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なろラジ7参加作品

あの日鳴らなかったオルゴールを、今度こそ ~男装皇女はドレスを望む

 私は、少しでも母を慰めたかった。


「母様、このオルゴール、とても素敵で──」

「こんなもの!」


 ガシャン!

 無残な音がして、振り払われたオルゴールが床に転がる。


 母が私の肩を掴んで言う。


「良いですか、皇子。貴方(あなた)は男の子なの。オルゴールなんかより、剣や乗馬に励んでちょうだい」


 鬼気迫る瞳は、簡単に私の気持ちを飲み込んでしまう。


「あの女の息子に負けては駄目。帝国は貴方(あなた)が継ぐの」

「はい、母様」


 繰り返されるフレーズ。


 母は、皇帝の側妃だ。

 正妃にはきちんと皇子がいて、なのに私を帝位につけるべく足掻(あが)いてる。


「私も皆みたいにドレスが着たいな。だって私は()()()なのに」

「しっ、滅多なことを口になさってはいけません殿下」


 傍仕(そばづか)えが私の口をふさぎ、今日も男の子の服を着せられる。

 唯一許されたのは、肩口までの長さの髪。


 悲しくて、スカートを履きたくて、今日もこっそり侍女服で庭隅に(ひそ)む。


「はぁぁ」

「大きな溜息だな。この宮の侍女か」

「これは! 第一皇子殿下!」


 やばい、私が彼の"弟"だとバレたら。


 母共々、一巻の終わりだ。


「無理はせぬように」


 そう言って彼は、剣の自主練を始めた。

 私が"皇子を(かた)る妹"だとは気づかれなかった。


 安堵し、兄を眺める。


 しなる腕、伸びやかな肉体。

 (あふ)れんばかりの武芸の才。


 私とは到底違う。

 (かな)うわけがない。


 母は彼に勝てという。

 変な野望はさっさと捨てて欲しいのに。


 ある時、無謀にも母は(くわだ)てた。


 正妃と兄皇子を殺し、私を皇太子にしようと画策して、あっさり露見。

 死を賜ることになった。


「なんだこいつ、女じゃないか!」

「身代わりか。本物の皇子を逃したな」

「ちが……、私が第二皇子なんです」

「嘘をつくな! 死にたいのか」


 打ち据えられて、皇子の居所(いどころ)を吐けと言う。

 私こそが第二皇子だったのに。


「その侍女は見たことがある。放してやれ」


 傷だらけの私に、兄が言う。


「大変だったな。大丈夫、お前は助けるからな」


 第一皇子の命令で私は釈放。


 その後、第二皇子は逃亡、行方不明と騒がれたが。


 やがて亡骸が見つかったと報告された。

 不明のままでは困るから、虚偽の知らせで結末したのだろう。


 私はもう、何者でもない。


「ううっ、グスッ」


 涙が止まらない。

 私はただ、静かにオルゴールを聞く生活がしたかっただけなのに。


「これは君のだろう?」


 第一皇子から、あの日壊れたオルゴールを差し出された。


「気づいて……?」


 宮に間者が?



 でも。

 私の頭を撫でる彼の手は、どこまでも優しかった。




 お読みいただき有り難うございました!


 なろうラジオ大賞7作品めになります。

 相変わらず1000文字じゃ足りん症候群ですが、私はさらに、お兄ちゃんとも血がつながってないパターンが好きです。

 子どもを産みたいがために不貞を働いた側妃。

 そんで兄妹の身分から離れ、兄と結ばれるケースが好きなのです。なろうの流行(はや)り筋ではありませんが、いつかじっくりと書きたい…(笑)


 趣味全開でしたが、お話楽しんでいただけましたら嬉しいです♪\(*^▽^*)/

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― 新着の感想 ―
兄の器が大きい! 処刑エンドじゃなくてホッとしました。
お兄ちゃんには全部バレていたのかな? なら皇帝にもバレていたんだろうなあ。後書きが正史なら、不貞すらもバレていたんだろう。 それでも側妃でいられたのは多少なりとも愛情があったからかも知れないのに。 …
これを長編にして、なろうチアーズの「連載投稿チャレンジ」用にすればいいのでは?( ˘ω˘ )
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