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第95話 タツミの謎

 パティスの一言に全員が固まった。今まで全員が俺自身が精霊を具現化できる程の才能は無いと認識していたのだから。


 それが急に覆されると言う事も有るが、むしろ俺が精霊を具現化したならば何故にその精霊の記憶が無いのだろうか?


「え? 私、なんか変な事言った? 思ったままを口にしただけだから、発言の内容までは責任は取れないわよ? と言うかそう言った沈黙は止めてよ!?」


 パティスは場の空気が静まり返ったのを見て焦ったのか、慌ただしく騒いでいる。


「少し聞き捨てにならないわね。どうしてそう思ったのよ?」


 ティルが鋭い目つきでパティスに質問してきた。他の皆は驚いていると言った感じだが、ティルだけは何か不満が有る様な顔をしている。


「さっきまで皆が言ってた契約容量よ。」

「ああ、さっきまで例え話をしていたやつか。」


 確かに話していたなと思った。しかしそれがどう関係しているのだろうか?


「残り容量をどれだけ占拠出来るか試したみたんだけど、残り1割程度以上に広げる事は出来なかったのよ。容量が広がれば共有できる力も増えるかと思ってね! あ、別にナギに怒られた時用に逃げる場所の確保をって考えた訳じゃ無いからね!」


「容量って広げることが出来るの?」


 パティスの説明と言うか言い訳を聞きながら、ティルが意外そうな顔をして聞き返している。


「え? だって、ナギと比べると窮屈なんだもん。ティルや皆だってタツミ君と同化して居る時は本来の契約主と比べて窮屈じゃ無かったの?」


 その発言を聞いて精霊達の「あっ」と言う声が部屋に響いた。


「私は最初からだったし、そんなに差が無いからあんまり気にして無かったけど。」


 ティルはそう言ったが、他は精霊達は違う意見だった様だ。 


「言われてみればそうなんだよ。タツミっちとは仕方ない契約だから気にして無かったけど、感覚は確かに分かるんだよ。」


「確かに、ポンコツとの同化の時は火の精霊界で、久しぶりの同化だからそんなモノかと思っていたが、言われてみれば確かに違った。」


「俺は別に男に好かれても嫌だから最低限で良いと思ってたから、気にして無かったな。むしろ領域を広げようなんて考えもしなかったな。」


 うん……地道になんか心が削られる言い方されている気がするんだが? 特にルーリアとガラントは悪意を感じるぞ!?


「で、多分だけど、4割はティルが名付け契約の関係で占拠してると思うのよ。私達は残り1割を入れ替わっているだけと思うんだ。だって容量の中を調べてみてもティル以外のこの場のメンバーの占有している所が見当たらないんだ。」


 えーっと? どう言う事? 解る様に説明をしてください。


「つまり、タツミ君の中の契約容量の4割はアルセインが占有していて、他の皆は残り1割の部分を入れ替わりで使っていると言う事なのね?」


 ヒジリが納得したような表情で聞き返しているけど、こんな仮定だらけの話をよく理解出来るなと思う。


「そして、残りの5割部分が何かが占有しているけどこの場の誰でもない精霊が占拠していると言う事ですか?」


 リィムも理解した様に聞いている……もしかして理解が追い付いて無いのは俺だけなのだろうか?


「理解が早くて助かる〜! タツミ君は理解出来てないようだけど、自分の事だから余計なんでしょ! 要するに貴方の精霊使いとしての容量の半分はこの場に居ない精霊が占有している筈と推測できるのよ。」


「それが俺が具現化した精霊だと言いたいのか? そうだとしても、俺は精霊を具現化した記憶も名付けした記憶も無いんだが?」


 そこまで言うと、クリューエルが何かを思い出したかのように口を開いた。


「もしかして特異能力セカンド・スキル? 切り裂き魔のように精霊では無く特異能力セカンド・スキルに5割が占有されているとか?」


 確かに斬り裂き魔は特異能力セカンド・スキルの影響で、精霊不要で行動が可能と言っていたらしい。


「それは無いわね。だったら別に私が契約してあげなくてもタツミは一人で精霊界で行動できた筈よ。でも実際は私が精霊力を調整しなかったら間違いなく死んでいたわ。」


 その可能性をティルが即座に否定した。そうですよね! 最初にヒジリが助けてくれて、ティルが契約してくれなければ死んでたんだよな!


「そうなると、それこそ精霊を具現化していないと説明がつかないわよ? この謎の半分の容量は誰が占拠しているのよ? ……ってアレ?」


 そこまで言うとパティスがさらに何かに気が付いたようだが……


「ねぇ、タツミ君の生命力低すぎない? 何でこんなに低いの? 人間界でも貧弱軟弱の男子だったの? 剣道してたんだよね?」

「ちょっと待て! 誰が貧弱軟弱だ! 普通に剣道してたわ!」


 もうね、生命力が低いって皆に言われてるから気にして無いけど、貧弱軟弱では流石に無かったぞ!?


