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第88話 融合剣技

 エル君の両腕に見えない風の何かが具現化しました。同時に二人は加速しながら間合いを詰めます。


 その加速も先程のよりも明らかに早くなっている様で、リッパーも少し驚いた表情を見せつつも飛燕閃を撃って牽制してます。


「ただ飛ぶだけの斬撃ならさほど脅威にはならないんですよ!」


 飛燕閃を左右にステップしながらの加速で華麗に避けるとあっという間に間合いを詰めました。


「接近戦なら勝てるってか! 面白い冗談だな小僧! 五天閃・連撃!」

「風の手甲の剣撃の加速を甘く見ない方が良いです!」


 リッパーは一振り五連撃の攻撃を連続して打ち出しましたが、全てが異常な剣速で全て撃ち落とされていくのでした。


 正確には一刀一撃で落としているのではなく、大剣の面積を利用して一振りで2,3個の斬撃を破壊しているのですが、それでも斬撃数の差が有るにもかかわらず、全て斬り払ったのでした。


「な!? だったらこれはどうだ! 破響閃!」


 今度は破響閃を大剣に叩きつけて先程の様に吹き飛ばそうとしましたが、今度は正面からそれを受け止めています。ぶつかり合う衝撃の風が離れている私達の所まで届きます。


「風の推力を集めれば力負けはしない!」

「クソが! 俺の破響閃が押されているだと!?」


 二人が叫んだ直後、リッパーの刀が後ろに弾かれました。エル君はその隙をついて斬りかかろうとします。


「足刀!」


 体勢が崩れた瞬間に、エル君の喉元に蹴りによる斬撃が飛んできました。しかしエル君もそれを皮一枚で首を逸らして回避します。


 見ていて解ったのは風の手甲の能力は単純に腕の振りや力を風の推力で助けると言う物なのでしょう。先程は力負けした破響閃にも対応できていますし、剣速負けする事も見ている限りは無くなりました。


 二人は体勢を立て直すとすぐに相手へと斬りかかり、斬撃の応酬をくり返しますが、お互い決め手に欠ける状態が数分続きました。


「おいおい、久しぶりだな。ここまで遊べたのは。」

「それはどうも! でも俺は御免ですけどね!」


 リッパーが楽しそうな表情でエル君に話しかけながら斬撃を出し続けてます。エル君は一度呼吸を整えるべく、大振りの一撃でリッパーを後ろへと飛ばして距離を取りました。





「よしよし、素晴らしいじゃねえか小僧。だったら俺も少し本気を披露してやろうじゃねぇか。」


 リッパーは刀を構えると更に刀が発光しているのが見えました。


「飛燕閃プラス破響閃。」


 そう言うと刀を横薙ぎに振ると光の一文字の線が空中に残りました。そして返す刀をその線に十字交差させる様に振り抜くと十字の光の線が一つの玉の様に集まって行きました。


「さぁ! 即死するんじゃねぇぞ! 融合剣技『天龍一咬てんりゅうひとかみ』!」


 リッパーは光の玉を刀で突いて撃ち出すと、光の玉はまるで龍の頭の様な形状になり、彗星のごとく一直線にエル君に向かって襲い掛かりました。その速度は飛燕閃の比ではなく、威力も破響閃と比べて数倍の破壊力を持っているのが明白でした。


「なん……と! 速!」


 エル君が何とか咄嗟にかわしますが、天龍一咬の余波で吹き飛ばされます。


 そのまま遠くの水面に着弾すると同時に、ティルのプロミネンス・エクスプロージョンを撃ち込んだ時の様な爆発音と水しぶきが立ち上がったのでした。


「え? サクッと打ち出した割には威力が異常過ぎない……? 爆弾の様な威力だったわよね?」


 ナギが目を丸くして唖然としてます。例えが良く解りませんが、ティルの最大火力並みの技を撃ち出したにもかかわらず余力が有り余っている様に感じます。


「融合剣技と言ったね。という事は組み合わせ的にまだ他にも有るって事かい?」


 ルリは想像した時点で顔を青くしてます。




「く……、余波の衝撃だけでこの威力だと。何てデタラメな破壊力なんだ。」


 エル君が立ちあがって再び大剣を構え直します。風の装備はまだ外れてない様なので安心しました。


「よしよし、流石に小手調べで出した初撃で死んだら面白く無ぇからな。では次だ! 今度は回避を頑張れよ! 飛燕閃プラス五天閃!」


 再び十字に刀を振って光の玉を作り出しました。今度は多重攻撃と遠距離の組み合わせですか、嫌な予感しかしません!


