あの日鳴らなかったオルゴールを、今度こそ ~男装皇女はドレスを望む
私は、少しでも母を慰めたかった。
「母様、このオルゴール、とても素敵で──」
「こんなもの!」
ガシャン!
無残な音がして、振り払われたオルゴールが床に転がる。
母が私の肩を掴んで言う。
「良いですか、皇子。貴方は男の子なの。オルゴールなんかより、剣や乗馬に励んでちょうだい」
鬼気迫る瞳は、簡単に私の気持ちを飲み込んでしまう。
「あの女の息子に負けては駄目。帝国は貴方が継ぐの」
「はい、母様」
繰り返されるフレーズ。
母は、皇帝の側妃だ。
正妃にはきちんと皇子がいて、なのに私を帝位につけるべく足掻いてる。
「私も皆みたいにドレスが着たいな。だって私は女の子なのに」
「しっ、滅多なことを口になさってはいけません殿下」
傍仕えが私の口をふさぎ、今日も男の子の服を着せられる。
唯一許されたのは、肩口までの長さの髪。
悲しくて、スカートを履きたくて、今日もこっそり侍女服で庭隅に潜む。
「はぁぁ」
「大きな溜息だな。この宮の侍女か」
「これは! 第一皇子殿下!」
やばい、私が彼の"弟"だとバレたら。
母共々、一巻の終わりだ。
「無理はせぬように」
そう言って彼は、剣の自主練を始めた。
私が"皇子を騙る妹"だとは気づかれなかった。
安堵し、兄を眺める。
しなる腕、伸びやかな肉体。
溢れんばかりの武芸の才。
私とは到底違う。
敵うわけがない。
母は彼に勝てという。
変な野望はさっさと捨てて欲しいのに。
ある時、無謀にも母は企てた。
正妃と兄皇子を殺し、私を皇太子にしようと画策して、あっさり露見。
死を賜ることになった。
「なんだこいつ、女じゃないか!」
「身代わりか。本物の皇子を逃したな」
「ちが……、私が第二皇子なんです」
「嘘をつくな! 死にたいのか」
打ち据えられて、皇子の居所を吐けと言う。
私こそが第二皇子だったのに。
「その侍女は見たことがある。放してやれ」
傷だらけの私に、兄が言う。
「大変だったな。大丈夫、お前は助けるからな」
第一皇子の命令で私は釈放。
その後、第二皇子は逃亡、行方不明と騒がれたが。
やがて亡骸が見つかったと報告された。
不明のままでは困るから、虚偽の知らせで結末したのだろう。
私はもう、何者でもない。
「ううっ、グスッ」
涙が止まらない。
私はただ、静かにオルゴールを聞く生活がしたかっただけなのに。
「これは君のだろう?」
第一皇子から、あの日壊れたオルゴールを差し出された。
「気づいて……?」
宮に間者が?
でも。
私の頭を撫でる彼の手は、どこまでも優しかった。
お読みいただき有り難うございました!
なろうラジオ大賞7作品めになります。
相変わらず1000文字じゃ足りん症候群ですが、私はさらに、お兄ちゃんとも血がつながってないパターンが好きです。
子どもを産みたいがために不貞を働いた側妃。
そんで兄妹の身分から離れ、兄と結ばれるケースが好きなのです。なろうの流行り筋ではありませんが、いつかじっくりと書きたい…(笑)
趣味全開でしたが、お話楽しんでいただけましたら嬉しいです♪\(*^▽^*)/




