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第87話 全属性耐性

 二人の斬り合いが進む中、急に風が凪いだかと思うと、それは突然訪れました。


「よし、精霊力が溜まった! 『風の具足ぐそく』解放!」


 叫ぶと同時にエル君の両足に見えない何かが集まって行くのが解りました。


「あぁん? 何だそれは? 精霊術かよ!」


 それを察したリッパーは下がって間合いを取り直そうとしましたが、エル君は圧倒的な速さで前に踏み込んで斬りかかります。


「な! 足の具現化した装備は加速装置か!」


 一気に間合いを詰められると、嫌そうな顔をして大剣を刀で薙ぎ払います。


「足が速くなっても剣速が遅いんじゃあ、ハエだって斬れねぞ小僧!」


 リッパーは剣速を見て、瞬時に新しい力が加速だけと判断して恐れる事無く再度斬りかかるのでしたが、加速が異常な事に気が付くのはその直後でした。振った刀は空を斬り、エル君は既に数歩後ろまで下がっていたのでした。


「じゃぁ、アンタの剣も同じって事でいいですかね?」


 避けたエル君は挑発する様に笑いかけてます。


「あぁん? このクソガキ。特異能力セカンドスキルの力がこんなレベルじゃねぇって教えてやらないとダメの様だな。」


 リッパーの持っている刀がうっすらと光り始めました。刀身から発する妙な光は、何でも斬り裂くと言うイメージが強く伝わる何かを発していました。


 直後にリッパーはエル君の方へと踏み込んで刀を振り抜くと刃が飛ぶと言うのが正しい様な、弧を描いた何かが刀身から発射されたのでした。


飛燕閃ひえんせん!」


 斬撃を飛ばして来ました! 斬撃を飛ばすってどれだけ自然法則を無視しているのですか! これだから特異能力や神器は嫌いです!


「うわ! ってただ斬撃を飛ばすだけなら、輝炎の剣で防げるじゃ無いか……。」


 エル君は飛んで来た斬撃を大剣で受けると、何事も無かったかの様にキョトンとした顔で受け止めていました。


「はぁぁぁ!? ふざけんな! 切り裂き魔は絶対切断の能力だぞ!? 何だよその神器は! 舐めてんのか!」


 リッパーが怒り狂ってます。どうやら普通だったら防御不可の様ですね。ルリの盾も真っ二つにされる気がします。


「余計にてめぇから切り刻んでやりたくなったぜ、覚悟しな!」


 リッパーは飛燕閃を何発も繰り出しました。しかし、今度はエル君も受けるのではなく具足の加速を利用して次々とステップを踏む様に回避していきます。


「この位の速度なら何とか避けれる!」


 間合いをじわじわと詰めて大剣の射程圏内に入ると風の力を纏った大剣を横薙ぎに振るいます。防がれても剣からの風の力が相手にそのまま飛ぶような攻撃なので、受ける選択肢は無い一撃です。


「誘われたって気付けよ小僧。破響閃はきょうせん!」


 リッパーは刀を大剣目掛けて振り抜くと、ぶつかった瞬間に何かが爆発したような音と衝撃が辺りに響きました。風の精霊術ごと吹き飛ばしたのでしょうか? 先程に比べて明らかに威力が高くなっています。


「流石にご自慢の剣は壊れなかったが、てめぇの手が衝撃に耐えられなかったようだな!」


 エル君の輝炎の剣が遠くに飛んでいるのが見えます。無防備なエル君に一歩踏み込んで刀を振り下ろします。


「コイツは回避できないぜ! 五天閃ごてんせん!」


 刀の周りに4本の光の刃が発生するのが見えました。それはそのまま刀の動きを追跡して行き、剣閃となり本体の刀と合わせて五つの太刀筋として襲い掛かります。全ての攻撃が5倍攻撃になると言う事ですか? 意味が解りません!


