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能無しハンター  作者: 四葦二鳥
第9章 進撃のドラゴン
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第5話 ゼロ戦 vs ドラゴン

 ルッツとペトラの乗るゼロ戦が戦闘を開始した。だが、膠着状態に陥っていた。その理由は、極めて単純。銃弾が効かないのだ。


 これは準備段階である程度予測していた事ではあった。だが、身体の全てが銃弾を通さないわけではないと思ったルッツは、ありとあらゆるアクロバット飛行を駆使し、様々な角度から狙ってみようと試みた。

 しかし意外な事に、フオコ・ドラコはアクロバット飛行に付いて来ていたのだ。どうやら飛行技術は相当高いらしい。おかげで、周囲にいた兵士達も見惚れてしまうほど、レベルが高いドッグファイトを演じる羽目になった。

 そこで、ルッツはペトラに指示を出した。


「ペトラ、照明弾を」


「了解」


 ペトラは座席の前に設置されているパネルに手を触れ、光の異能を発揮した。すると、ゼロ戦から光の弾が発射された。

 これが、ゼロ戦に加えられた新装備、『異能式閃光弾』。通常の閃光弾を使わず、ペトラの異能を変換して閃光弾を発射するものだ。この装備の導入のおかげで、本来搭載されるはずの閃光弾を搭載する必要がなくなったため、機体重量を軽くする事ができた。さらに、加える異能の強さを調節する事で、閃光弾の輝度や規模を調製出来るようになったのだ。


 放たれた閃光弾は、フオコ・ドラコの目の前で破裂、強力な光を放つ。

 だが、奴は多少身じろぎした程度で、あまり効果はなかった。


「ウソでしょ!? 結構力を込めて撃ったのに……」


「しかもあいつ、怒った様子はない……。ありがたいが、逆に言えばあいつにとって、脅威ですらないという事か」


 閃光弾が効かないとわかると、ルッツはアスカが開発していた新しい弾丸の使用を決意した。

 その弾の名は、『液体窒素弾』。文字通り、液体窒素を詰めた弾を発射し、相手を凍りつかせて動きを封じるのに使う。


 液体窒素弾のセットが終わると、ルッツはバレルロールを駆使し、フオコ・ドラコの背後に回った。


「今だ、凍りつけ!」


 発射された液体窒素弾は、見事ターゲットの背後に命中。身体の後ろ半分を氷漬けにした。


「よし、このまま弱点を見つけ……って、え!?」


 だが、ルッツが弱点を見つける事はなかった。フオコ・ドラコの身体から蒸気が噴き出したかと思うと、瞬く間に氷が蒸発し、また自由を取り戻させてしまったのだ。


 この光景に、ルッツとペトラは我が目を疑った。液体窒素弾は、アスカの技術を持って、信じられないほどの液体窒素の量を弾丸に詰めていたのだ。シミレーションしてみた結果、観測されているフオコ・ドラコの体表温度を持ってしても、一滴の水も生み出すことなく氷が存在し続けられていられるというデータが出た。

 アスカの演算能力は、ほぼ予言に等しいくらい絶対だ。それが外れるなんて、明らかにおかしい。


 その時、アスカから通信が入った。


『ルッツさん! 観測の結果、一時的にフオコ・ドラコの体表温度が上昇しました! どうやらターゲットは、ある程度体温をコントロール出来るようです!』


 この報告は、今までのデータには無かった。このデータが無かったから、アスカのシミュレーションが外れてしまったのだ。


 もはや、打てる手は全て出尽くしてしまった。焦りと無力感が混在する中、ペトラが話し出した。


「ねえ、考えがあるんだけど――」


 ペトラが自分の考えている事を提案すると、ルッツの顔色が見る見る明るくなった。


「やってみる価値はあるな。よし、それで行こう」


 ルッツは動き出した。それに合わせる様に、ペトラも閃光弾を連発する。


 この閃光弾は、決してフオコ・ドラコを怯ませるための物ではない。これが目くらましの意味をなさない事は、先程の戦闘の結果、わかっている事だ。

 だが、ペトラは複座シートの前にある画面に映し出されるデータを見ていて気付いた事がある。それは、閃光弾を破裂させた一瞬だけ、フオコ・ドラコの飛行速度が落ちたのだ。おそらく、前方が視認できず、何があるか把握できないため、安全策として本能的にスピードを落とさざるを得なかったと思われる。

 ペトラは、それを利用した。閃光弾で視界の『壁』を作り、フオコ・ドラコの足を一瞬止める事が目的だった。


 そして光の壁が消えた時、ゼロ戦はフオコ・ドラコの目の前にいた。フオコ・ドラコの足が止まっている隙に、ゼロ戦の位置取りと姿勢制御を終わらせていたのだ。


 フオコ・ドラコはこれを好機と見たのか、口を大きく開けた。ブレスを吐くつもりのようだ。


「これを待っていた! 液体窒素弾、発射!」


 ルッツの掛け声とともに、液体窒素弾が数発発射される。その弾丸は吸い込まれるように、フオコ・ドラコの口の中へと侵入していった。

 そして弾が破裂するはずの時間、フオコ・ドラコの口から黒煙が噴出。そのまま白目を剥き、墜落していった。


「あたしの考え、当たってたわね」


 ペトラは以前、アスカから不完全燃焼の知識を得ていた。不完全燃焼とは、物が燃える時に供給される酸素が不足してしまい、生物に有害な一酸化炭素を生み出してしまう現象だ。

 今回、液体窒素弾を投入する事で、フオコ・ドラコ体内の酸素濃度を低下させ、ブレスを起こすのに必要な酸素を少なくする。その結果、大量の一酸化炭素を生み出す。

 生み出された一酸化炭素はそのまま呼吸器を通って血管内に侵入し、重大な一酸化炭素中毒を引き起こさせたのだ。

 そのため、フオコ・ドラコは意識を失い、地上へ落下したのだ。この状態から立ち直るには、高濃度の酸素雰囲気化で安静にしておく必要があるのだが、この世界は酸素濃度を高める技術はないため、回復は絶望的だろう。


 ルッツは落下したフオコ・ドラコを追いかけるようにゼロ戦を着地させ、ペトラと共にゼロ戦を降りた。

 そして二人は手榴弾をフオコ・ドラコの口内へ詰め込んだ。しばらくすると爆音が鳴り響き、フオコ・ドラコの口から大量の血が流れた。

 ルッツはアスカにデータを送り、生死を判断させた。


『結果が出ました。生命反応なし。フオコ・ドラコ、討伐完了です』


 こうして、少なくない犠牲を払いながらも、王都で暴れ出すという最悪のシナリオは避けられ、一応の幕を下ろす形となった。


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