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能無しハンター  作者: 四葦二鳥
第2章 能無し姫君
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第3話 vsウーレ・ベア

 翌日、イレク・ヴァドで朝食を食べた後、ルッツは地上に出てペトラと合流。そのまま渡し船に乗り、ウーレ・ベア討伐に出発した。

 装備は、迷彩服にヘルメット、ゴーグル、グローブ、ブーツ、タクティカルベストと、シュトゥルム・ウルフ討伐時と同じ服装に加え、戦闘用に造られたモスグリーンのリュックを背負っている。この中には、水、食料、簡単なテント、弾薬、医薬品等、戦闘やサバイバルに必要な物が一式入っている。しかもそれほど大きくなく、軽い。

 武器は、M4アサルトライフルにグレネードランチャーを装着した物を持って来た。


 その後、半日かけて2日前に止まった休憩場にたどり着くと、そこで軽く昼食を取った。

 今回の食事は、金平糖とオレンジスプレッド付きの乾パン。


「なんか、味気ないわね」

「なれるとおいしいぞ。小麦の香りがいいし」


 と、しばらく乾パンの評価をし合っていると、ペトラがある事を聞いた。


「そう言えば、ルッツの能力って、何?」

「無能力だが」


 ルッツはハッキリと、そう言った。

 これを聞いたペトラは、しばらく沈黙した後、取り乱した様に騒ぎ立てた。


「え? ウソでしょ!? あのダニエル・ヴィルダーの息子が、能力無しなんて……」

「僕は義理の息子だからな。能力が無くても不思議じゃない。僕が魔獣と互角以上に戦えるのは、武器と訓練の賜物だ」


 ルッツの説明に、ペトラはとりあえず納得したが、それと同時に疑問が湧き出た。


「あんた、一体何者なの? その……銃、だっけ? 鉄の塊を飛ばす武器を持ってるし。何より、この食べ物の包装に使っている、透明な袋。こんな材質見たことないわ。それに、一昨日の晩に食べた、あのコーヒーとかチョコレート、これってラピス地方じゃ取れない、貴重な輸入品でしょ? あと、食材の調理方法も見たことない物ばかりだったし……」


 矢継ぎ早に出される質問に、ルッツは簡単に答えた。


「スポンサーがいるんだよ。そいつはどこからか武器や携帯食料を調達して、提供してくれるんだ」


 これは、ルッツがホルツ村から旅発つ直前に考え、それから一貫して使用しているストーリーである。もちろん、アスカやイレク・ヴァドの存在を隠し、なおかつ相手をある程度納得させるためである。


 そうこうしている内に、あらかじめ設定していた休憩時間が終わりを告げそうになったため、ルッツとペトラは支度をし、臨戦態勢に入った。


◇◆◇◆◇◆


 森に入ったルッツとペトラは、ある程度進むと、例の作戦を開始した。ペトラが矢に囮となる餌を取り付け、弓であちこちに放ったのである。それを何度か繰り返した。

 その作戦は成功し、ルッツ達はファルト・フォックスのテリトリーを通過したのにも関わらず、全く魔獣の類に遭遇しなかった。


 そして、1時間ほどかけて、ウーレ・ベアの巣穴の前に到着した。

 ルッツは巣穴の中を、暗視カメラで確認した。実は、ルッツのゴーグルは、暗視カメラにもなる。その他にも、イレク・ヴァドとの通信で地図を表示したり、銃の調子や、自分や仲間のバイタルデータをリアルタイムでチェックする事も可能だ。


 ルッツは、巣穴の奥にウーレ・ベアがいる事を確認した。その直後、ルッツはウーレ・ベアをおびき出すため、M4に装着しているグレネードランチャーにスタングレネードを装填すると、巣穴に向けてそれを発射した。


「伏せろ!」


 ルッツが出した合図と共に、ルッツとペトラは、目を閉じ耳を塞いだ状態で、伏せた。これは、あらかじめルッツがペトラに指示していた事だ。

 その瞬間、巣穴から凄まじい光と音が発生した。すると、たまらなくなったウーレ・ベアが巣穴の中から出て来た。


「そこだ!」


 ルッツは、ウーレ・ベアにアサルトライフルを発射した。ウーレ・ベアは両肩と両ひざにダメージを受け、動きが鈍くなってしまう。

 すかさずルッツは近くの木に登り、ペトラに向かって叫んだ。


「僕ができるのはここまでだ。後は、お前の力でやれ」


 実は、昨日の作戦会議で、ルッツはペトラにある事を言った。

『これはペトラのクエストだから、ペトラがトドメを刺すべきだ』

 これは、ギルドに所属するハンターであれば、当然の事だ。当然の事なのだが。


 ――体が、動かない。


 いざ正面から対峙してみると、その巨体も相まって、恐怖で足がすくむ。身体が震える。勇気が出ない。しかし、相手はこちらの事情にお構いなく、一歩ずつ前進している。

 当然の事だ。相手も、命の瀬戸際に立たされている。ここで殺しておかなければ、自分の命が危ないのだから。


「ウガアアアアアアァァァァァ!!」


 ウーレ・ベアがペトラを射程に捉えた瞬間、ルッツに撃たれて血にまみれた右手を大きく振りかぶり、ペトラの脳天目がけて振り下ろそうとした。


「うあああああああぁぁぁぁぁぁ!!」


 命の危険に晒され、ペトラもようやく、決死の覚悟で突撃した。その時、左手に何かを握り込んでいた。

 それは、光の玉。しかも、ルッツと初めて会った時よりも、ずっと強力な光。

 それを、ウーレ・ベアの顔面に押し付ける。その強力な光を直接、しかも至近距離で身に焼き付けてしまったウーレ・ベアは、悶えた。


「やああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 その一瞬の隙を見逃さず、ペトラは右手に持った剣で、ウーレ・ベアの首を貫いた。


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