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第93話 吹雪の中の談笑

「そろそろ吹雪いて来そうだね。一回家を出すから全員中に避難しな。」


 しばらく進むと急にルリは何かを察したのか、ルーリアに切り替わって記憶還元錬成アース・ストレージにしまっていた自宅を雪原の上に出現させた。


「こんなに晴れているのに吹雪くのか?」


 レンが不思議そうにルリに尋ねると、俺の隣に居たリィムがそれを肯定してきた。


「そうですね、風が冷えて来ましたし、上空の雲の流れも怪しいです。確信は有りませんがまず間違いないと思います。」


 そう言うと俺の手を引っ張って家の方へと進みだすとヒジリも慌てて俺を追いかけて来る。リィムはレンとナギを見ていて真似をしたいのだろうか? 相変わらずその二人は手を握ったままだが……


「山国育ちの勘を舐めるんじゃない、間違いなく来るから一回避難だよ。さっさと入りな!」


 ルリは外に残っていたメンツを急かして家の中へと非難させる。タブレスは俺達が入った直後、リィムを追いかける様にさっさと家に入って来た。




 全員が家の中に入り、暖炉と言うか鍛冶用の炉に火を起こして暖を取る準備を始める。家の中でも住居エリアには暖炉の様な物が無かったので、工房エリアの方にテーブルた椅子を移動して暖を取っていたのだ。


 炉に火が灯り、熱が部屋を暖め始めると同時に窓にガタガタと言った音を立てながら風が激しく叩きつけ始めた。


「か、風が出て来ましたね……と思ったら既に吹雪いている!?」


 音に気を取られて窓から外を覗き込んだヒジリの声が家の中に響いた。俺とレンはヒジリの声につられて窓の外を覗いてみると既に外は猛吹雪で、視界がほとんどない状況だった。


「おいおい、この家に入って30分程度しか経って無いのにこの天気なのか?」


 レンが驚いた表情でつぶやいているが、俺も同意見だった。流石にこんな少しの時間でここまで天気が変わる物なのか?


「まぁ、氷の精霊界と言う事が影響している部分も有るから、余計に吹雪きやすいんだよ。」


 騒いでる声を横目にルリが炉に炭らしきものを入れて部屋が冷えない様にしてくれている。特にレンには死活問題だろう。


「確かに私達も水の精霊界に行くまでに何度か吹雪で足止めされたわね。流石に精霊石の準備が無かったら死ぬ覚悟が必要だと思ったわよ。」


 ナギが俺らの様子を見てしみじみと語っている。そう言えば俺らと合流する前にクリューエルと二人で氷の精霊界を通って来ているんだったな……よく無事だったな。


「まぁ、俺とナギさんの場合は人間ですから道具さえ有れば吹雪は何とかしのげましたので、でも精霊石無しでの氷の精霊界に長期滞在はお勧めできませんね。」


 クリューエルがそう言ってテーブルの上に赤い火精霊石と緑の風の精霊石を置いて説明し始めた。


「基本は天候が良くなってから集落から移動でしたが、急な時は火と風の精霊石を同時使用して熱風で吹雪を相殺してました。」

「ん? 消滅属性の世界なのに風の精霊力をそんなに使って大丈夫なのか?」 

「あ、精霊石を介して使うので負担は少ないですよ。後、消滅属性の世界と言っても精霊術が全く使えない訳では無いですからね。」


 クリューエルが不思議そうな顔をしている俺に説明してくれたのだが、そう言えば俺とヒジリは精霊石の用途について詳しく知らないかも知れない。


「なぁ、精霊石って境界線を通る時や、鍛冶素材以外にどういう使い道が有るんだ? 今みたいに火の精霊石で体を温めたりするのが普通の使い方なのか?」

「そう言われると……た、確かに私達は詳細をあんまり知らないよね。」


 ヒジリも隣で頷いている。レンも頷いているが、コイツの場合は精霊石の説明自体も受けたのかどうか怪しい。


「そう言えば、ハッキネンが火の集落に行くときに出来上がる過程しか話していませんでしたね。折角ですから説明しておきましょうか。」


 そう言ってソファーにタブレスと座っているリィムが思い出した様に説明を始めてくれたのだった。


「精霊石は付近の精霊力を吸って出来上がる鉱石ですが、溜め込んだ力は精霊や人間からの精霊力で燃料を燃やす様にその属性を使用する事が出来ます。」


「それで、ナギちゃんやルリさんが火の精霊石で凍えずに済んだのね。」


 リィムがヒジリの質問に頷いて肯定する。そして説明は続く。


「で、レンさんの場合は属性相性が悪いのでそもそもが発動しませんでした。精霊石を使うにしても相性は有ります。」


 リィムはレンの方に視線を送ると、レンはもっと早く言えよと言う表情をしてる。その視線を察してリィムは申し訳なさそうにするが、お前に精霊石を渡したのはルリだからそっちに文句を言うべきだと思う。


