決別
バスの中
15:20
街の様子はすっかり変わってしまった。
そこらじゅうからサイレンの音がしたり
家が火事になってしまっている所もあった。
伊草「いやぁ本当に助かりましたよ。」
田村「いやいや。こんな事態なんだ。お互い助け合わないとな。」
伊草「はいそうですよね。」
田村「てかお前ら何年生?」
伊草「あぁ。俺らはみんな2年生です。そっちはみんな3年生ですよね?」
田村「そうそう。まぁこいつは3年生っぽくないけどな。」
田村は酒井を見る。
酒井「3年生っぽくないってなんだよ!誕生日だって将太朗より早いだろ!」
田村「俺が言ってるのは見かけと精神年齢のことを言ってるんだよ。」
酒井「それひどくない!?地味にくるんだけど。」
姫路「なんか楽しそうですね。」
田村「いや全然楽しくなんかないよ。こんな事態になっちまったんだから。ただこうやって話をしてた方が気がまぎれるってだけさ。」
姫路「あぁ・・・やっばそうですよね。楽しいわけないですよね・・・」
石井「それよりお前らその武器どこで手にいれたんだ?」
石井は神埼の方を見る。
神埼「屋上で手にいれました。」
神埼は窓の外を見ながら言った。
酒井「屋上?」
伊草「はい。屋上にヘリコプターが来たんですよ。それでヘリコプターから取ってきました。」
田村「よく取ってこれたな。」
伊草「いやまぁ。」
伊草は自分の頭をポリポリとかく。
石井「屋上には生徒がいっぱい行ったのか?」
伊草「あっいえ。僕らと他に一人だけだと思います。」
石井「それじゃなんでお前らはヘリコプターで逃げなかったんだ? 」
伊草「実は俺らが屋上に行ったときには屋上にいた自衛隊は全員殺されていたんです。」
酒井「えぇ!なっなんで!?」
伊草「1年生だと思うんですけど、牧って奴が全員殺したみたいです。」
酒井「えっ?」
田村「そんな・・・」
神埼「そろそろこっちも質問していいですか?」
神埼は外を見ながら言った。
姫路「ちょっと駆!態度悪くない?」
神埼「別に普通だろ。」
石井「別にかまわないぞ。」
神埼「このバスはどこに向かってるんですか?」
柳田「それは俺も聞きたかったんだぜ。ただ走らせてたけど・・・」
石井「お前らはどこに行きたいんだ?」
伊草「あっ俺らは姫路の・・・あっそういえば自己紹介がまだでしたね。俺は伊草です。この子は姫路、」
伊草は姫路を見ながら言った。
伊草「っでそこに座ってるのが神埼です。」
伊草は神埼を見ながら言った。
田村「へぇよろしくな。俺は田村将太朗。こいつは酒井だ。」
田村は酒井の頭に手をおく。
酒井「ちょっと!子供扱いしないでよ!」
田村「あぁわりーわりー。」
姫路「・・・」
田村さんと酒井さんなんか兄弟みたい。
田村「そんで運転してるのが柳田でー」
柳田「よっ!」
姫路「・・・」
なんで運転出来るのかなぁ?