「融合剣技・『七彩暴れ龍(しちさいあばれりゅう)』!」


 斬り裂き魔(ザ・リッパー)が光の玉を撃ち出すと、今度は先程の天龍一咬よりは小さいですが、龍の頭を模した光が7つに分かれて上下左右からエル君目掛けて襲い掛かったのでした。


「何で数が五より増えてるんですか! しかもこの首一個一個が破響閃よりも絶対威力高いでしょう!」


 エル君は余りの光景にツッコミながらも急いで四方に移動しながら回避行動をとります。速度は有りますが、先程の天龍一咬よりは遅いです。


「おいおい、暴れ龍だぜ? 追いかけるに決まっているだろ?」


 リッパーはニヤニヤしながら逃げ回るエル君を見ています。本当にコイツは悪趣味です、わざわざ私達の反応を見て楽しんでいます。


「地面にぶつかっても消えない!?」


 エル君は地面に落ちたら消えると思っていた龍の頭が消えずに向かって来るのに辟易しながら回避を続けています。何ですか? フライクーゲルの様に必中効果付きなのですか!?


「怒り暴れた龍は目標に咬み付くまで消えやしねぇんだよ! さぁ、小僧は生き残れるかな! はっはっは!」


 楽しそうに高笑いしてます、地味にムカつきますね。もしかしたらヴァイと同じで今なら技を使えないかと思い攻撃しようと考えましたが、それはすぐに否定されてしまいました。


「お楽しみのところ悪いが、男のダンスを見る興味はねぇ! もう一発オマケだ! 『七彩暴れ龍』!」


 何と2度目の同じ技を撃ち出して来たのです。合計14匹の龍がエル君に襲い掛かります。これはいくら何でも多すぎです!


「ああ、もう! 避けきれるか!」


 エル君が苛立ちを隠さなくなって来た所で、回避した龍の頭を一発大剣で殴りつけると、別の龍の頭にぶつかって大きな爆発を起こすと消えたのでした。


 爆発の余波で少し体勢を崩しながらも、回避に戻りエル君は意外そうな顔をして叫びました。


「何だ! 殴れるじゃないですか! これなら!」

「普通は殴れねぇし! 消えねぇよ!」


 次々と龍の頭を殴りつけては、別の龍の頭にぶつけて爆発させていきました。リッパーが何かツッコんでますが、普通の武器なら不可能なのでしょうね……


 全ての暴れ龍が消えると再び二人は距離を取って睨み合います。


「おぃ、ツッコミどころが多すぎてどこから突っ込めばいいか解っらねぇんだが。てめぇのその神器は一体何なんだ? 絶対切断の斬撃の技を受け止めたり防ぐわ、特異能力の技を撃ち落とすわ、一体どう言う性能なんだ?」


 リッパーが輝炎の剣の事がどうしても気になり出したようです。そりゃ、私達から見ても輝炎の剣以外の武器防具では勝負自体が成り立た無いのは分かるのですが……。


「これは母の形見の神器だ。だから能力は使えないが、頑丈さは他の神器に引けを取らないと思っている。」


「ぁ? 母親の形見だぁ? どう言う事だ? 神器は持ち主が居なくなると強度が一気に低下する筈だ! 恒常性の力は精霊か人間が精霊力を供給しないと維持出来ねぇ。昔奪い取った刀の神器も強度が低下して、すぐに壊れやがったんだからな。」


 リッパーが不思議そうな顔をして言っていますが、その強度低下の事実も初耳なんですが? 兄上はエル君の剣を今はただの頑丈な剣と言ってましたが……それだと色々矛盾が有る様な気がします。


「知るか、現実として、この輝炎の剣はお前の斬撃を受けることが出来るのは言う事は間違いない。」


 エル君は大きく深呼吸をしてリッパーを見据えて気合を入れ直しました。


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