神の天敵
私にとっての近いうちは、一ヵ月後っていう皮肉…。
待っていて下さった皆様!本当に申し訳ないです。
ちょっと短いですが…今度こそ、本当に幼馴染が登場します。
いつものように食料などの日用品をジェドの元に取りに行くと、何故か細く貧相な娘がいた。此処は仮にも神聖な場所とされているため、一般の人間は入れないはずなのだが…。
「何だこの貧相な娘は?」
「失っ礼な奴ね!あんたなんて神だとか呼ばれていても、ただの犬っころの癖に!
とっととシェールを返しなさいよ」
あまりの喧しさについ苛つき、珍しく困った様子のジェドを尻尾で殴ってみた。
蛙の潰れたような声が聞こえた気がするが、きっと気のせいであろう。
目のまえの娘はシェールと同じ年頃の娘だというのに、キンキンとした声も粗雑な態度も気に食わない。この小娘と比較するのも失礼な話だが、シェールのほうが何万倍も魅力的だ。改めて彼女の素晴らしさを実感する。
しばし頭のなかでシェールへ賛辞の言葉を浮かべていたが、このままでは何時までたっても不快な声が止まらないであろうと、場所を移動することにした。こんな娘を自分とシェールの住処へ連れて行くのは不本意だが、神殿に彼女を連れてくるより危険が少ないだろう。
「―――とりあえず、詳しい事はシェールと共に聞かせてもらおうか」
その言葉を最後に、我は目の前の小娘とジェドを連れて城に戻った。
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いつも通り、日用品とジェド様を迎えに行ったはずのエイネム様が、とても不機嫌そうに帰ってきた。尻尾は苛々と不機嫌そうに振られ、眉間にはこれ以上は無理だというほどにしわが寄っている。
「ど、どうかしたのですか…?」
「―――いや、大したことではないのだが」
珍しく言い淀むエイネム様に首をかしげる。
自惚れているつもりはないけれど、エイネム様は私が怯えないように些細な反応でさえ気を配ってくれている。
だから、こんな風に苛立ちをそのまま表現しているのは珍しい。本当にどうしたというのだろうか?彼が誤魔化すのを難しく感じるほど、何か悪い事でも起こったのだろうか…。
現在は目立った争いなど起きていないが、以前ほど我がレェンダ―国の権威はなくなってきた。その為、周囲の国々に対する牽制も込めて、神と呼ばれるエイネム様とジェド様は親しいのだと見せつけていると言っていたのに…。
まぁ、わざわざそんな事をしなくも、彼らの仲はいいのだが。
しかし、もしもエイネム様が頭を悩ませるほどの事件が起きていたとしていたら、問題だ。基本的に、エイネム様は人間同士の争いに口出しするのを良しとしない。ジェド様だって、エイネム様に人間同士の諍いに手を貸してもらおうとは考えていないだろう。
いくらエイネム様が否定なさっても、人間たちにとって奇術をあつかう彼は神以外の何物でもないのだ。そんな彼の頭を悩ませる事など、不可解な行動をとる人間と自然くらいしかない。
ジェド様もエイネム様も、怪我をするようなことがなければいいのだが―――。
「シェール!」
私の暗い思考は、明るい少女の声によってかき消された。
少し体を動かしたエイネム様の後ろから、最近では見慣れたジェド様と、懐かしい人物が姿を現した。
そこにいたのは、唯一の友人であり……以前に手紙をくれたランツェだった。