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第86話 小手調べ

 特異能力セカンドスキル、それはこの世の物理や自然法則を無視した常識を超越した能力です。


 それなりに精霊界に居る私達でも遭遇するのはレピス位で、それ以外は謎のままでしたが……ヒジリさんと言い、こうも連続で遭遇する事になるとは思っても居ませんでした。


 それよりも何が問題かと言うと、そんな規格外の存在が敵意剥き出しで私達を殺そうとしている事が問題なのです。


「まぁ、そう驚いた顔になるよなぁ! 俺の特異能力セカンドスキルは有名だからなぁ! まぁ精霊なんて言うクソ雑魚に頼らないといけない貴様等とは違うんだよ!」


「どう言う意味だい? 特異能力セカンドスキルが有るから精霊が要らないとか、アンタだって最初は精霊と契約して精霊力を調整したんだろ? 世話になった筈の精霊を随分と見下すもんだね。」


「あ~ん? 知るか。この『()() ()()()』様は最初から精霊なんて具現化してねぇし、軟弱な相棒が居ないと精霊界で生きていけない奴らと一緒にするんじゃねぇ。それにこれから死ぬのに理解したって意味がねぇだろ?」


 意味が解りません。特異能力セカンドスキルが有るなら精霊が居なくても精霊界で活動できる? 能力自体に精霊力を制御する機能が有ると言う事なのでしょうか?


 考えているとルリが前に出て再び盾を構えました。今度は飛ばされない様に足元の地面を土壌操作で固くして踏ん張れるようにしています。私も考えるのは後にしましょう。


「今度は踏ん張れよ! 破響閃ハキョウセン!」


 リッパーは一気に踏み込んで突進して来ると、刀はルリではなく後ろで構えていたナギの目の前に迫ったのです。


「何てな! まずは邪魔そうなお嬢ちゃんからだぁぁぁ!」


 刀がナギの目の前に迫ります。私達がリッパーの速さに反応出来ずに固まっていると、ナギは驚くような動きをしたのでした。


「うわわわ! ちょっと危ないわよ! 普通こっちを狙う!?」


 私達が反応出来なかった刀をキレイに身をよじって避けたのでした。


「あぁ?」


 リッパーは意外そうな顔をしながらも刀を返して連続で斬りかかります。流れる様な剣閃がナギに襲い掛かりますが、何故かそれを軽々とかわしていきます。


 私とルリは意味が理解できずに茫然としてしまいました。リッパーの刀の速度はとても速く、私やルリではあの様に回避を続けるのはまず無理です。


「おいおい、お嬢ちゃん。どう言う手品だ? 動きは素人にしか見えないが?」

「そんなのにわざわざ答えるバカは居ないわよ!」


 リッパーは不思議そうな顔をしながら刀を振り続けて観察を続けています。一方ナギは回避がやっとで、状況は良くなって無い事が分かります。


「こっちを忘れるな!」


 エル君が攻撃に夢中になっているリッパーへ大剣を振り下ろしていきました。


「てめぇは雑魚過ぎんだよ。出直せ! 足刀!」


 リッパーは回し蹴りでエル君の大剣を受け流します。力の方向を逸らされたエル君の大剣はそのまま軌道を変えて横の地面を殴りつけました。


「そのまま死ね! 破響……」


 体を返してトドメを刺そうと刀を構えた瞬間、エル君の大剣が地面に刺さると同時に風の爆発が起きて、激しい水しぶきと砂ぼこりが発生したのでした。


 予想外の事態で生じたリッパーの隙を逃さず、エル君はそのまま横薙ぎに大剣を振り抜きました。リッパーは刀で大剣を受け止めましたが、質量の差でそのまま後方へと吹き飛ばされると大きな砂埃を上げました。