「おっと、私を忘れんじゃないよ! コイツは耐刃用の盾だ!」


 リッパーが振り抜こうとした瞬間、ルリが間に入って先程までとは違う大盾で防御します。盾は次々と攻撃を受け続け、連撃全てを防ぎきりました。


「ツッ! 本当にイラつかせるのが上手な奴らだな! だったら吹っ飛べ! 破響閃!」


 すぐに盾に向かって破響閃を叩きつける様に撃ち出すと、轟音と共に盾が砕かれてルリは後方へと吹き飛ばされたのでした。


「何だい! 耐刃を付与してるのに一撃で破壊だと!?」


 ルリは悔しそうな顔をしていますが、想定内だったのか無傷でした。


「おぉー生きてんのか。すげぇ盾だな。五天閃の斬撃を防ぐだけでも異常な盾だっつーのに、お前も相当異常だな。」

「防御が自慢の私からしたら、アンタの能力は相性最悪過ぎだね。」


 ルリは忌々し気な顔をしながらリッパーを睨みつけています。


「ふん、小僧は剣を拾えたか。けどなぁ足が速いだけなら相手にならねぇ。もう一匹の隠れているチビでも相手してやるか。」


 エル君の方を振り向きつつ、刀でナギの方に飛燕閃を飛ばしますが、ナギもニオイで察したのかそれを回避するとルリと合流して再び盾の陰に隠れました。


「そこのお嬢ちゃん、邪魔すんじゃねぇぞ? 久しぶりに手ごたえが有る奴が相手なんだ。邪魔したら先にお前を斬り殺す。」


 ナギの方を見もせずに言葉だけで圧力を掛けて来ました。そしてチビって私の事でしょうかね? 絶対後悔させてあげます!


 「と、チビはそこか。」


 氷塵に隠れて見えない筈のこちらへ寸分の間違いも無く突進して来たのでしたが、準備はこちらも完了です!


「チビチビうるさいです! 八寒地獄・青連!」


 リッパーが真っ直ぐ来たので罠の後ろへと下がり発動させます。流石に冷気までは斬れないでしょう! 八寒地獄を発動させると正八角形の各頂点の設置した魔法陣が浮かび上がり、強力な冷気がリッパーを包み込みます。


「流石にいくらアナタでも冷気は斬れないでしょう! 油断し過ぎです!」


 しかし、私の考えは甘かったとすぐに気付きました。確かに体表には霜が付いているのですが体の芯の部分まで凍る様子が見えません。どう言う事でしょうか!?


「おいおい、特異能力セカンドスキルを舐め過ぎだろう。ただの冷気じゃ俺を殺せねぇ。特異能力斬り裂き魔(ザ・リッパー)は全ての属性に強い耐性が有るんだよ! 俺を殺したけりゃ物理攻撃しかねぇんだよ!」


 はい!? 全部の属性を防ぐって何ですか!? 頭おかしいんですか? 真っ向から斬り合わないと倒せないって事ですか!?


「しかし、この冷気は邪魔だな。飛燕閃!」


 リッパーは飛燕閃を飛ばして罠の魔法陣を次々と破壊して八寒地獄を解除しました。何ですかこのチート能力は!?


「さーて、コレが切り札ならおチビちゃんは役立たずだ。あっちで一緒に隠れてな、先に殺してあの小僧が頭に血が上って戦っても面白くねぇ。」


 リッパーはエル君の方を向き直します。悔しいですが素直にルリの方へと戻ります。


「殺人狂かと思ったが違うのか?」


 エル君が既に輝炎の剣を手に取って構え直してました。相手を見据えて問いかけると彼は高笑いしながら答えて来ました。


「バカかおめぇ? 少しでも勝てると思っているバカ共に圧倒的な絶望を与えた上で、その絶望の顔を見ながら殺すのが楽しんだよ! 一番気に食わねぇのは勝てると思っているその態度なんだよ!」


 その様子を見てエル君は不快そうな表情をしてます。私も正直気持ち悪いです。


「だったら倒させてもらいます! 『風の手甲』発動!」


 エル君の両腕に足と同じような見えない風の何かを纏いはじめたのでした。


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