「まぁ、精霊石も石炭に似た様な物と思いな。火と言う精霊力を与えれば燃料になるが燃え尽きれば灰になる。精霊石はそれが属性ごとに変わると言う事だよ。」


 ルリが横から補足説明をして来るが……相変わらず説明と性格が大雑把すぎるだろう。


「つまり、簡易的にだが相性が悪くないなら他属性の精霊術が使えるって事か?」


 俺がルリに聞き返すとリィムの方が答えて来た。


「厳密には違いますね。溜まっている属性の精霊力を溶かしてると言った方が正しいので、火の精霊石なら熱エネルギーや簡単な火を起こす程度です。風の精霊石なら風を起こすだけと言った具合に自然現象を開放すると言った方が正しいかも知れません。」


「つ、つまり、ナギちゃんとクリューエルさんは火と風を同時に使って熱風を起こしたと言う事よね? 逆にそれ以上の事をするのは精霊石では不可能なのね。」


 リィムの発言にヒジリが首を傾げながら具体例を言って確認を取っていたが、俺には途中からややこしくて理解を拒否したくなって来た。


「その認識で良いと思います。むしろ精霊石に過剰に期待するのは危険です。攻撃手段とし期待できるレベルではありませんから。」


 よし、最後の部分だけは良く解った。戦闘は基本的には自力と言う事で良いのだな。精霊石自体はどこぞの便利グッズみたいな物と認識しておこう。


「タツミ……素直に言わせてもらうけど、もう少し勉強した方が良いわよ、その思考感情は普通にどうかと思うわよ。」


 ティルからの久しぶりのツッコミが飛んで来たが、もっとこうシンプルで良いじゃん! 説明が複雑なんですよ!


「ティル、諦めろ。ポンコツはすぐに簡単な答えに飛びつきたがる。」


 ハッキネンのツッコミも来た! 最近静かだと思ったのに! そして同意する様なティルの顔が伝わって来てるんですが……。


「ヤッパリそうよね? その辺に関してはハッキネンも強く言って貰えないかしら? 私だけじゃ効果が薄いのよね。」

「いや、ポンコツは感覚派と言って理解を拒否している。ダメだ。」

「そうよね、感覚も大事なのは分かるけど……理屈が分かって無いとダメよね。」

「うむ、だからいつまで経っても弱っちい。」


 ……おい? お前ら久しぶりに口開いたと思ったら随分と言ってくれるじゃないか。本気でナギの様に分離権限を譲渡してもらいたくなって来たぞ。 


「お前らな……。人の中に隠れている状態で好き放題言ってくれるな。そこまで言うなら同化・分離権限を俺に寄越しても良いんだぞ?」


「お断ります。」

「アホ。むしろ契約を切る。」


 ティルは笑顔で返して来るし! ハッキネンに至っては逆に契約解除をチラつかせてきやがった……そうですよね、俺の方が立場弱いですよね……


「え? 契約って切れるのですか?」


 リィムが驚いたような声でハッキネンに問いただしていた。


「リィムと比べれば契約の力が圧倒的に弱い。その気になれば切れると思う位。」


 ハッキネンもここは真面目に答えたのだろうが……そんなに違うのか?


「私はヒジリが6とするとタツミは4って所かしら? 極端に差は無いけどややヒジリとの繋がりの方がやや強いわね。」

「そうなのか? 私はリィムが9でポンコツは1程度だな。」


 ティルも真面目に返して来たがリィムからの返答で随分と差が有るように感じた。これは一体何が原因なのだろうか?


「俺もハッキネンちゃんと同じ感覚だな。申し訳ないレベルと言った所だな。」

「そうだね、私も同じ位なんだよ。繋がりと言うか契約の強さで言うならタツミっちとの契約の強さは1程度と言う所が妥当なんだよ。」


 不意にガラントやルーリアまでハッキネンに同意してきた。コレが命名契約と同調契約の違いなのだろうか?


「その理論で言ったら残りは3だから後3精霊と契約したらキャパオーバーになるんじゃないのか?」


 レンが冗談交じりに話に入って来たが、ナギとクリューエルが先程から不思議そうな顔をしていた。


「そう言えばこの前もレンに月虹丸? だっけ? 預けて精霊力のチャージとか言ってたけどそれと関係あるのかしら?」


 ナギが不思議そうにしているので思い出したが、二人に俺の体質の説明をするのをすっかり忘れてた!


「まぁどうせ吹雪で動けないから、俺の体質の話をしようか。」


 俺達は椅子に座ってテーブルに着くと説明を始めた。



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