第二章:双子の王、そして新たな運命
エーデルハイトの村は、追放者の楽園ではなく、貧しく厳しい土地だった。
だが、ユリシアとリィーナはそこで、互いの才能を再発見する。
ユリシアは、母から教わった隠された魔法の知識を駆使し、村の薬草を用いて治療法を編み出した。
リィーナは、神の加護が弱いと言われたが、代わりに「自然との対話」──精霊との繋がりに気づき、作物の成長を促す力を発揮する。
村人たちの信頼は、日に日に二人に集まっていった。
そんなある日、村の外れに、二人の騎士が現れる。
黒と銀の装飾を施した馬に乗り、威風堂々とした佇まい。
そして、その背後には、漆黒の旗に金色の双頭鷲を掲げる軍勢。
「隣国、ファイザール王国より、王太子ユリウス・リアン・ファイザール、および第二王太子エディ・アルフォア・ファイザール、参上」
声は低く、しかし力強く、風を切り裂くようだった。
兄のユリウスは、漆黒の髪と琥珀の瞳を持ち、冷静沈着な知性を感じさせる。
弟のエディは、銀の髪と翡翠の瞳で、どこか夢見がちな詩人のような雰囲気を持つ。
彼らは、辺境の治安を視察する旅の途中、この村に立ち寄ったのだという。
しかし、その真意は──
「この村に、追放された皇族と聖女がいると聞いた。会ってみたいと思った」
ユリウスの言葉に、ユリシアは警戒した。
だが、リィーナが静かに彼女の手を握る。
「彼らは、敵ではない。むしろ……味方かもしれない」
エディは、リィーナの手を取ると、微笑んだ。
「君の瞳には、神話にしか出てこないような光がある。無能な聖女など、ありえない」
その瞬間、リィーナの心に、小さな火花が灯る。
一方、ユリウスとユリシアは、言葉を交わすたびに、互いの知性と強さに惹かれていった。
ユリウスは、ユリシアの戦略的思考に感嘆し、ユリシアはユリウスの正義感に心を打たれる。
「あなたは、悪役ではない。むしろ、真の正義を知る者だ」
ユリウスの言葉に、ユリシアは初めて、自分の価値を認められた気がした。
ファイザール王国の王太子たちは、二人を本国へ連れて行くことを提案する。
「ここで朽ちさせるには、惜しすぎる才能だ」
ユリシアとリィーナは、互いに目を合わせ、うなずいた。
「復讐の舞台へ──王都へ戻るわ」