽に相談できたのは友人ぐらいだ」

「今回は俺に相談して良かったけどよ。一応敵対関係みたいな魔族に相談するしか選択肢がないって、ちょっと狭すぎないか?」

「むっ、いや、友人の言うことも理解できる。……やはり僕も、もっと交友関係を広げるべきだろうか」


 残念なことに、僕にはこんな風に気軽におしゃべりができるのは友人一人だけである。だけど、十年以上友達がいなかった僕にとってみれば、こうして一人いてくれるだけで十分に満足してしまっていた。しかし、人間向上心がなくなったら成長しなくなるものである。


 友人には僕の他にも赤い髪の魔族とか大きな体の魔族とか、友達がちゃんといる。わざわざ人間の国まで、友人を追いかけてきてくれるような友達だ。やはり友人は、僕よりも何手も先を歩く人物である。もう一回友達作りの本を読み直して、勉強し直そう。


「友人が羨ましい限りだ。友人には僕の他にも頼りになる友達が何人もいるんだろう? 赤髪さんや、巨体さんとか」

「いや、あいつらは友達という訳じゃ……、あれ? 俺って部下はたくさんいるけど、これって友達のカテゴリーに入るのか。昼飯誰も俺と食ってくれねぇぞ。まさか俺、友達が……」

「どうした、友人。突然小刻みに震えだしたぞ」

「な、なんでもない。本当になんでもない。この話はやめよう。今すぐやめよう。今できないことを話したって仕方がない、建設的な話に戻ろうじゃないか」


 確かに聖剣を任せられる該当者が結局思い至らないので、友人の意見には賛成である。それにしても、人脈とは難しいものだ。もしかして、友人はそんな僕に気を使ってくれたのだろうか。だから途中なのに話を切り上げてくれたのかもしれない、さすがすぎる。


 そんな気配り上手な友人は、何やらぶつぶつと呟いた後、まるで自棄になったように二つ目のデザートを完食した。その後、なんか目頭を手で押さえていた。



「それで、三つ目の方法は?」


 僕がわくわくしたように続きを促すと、友人は指で頬を掻きながら、ちょっと歯切れが悪そうに告げた。


「あぁー、その、三つ目は正直かなり適当に思いついただけなんだ。だから、あんまり期待するなよ」

「フリだな、リアクションは任せろ」

「話を聞けよ、そして本当にフリだったとしても口に出すなよ」


 僕のバイブルに記載がある『コミュニケーションの心得』に載っていた念願のフリだと思って、願望が表に出過ぎてしまった。次は気を付けよう。


「三つ目は、いっそお前が聖剣を引っこ抜いて、代わりになる抜けない剣を突き刺して誤魔化しておけばいいんじゃねーかなー、っていうしょうもない案だな。お前みたいに、ノリで引っこ抜くような神官なんていないだろうし」

「…………」

「……いや、あのな。だから期待するなって言ったっていうか。その、さすがに無言は、ちょっと挫けそうというか…」

「んっ、あぁ、すまない。今の友人の案が実行可能かどうか考えてみたのと、できそうか聞いてみたんだ」

「はっ、聞く?」


 首を傾げる友人に、僕は一つ説明し忘れていたことに気づき、ポンッと手を打つ。ついうっかりしていた、と改めて僕は説明することにした。



「ほら、今回の相談はある意味で聖剣が主役だろう」

「主役と言うか、まぁそうだな」

「うん、だから今聞いてみたんだ。僕らはほら、あまり時間の余裕がないだろう。だから今までの相談の内容を、今さっき神託で掻い摘んで聖剣に報告したら展開も早いと思って」

「えっ」


 すぐに相手からの答えが聞ける方がいいだろう、と思ったのだが友人は固まってしまった。今日の夜に伝えるより、今は休憩時間なのだから普通に繋げられる。神殿の内部や聖剣のことは、聖剣自身に聞くのが一番手っ取り早いだろう。


「おっ、早速パスが繋がった。どうやら僕らと話をしたいみたいだ。ついでに、友人とも繋げておくよ」

「いや、待て、ちょッ!?」


 ポンッ、と僕の頭の中にお馴染みの音声が鳴る。友人にも僕が繋げる様に神託をおろすと同時に、突如声が鳴り響いた。


『お、ぬ、し、はぁ、なんで魔族と友人をやっとるのじゃァァーー!? そして貴様か、貴様がこやつをただのアホにしたのかァッ! これが魔族の策略かッ!!』

「おまッ、ふざけんなッ! 現在進行形でこいつのマイペースに、どれだけ振り回されていると思っているんだ!? だいたい策略程度で、こいつの性格を矯正できる訳ねぇだろうがァッ!!」

「聖剣、うるさい」

『きゃぷゥァアッ!?』


 まったく頭の中にいきなり大声が響いて、びっくりした。それにしても、神託を繋げただけで友人が魔族とわかるとは、そこのところはさすが聖剣である。


「……何したんだ」

「聖剣を縛っている鎖をちょっとキュッと」

「容赦ねぇな。いい気味だが」

「ところで友人、後ろ後ろ」

「は? ――あッ!」


 慌てて身体を捻ろうとした友人の肘にまずおぼんが当たり、痛みに動きが止まったところへえげつない連続攻撃による止めの一撃が振り落された。


 さすがは警備力トップの店、容赦がない。友人と聖剣の呻き声二重奏を聞きながら、話が長くなりそうなので二人分の飲み物を頼んでおこうと思った。僕は新しいおぼんを召喚魔法で取り出している店員さんに向け、オーダーをお願いした。



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