「それも今更だねぇ。タツミのあんちゃんの生命力の低さがネックで月虹丸がそれをカバーしてくれているんだから。」


 ルリがしみじみと言って来やがった。そうですね! 貴方が作ってくれた月虹丸が無ければまとも戦闘出来ませんよ!


「ねぇ、タツミ君。よ~く観察して見たけど。多分、あなたの生命力の半分以上、いや、8割方欠損してるわよ?」

「は? 欠損?」


 続くパティスの言葉に俺は言葉を理解できなかった。欠損しているとはどういう事なのだ? 俺だけでなくこの場に居る全員が困惑している。


「何でそんな事が分かるんだい?」


 ルリが不思議そうにパティスに質問した。俺も何でそう言えるのか聞いてみたい。


「え、ナギの能力がニオイによる探知なのは皆知っているわよね? それの応用版みたいな物よ。人の悪い所って独特のニオイがするって言うでしょ? 影響で簡単な事なら私も解る様になったのよ。」


 えーっと、何でお前までそのニオイの判別が出来るんだよ? 


「ナルホド、知識の共有化を利用してニオイの知識を得たと言う事か。そして風の精霊だからこそ細かいニオイを拾えると。」


 タブレスが後ろで勝手に納得している! 何だよこんなの設定上有りなのかよ? って理屈上は有りなのか? いや、これが事実なら俺的には最弱説が覆るから嬉しいんだけど!


「まぁ、伊達に契約主がニオイフェチなだけあって、私も多少ならニオイに詳しくなったわよ。流石に変態レベルは無理だけどね!」


 うん、パティス。お前、後でナギにどつかれても俺は知らんぷりするからな?


「それで、生命力の欠損の原因はその残り容量の5割を持っている精霊が持っていると言う認識で合っているのですか?」


 リィムはパティスの推察が気になって仕方がない様子だ。と言うか話が脱線し過ぎて若干イライラしている様に見える。


「それは解らないけど、多分そうなんじゃないかな? しかも欠損していると言った方が正しい状況だから、休んで回復するとかでは無いんじゃないかな?」

「つまり、分かるのは今のタツミさんの体の状況だけで、その契約容量と生命力がどこに有るかは解らないと言う事ですね?」

「そ、そうね……お願いだからそんなに圧を掛けないでくれる? 圧を掛けて来るのはナギだけで十分だから! もう少しか弱い精霊に優しくしてくれないかしら!?」


 うん、リィムが端的に要点をまとめてくれたので何となく解った。しかし、か弱い精霊アピールするならもう少し静かにしないと説得力が無いぞ? パティスはそこら辺を理解した方が良いと思う。


「しかし……どう言う事なのかしら? 精霊を具現化してたとしたら火の精霊と言う事になるのよね? 私もタツミ君を治療した後の記憶が無いけどアルセインは何か知らないの?」


 ヒジリも不思議がってティルに聞いているが、ヒジリが俺を精霊界で最初に見つけた時点では気絶して死にかけていたのは確かなのだろう。


 精霊を具現化していたと仮定するならば、ヒジリが俺を見つけるさらに前か、契約後に俺が目を醒ます間になるが、そうだとしたら知っているのはティルだけになる筈なのだ。


「し、知らないわよ。少なくても私はタツミが精霊を具現化した所は見ていないかしら……ってそんな目で見ないでくれる!? 精霊は性質上、嘘はつけないからね!」


 おっと、疑いの眼差しを向けていた事がバレたらしいが。まぁ確かにティルが隠していても何のメリットも無いか。


「そうだな、精霊は人間と違ってウソはつかない。言い方を変えれば隠す事はしても質問にはウソを言う事は出来ない。逆にウソをつけない性質上、言いたく無い事は黙るか答えない。」


 タブレスが面倒臭そうに説明しているが、そう言えば何でウソがつけないんですか?


「精霊は人間の強い感情で具現化しますから基本的に素直なんです。だからウソはつきませんし、その必要が無いんです。」

「あー、だから全員が欲望に忠実なのか……発言をオブラートに包む事すらしないもんな、納得したわ。」


 確かにどの精霊も感情に素直だもんな……確かにウソはつかない性質と言うのも頷けるし、ごまかしたり隠したりはするがウソをつかれた事が無いと思い出した。


「その発言はどうかと思うけど……まぁ納得してくれたんなら私がウソをついて無いと信じてくれるんでしょ?」


 拗ねた顔のティルがこちらをにらんでいるが……ウソはついていないんだよなぁ……。


 誰もウソを言って無いとすると、俺の契約容量の5割と生命力の8割程はどうなっているのだろうか? 謎が増えたまま頭が混乱していくだけだった。


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