「急いで追撃を!」


 エル君の声で我に返ったハッキネンが急いで氷塵を発生させて移動を開始します。身を隠しながら罠を設置しつつリッパー目掛けて進んで行きます。


 そして体勢が崩れたままのリッパーまであと少しの所まで近づくと同時に、ナギが慌てて制止して来たのでした。


「ハッキネン! 止まって。それは罠よ!」


 同時に風の力を纏った小石が私達の目の前に飛んで来ると、それに驚いたハッキネンは足を急に止めたのでした。


 その瞬間、私達の目の前に飛んで来た小石が真っ二つに斬られたのでした。ハッキネンはそれを見て咄嗟にルリの近くまで戻ります。


「クソが! おい! そこの嬢ちゃん。お前、何者だ? 何で居合斬りが解った?」


 砂ぼこりが収まるとリッパーがナギを睨みつけていました。刀で受けたとはいえ、エル君の一撃でダメージを受けた様子もありません。


「言ったでしょ? わざわざ自分の能力を喋るバカは居ないわよ。もし教えて欲しいならアンタの能力のタネ明かしをしたんなら考えてあげても良いわよ!」


 確かに、今の居合斬りも来ると解って石を撃ち込んだのが解りましたが、ニオイだけでそこまで分かるものなのでしょうか? しかし挑発までしてます……どれだけ避ける自信が有るのでしょうか?



「ハッキネン、伝承の通り『何でも斬り裂く』力だとすると、私じゃ相性が悪すぎる。恐らくエル坊の大剣が元は神器だから今の攻撃も通用したが、神器以外の物理的な物は斬られる前提で考えるんだよ。」


「確かに、伝承が誇張され過ぎた物と判断するのは危険。むしろエルの剣が切れなくてイライラしている様に見える。」


 ハッキネンも冷静に判断してきます。今までの攻撃や言動を見るとエル君の大剣も斬れると思ってたのが斬れなかったようです。おそらく力は無くても神器だからでしょう。




「おい、小僧。貴様の剣は神器だな? 俺の能力で切れないのは余程の耐性持ちの装備か神器位だからな。何で神器の力を使わねぇ? 俺を舐めてるのか?」


 リッパーは答えようとしないナギから今度はエル君の大剣に興味を移したようでした。


「お前程度の相手に神器を力を開放するのは勿体無いだけですよ。」

「ガキ共が……まぁいい、まずは貴様ら二人から斬ってやるよ! 上げて行くぜぇぇぇ!」


 不敵な笑みを含めながら叫ぶと再び今度はエル君の方へと刀を構えて突進していきます。



「リィム! このメンツではアンタが切り札だ。 物理的じゃない攻撃はアンタしかいないんだからね?」


 ルリはエル君の方へと駆けて行きます。私はルリの言葉の意味を理解して八寒地獄の準備をする為にハッキネンに氷塵隠れを使ってもらって、設置を急ぐ事にしました。



「確かに速度は速いが、風の精霊術使いの速度を舐め無いことです!」


 エル君の周りに風が集まって行くのが解ります。さっきまでは大剣にしか纏ってなかった風がエル君全体を包むようになります。


 リッパーの刀がエル君を横薙ぎに斬ろうとすると、それを大剣で器用に防ぎました。


「ほう、少しは反射速度が良くなったか? だったら! しっかりと楽しませろよぉぉぉ!」


 楽しそうな表情を浮かべながら目にも止まらない速度で刀を振り回し始めました、エル君もそれに負けじと大剣を器用に取り回して全て防いでいきます。


 大剣の取り回し方が刀身の部分を持ったり体を押し当てて受け流したりと、まるで曲芸の様な動きで次々と刀を防御していくのでした。


「てめぇ!? 曲芸師か何かかよ! ふざけんな! 足刀!」


 全てを防御されて腹が立ったのか、今度は足技と刀を含めて次々と斬りかかりますが、相変わらず安定して防いでいます。いつの間にこんなに強くなったのでしょうか?


 私はエル君の成長に驚きを隠せませんでした。接近戦においては私達よりも確実に強いです。精霊術を加味すれば相性の差も有るのでしょうが……ちょっと悔しい気持ちになります。


 私の気持ちとは裏腹に次元の違う二人の斬り合いは激しさを増していくのでした。


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