表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/65

焦り(リシュエル視点)

「っっ!!!なんてこと…!!!」

「旦那様、奥様、私がついていながら…た、大変申し訳ありません!!」


 リーンは、泥で汚れた仕事着のまま、床に伏して何度も何度も謝っている。


 それは、三時間前に遡る。


『化粧道具一つとっても、いろんな色や形があるのねえ』

『ええ、例えばこの筆は眉毛を描くもの、こちらはアイシャドウのグラデーションを作るブレンディングブラシ等、様々です』

『で、でもブラシはもう持っているでしょう?わざわざ買わなくても…』

『いえ!嫁入り道具としてこの際新調しませんか!?』


 俺はせっかく買うのなら、形の可愛いものや、入れ物にこだわったものが良いのではないかと思っていた。


(意外と同じようなシンプルな見た目のものばかりだな)


『じゅ、充分じゃない?今日はほら、アイシャドウとか口紅とかそういうものを…』


 マリーアがそんなことを言ったので『それはダメだ!』と焦った。


『あら?なぜ?』

『え、えっと…えっとだな…とにかく口紅だけは駄目だ』

『???リシュエル…私が口紅をしているのは嫌?』

『嫌じゃないし、むしろすごく似合っているんだが、今日は駄目だ』


 結局、思ったようなものが揃わず、次の店に行こうとした時だった。


 どこからか転がって来たオレンジに全員が気を取られた。我々はいくつかそれを拾って、落とし主の少年にそれぞれが渡して顔を上げる。


『…マリーア?』


 マリーアの姿が忽然と消えていた。


(広場中探し回った。それでもマリーアの姿は見つからなかった…)


 汚れたジャケットを、キースが受け取った。彼自身も砂ぼこりだらけである。

 俺はぎゅっと目を瞑って膝をつくと、そのまま頭を床に擦り付けた。


「…スカイラー殿、フェリア殿、俺が連れ出したばかりに…!!申し訳ありません」

「リシュエル殿…!!」

「マリーアは必ず見つけ出します。必ず」

「…本当に、約束できるのか?」

「当たり前です。見つからなかったなどという報告はしません。見つかるまで休むつもりもありません」

「…そこまで…いや、今日は休んで明日また探そう。私も娘が行きそうなところを見て回る」

「いえ。マリーアが危険な目に遭っているかもしれないと言うのに、俺だけ休むことなど、できない」

「リシュエル殿!!どこへ……」


 キースはトノール夫妻に頭を下げると、俺の後に続いた。


「わ、私も!」


 リーンが駆け寄って来たが、それはキースが制した。


「ハイデンロー家の名にかけて、必ず探し出します。リーン、貴方はその汚れを落として再会のための準備を」

「キース……」


 扉を開ける俺に、トノール伯爵が声をかけた。


「あては、あるのか?」

「…先ほどマリーアを探していて、有力な情報を得ました」


 マリーアのドレスの採寸を待っていた時、たまたま居合わせた令嬢が、新調するドレスの用途をポロリと溢したのを思い出したのである。


 トノール伯爵に向き直る。対峙した俺と伯爵の間には緊張感とは別に、確かな信頼を感じることができた。


「マリーアに求婚した者が、明日誕生日パーティーを開くそうです」

「求婚、した者?ダステムなら牢の中……」

「いいえ。彼ではありません。マリーアに見当違いな悪意を向ける者が一人、思い当たります」

「な、それは…」


 俺は怒りでどうにかなってしまいそうになりながら、再び扉に手をかけた。


「…俺の花嫁を攫った罪を、どうやって思い知らせてやろうか…今から考えております」


 外に出ると、すっかり日が暮れていて、夜空には煌びやかな星が無数に縫い付けてあるようだった。


(今夜は冷え込みそうだ)


「門を出たらすぐら右に」


 馬車は目立つ。徒歩で行くことになるが、俺には土地勘がない。トノール夫妻に報告している時、キースが下調べしてくれていたのだ。


(マリーア、すぐに行く)


 不思議と頭痛は起こらなかった。

面白かった!続きが読みたい!と思ったら、

ぜひ広告下の評価を【⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎】→【★★★★★】にしていただけたらモチベーションがアップします!よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