僕と鬼
僕は拾われた。
弱っているところを誰かに拾われて、お屋敷に連れてってくれたんだ。
僕は人間から殴られたり蹴られたりしてた。
でも、助けてくれたのは鬼。
なんとなくそんな気はしてたけど、やっぱり鬼は怖い。
お屋敷に連れてこられた時、僕は夜に抜け出そうと決めた。
夜中、そっと自分の寝かされた部屋を抜け出した。
真っ暗で静かだ。
「そっと・・・そぉーっと・・・・・。」
抜き足、差し足、忍び足
月の明かりで少し明るくなっている縁側に出た。
庭にある池には満月が映っている。
縁側にある柱のところに人影が見えた。
あの鬼だ・・・。
鬼は柱にもたれかかりながら庭の方を向いて眠っている。
僕は気付かれないようにそっと鬼の後ろを通ろうとした。
「帰るのか?」
「んにゃ!?」
不意にかけられた言葉に驚いて変な声が出た。猫じゃないのに「んにゃ」だって。
(寝てたんじゃなかったのか・・・!?)
鬼はゆっくりと体を起こしながらこっちを見た。
不気味だ。
その鬼の髪と瞳は普通ではなかった。
なって言えばいいのだろう。
瞳の色は赤っぽい鴇色に黄緑、黄色と三つの色が入った瞳と言えばいいのだろうか。
そして、髪の色は赤っぽい鴇色に黄緑の毛が混ざっている。
鬼にしても異様だ。
その異様さが不気味さを生んで、恐怖を生む。
「帰るのはいいけど、体の方は大丈夫なのか?」
鬼は唐突に質問してきた。
「大丈夫です。お、お世話になりました。」
ビクビクしながらもお礼を言った。
これならもうすんなり出て行けそうだ。
「寂しくなったらおいで。親もいないみたいだし。」
抜け出す気満々で縁側を歩いていると鬼がこっちを向きながら言ってきた。
その声は鬼とは思えないほど優しくて、寂しかった。
僕は何も言わずに走って庭にある塀に上り外に飛び出した。
あれから数日。
僕はまた人間にいじめられた。
守ってくれる人なんていない。そう思って僕は人間に抵抗してた。
でも、今回のいじめはいつもの比じゃなかった。
いつもより沢山蹴られて、殴られた。
もう本当に死ぬかもしれない。
そんな言葉が頭の中に浮かんだ。
僕はそっと目を閉じた。
もう疲れた。
少しすると人間が騒ぎ出した。
それと同時に蹴られたり、殴られたりする感覚が消えた。
不思議に思って目を開けるとそこには傷だらけの鬼。
先日の鬼がいた。
人間達の前に、堂々と立っていた。
殴られながら、蹴られながら、罵声を浴びさせられながら。
それでも鬼は立っていた。
「何やってんだよ!何で鬼が・・・なんで鬼が僕なんか・・・」
知らず知らずの間に涙が出ていた。鼻水も。
鬼は僕には何も言わずに人間の方へと喋り始めた。
「お前ら、死にたいか?」
人間達はぎょっとして後ずさった。
人間も鬼は怖いんだ。
「こんな小さい妖怪相手にして楽しいのか。本当に、お前らには失望したよ。」
鬼は本当の姿を現した。
二本の角と少し尖った牙を人間に見せ、怒りを露わにした。
初めて本物の鬼というものを見た。
僕はその後気絶したのか、記憶が無かった。
目を覚ますとそこは前に見たことがある天井。
温かいと思ったら布団まである。
ちょっと寝返りをうって横を見るとそこにはあの鬼がいた。
鬼は今度こそ寝ていた。それもぐっすりと。
鬼の寝顔をよく見るとまだ若い。大人とは絶対に言えない。むしろ子供だ。
こんかいは何故か抜け出す気にはならなかった。
それは鬼の寝顔の穏やかさのせいなのか、自分の負った傷が痛むせいなのか僕にはわからなかった。
でも一つだけ確かなのは、
安心する。
このお屋敷に来てから少し気になったことがあった。
静かすぎる。誰もいない。
前回、抜け出そうとするときも妖怪も他の鬼の気配も無かった。
この鬼も一人なのかな・・・。
そう思ったら自然とまた涙が出てきた。
どうしてだろう。
前は怖かった鬼が今じゃ怖くもなんともない。
むしろ寂しそう。悲しく感じる。
鬼の中でも特に異様な風貌をした鬼。
周りから僕みたいな扱いを受けたのだろうか。
それとも、自分から身を引いたのだろうか。
僕には鬼の気持ちはわからないけど、とにかく寂しそうだ。
「一人なのか・・・?」
僕は布団を抜け出して鬼に近寄ってみた。
そして、僕は鬼のお腹のあたりに体をくっつけて寝た。
「ねえ、一緒にいてもいい?」
鬼は僕の体を抱きしめてくれた。
あったかい。