田村「こっちが・・・」
石井「石井だ。」
姫路「・・・」
なんか怖そう・・・
石井「話を戻そう。」
伊草「あっはい。俺らは姫路の両親の安否を確認するために姫路の家に向かう予定なんです。」
石井「姫路の家はどこら辺なんだ?」
姫路「巽団地です。巽町にあるコンビニの近くです。」
田村「あぁそこら辺か。」
伊草「そこにむかえませんか?」
田村「まぁ俺は別にいいけど・・・」
石井「いや駄目だ。」
酒井「えっ?」
伊草「なっなんでですか?」
石井「あそこは道が細いし住宅地だ。バスで行ったらすぐゾンビに囲まれる。」
伊草「諦めろって言うんですか!?」
石井「そうゆうわけじゃない。行くならまずは安全な場所を確保してからだ。俺らにたって家族がいる。だが無策に助けに向かえば命を無駄にするのとおなじこどだ。だから向かうことは出来ない。」
姫路「・・・」
姫路はうつ向いてしまった。
伊草「・・・」
姫路・・・
姫路「仕方ないよ伊草。」
伊草「仕方なくない!バスからおりよう姫路。」
姫路「伊草・・・」
石井「別に俺はかまわないぞ。」
田村「おっおい石井!」
石井「俺らに止める理由はない。」
田村「・・・」
伊草「はい。そうします。行こう姫路。」
姫路「うっうん。」
伊草「神埼。お前はどうするんだ?」
みんな視線が神埼に集まる。
神埼「俺は・・・」
姫路「行こ駆!」
伊草「・・・」
数秒の沈黙・・・
そして
神埼「俺も行くわ。俺だけ残っても気まずいし。」
伊草「よし!」
姫路「行こ駆!」
神埼は立ち上がり伊草と姫路に歩み寄る。
酒井「本当に行っちゃうんだね!?」
伊草「はい・・・」
田村「気を付けろよ。また会おう。」
伊草「はい・・・」
石井「バスを止めろ柳田。」
柳田「はいはいさー!」
柳田はバスを車道のすみにとめた。
伊草「お世話になりました。」
伊草は石井に向かって頭を下げた。
石井「待て。」
伊草「なにか?」
石井「ほらよ。」
石井は一枚の紙切れを伊草に差し出す。
伊草はそれを受け取った。
石井「その紙に俺の電話番号が書いてある。別に俺はお前らに悪意があるわけじゃない。なにかあったらいつでも電話してくれ。」
伊草「はっはい。ありがとうございます。」
伊草はバスからおりた。
そして伊草に続いて神埼もバスからおりた。
あとは姫路だけ・・・
姫路「あのー・・・」
田村「んっ?」
姫路「これよかったら使ってください。」
姫路はポケットからワクチンを3本取りだし、
田村に差し出す。
田村「なんだ?この青色の液体が入った注射針は?」
酒井「まさか麻薬!?」
石井「ワクチンか!?」
姫路「あっはい。」
酒井「3本もいいの?」
姫路「後3本あるんで大丈夫です。」
石井「これも屋上でてに入れたのか?」
姫路「はい。でも深く噛まれると効かないみたいなんで気を付けてください。本当にお世話になりました。」
石井「あぁ。」
酒井「両親無事だといいね。」
姫路「あっはい。これで失礼します。
姫路はバスからおりた。
田村「まさかワクチンがあるなんてな。」
石井「あぁ。」
酒井「でも深く噛まれると効果ないんでしょ?」
田村「あんまり期待するなってことだろ。」
酒井「うん。」
石井「おそらくこのワクチンはウイルスを殺すものなんだろう。だとしたらこのワクチンは他にも使い道がある。」
酒井「えっなに?」
石井「・・・」
バスの外
15:40
伊草「遅かったな姫路。」
姫路「ワクチン半分あげてきちゃった。いいよね?」
伊草「あぁ大丈夫だろ?どうせ効果は期待できないんだし。」
姫路「うん。それより駆、バス乗ってから全然喋ってないよね?」
姫路は神埼の顔をのぞきこむ。
神埼「乗り物酔いしてたんだ。俺。」
姫路「えっ?」
伊草「そういえばお前意外に乗り物駄目なんだよな。車でも酔うくらいだもんな。小学校ときお前の父ちゃんの運転で俺らディズニー行ったときお前酔いすぎてはいたもんな。」
神埼「やなこと思い出さすなよ。」
伊草「あのときは愛里もいたよな?あいつ今どこいるんだろうな!?」
神埼「さぁな。」
姫路「愛里って?」
伊草「俺と神埼の幼馴染みだよ。小学校卒業するときに家の都合で転校しちゃって以来会ってないけど。」
姫路「へぇ。」
姫路は細目で神埼を見る。
神埼「なんだその目は!?別に何もなかったぞ!てか姫路の家に向かうんだろ?」
伊草「あぁ。」
姫路「付き合わせちゃってごめんね。」
伊草「いや全然いいって!なぁ神埼!?」
神埼「あぁ。なんだかんだお前が一番女の子のなかでは仲良かったしな。
姫路「なんだかんだは余分だよ駆!」
神埼「まっそれはいいとして・・・早く行こうぜ。ここから結構近いし。」
姫路「うん!行こ!」
3人は姫路の家を目指して歩き出す。