第8話 vsマタンゴ
翌日の朝、ルッツとペトラはマタンゴ討伐に出発した。この事は、国王にも通達してある。
ただし、後続としてエトヴィン率いる部隊を同行させることを条件とした。エトヴィンは戦闘力やセンスにおいてはユリアーネに劣るが、殺傷力のあるレーザービームを打ち出せるため、守りを優先した戦いでは滅法強い。
3時間ほどすると、昨日マタンゴと交戦したとされる場所まで着いた。ここで、ルッツとペトラは、毒胞子対策としてガスマスクを装着する。
余談だが、迷彩服を着たルッツはともかく、鎧を着たペトラがガスマスクをかぶると、なんだかシュールだった。
さらに1時間かけ、マタンゴを捜索した。そして、木陰に隠れて休んでいるマタンゴを発見した。
「いたわよ!」
「よし! 作戦通りにやるぞ」
ルッツはM4アサルトライフルを連射し、マタンゴの注意を引き付ける。その間、ペトラは精神を集中させる。
ルッツの攻撃と立ち回りにより、致命傷とはいかないまでも、マタンゴは確実に追い詰められていた。そして、奥の手と言わんばかりに、毒の胞子をばら撒く。
しかし、ルッツはガスマスクを着けていたおかげで、胞子を吸引せずに済んだ。
ところが、実はルッツも、かなりギリギリの線で戦っていた。と言うのも、マタンゴは某黄色い非公認ゆるキャラの様に、奇怪で予測不能な動きをしている。別にルッツはマタンゴを倒す役回りではないので、攻撃が当たらなくても構わない。問題は、マタンゴからの攻撃の対処だ。
毒の胞子が聞かない以上、マタンゴが取り得る攻撃は、体当たりしかない。しかし、予測できない動きから繰り出される攻撃は、回避が難しいのだ。
そしてとうとう、その懸念は現実の物となってしまった。
「うわっ!?」
マタンゴから強烈な一撃を受け、ルッツが突き飛ばされたのだ。
さらに、マタンゴが追撃をかけようと、ルッツに迫る。
だがその時、マタンゴの後方から紫色の光が浴びせられると、マタンゴはみるみる乾燥し、縮んでいき、手のひらサイズになってしまった。
「ルッツ、無事?」
マタンゴを倒したのは、ペトラだった。
「ああ。間一髪だった。ありがとう」
「いいのよ。ま、目的も果たしたし、帰りましょ」
◇◆◇◆◇◆
マタンゴを倒した場面を見ていた人物がいる。後続として同行したエトヴィンだ。
エトヴィンは、ペトラがマタンゴを倒した様子を見て、こう漏らした。
「あの娘はもう、子供じゃないんだな」