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第83話 騒音娘

 私とルリはパティの物凄い絡まれ方に音を上げて、ハッキネンとルーリアを差し出しすと、別の部屋で精霊の女子会が始まりました。


「元気だね……」


 鍛冶を終わらせたルリがテーブルに着いて、精霊達が居る部屋に視線を送りながら呆れた表情をしています。


「私でも手に負えない時が有るわよ。精霊って皆あんな感じかと思っていたけど、ハッキネンやルーリアは静かだわよね。」


 ナギが少し驚いた表情で言ってきますが、逆にアレはアレで手に負えない時が有るのですが……。


「まぁ精霊なんて人間の感情から具現化するからね、ちょっと位偏った性格になるのは当然じゃないかい? それに自分の感情の一部だから私はそこまで気にしたことが無いね。」


 ルリは達観した意見を言ってきましたが、ルーリアが引き篭りなだけだから疲れないでしょうに。


「私的にはルーリアみたいな静かな子の方が助かるわよ……ちょっと羨ましいわ……。」


 ナギが頭を抱えてますが……そんなに凄いのでしょうか? いや、ハッキネンとルーリアが連行されてる時点で凄いですよね……


「ハッキネンは静かと言うよりも毒舌なだけですから、大人しいとはちょっと違いますね、それにかなりのイタズラ好きです。」

「それは……苦労するわね。どっちがマシかは一緒に居ればすぐに解りそうね。」


 一応の相棒相手に結構な毒舌を吐いて来ますね……意外とナギとハッキネンは気が合いそうな気がして来て怖いんですが。


「ところで、ナギは精霊術はどの位使えるんだい? 風の精霊術は色んな使い方をする奴が居るからね。」


 ルリが先程流れてしまった精霊術の話に戻してくれました。そうです、これから行動が一緒になるのですからお互いの能力を知っておくのは大事ですからね。


「あ、私自身の攻撃能力はちょっとした鎌鼬(カマイタチ)を作れるくらいで、威力も射程距離も短いわよ。」


 そう言うとナギは右手の指先に風の渦みたいな物を作り出してテーブルの角を少しだけ切り落として見せてくれた。


「おぉ、綺麗に切れるのですね。」


 私が切り口を見て感心していると、ナギは残念そうな顔をして説明を続けて来ました。


「でも、切れる厚さは本当にこのちょっとした角を落とすレベルで、1㎝も厚さが有れば切れないわ。表面に傷を付けておしまいのレベルだわよ。」

「でも、ナギは『攻撃能力』は、と言っていたね。という事はアンタの本質的な力は別だろう?」


 ルリが視線を送ると、ナギは困った様な顔でモジモジし始めました。


「いや……あの……ちょっと説明するのが恥ずかしいんだけど……。」


 何でナギは照れているのですか? 能力の説明で恥ずかしがるってどう言う事なのでしょうか?


「えっと、言いずらいなら俺から言いましょうか?」


 エル君が助け舟を出すつもりのようですが……、それって本当に助け舟になるのでしょうか? 説明自体が恥ずかしいのでしょう?


「ちょ! クリューエルさん!」


 ナギが慌てていますが、エル君はそのまま説明を始めてしまいます。この子はこう言う所の空気は読めませんよね……。


「ナギさんの精霊術と言うか能力は索敵能力に特化しているんです。」

「索敵に特化した能力? 精霊術じゃなくて?」


 ルリが不思議そうに聞き返してます。いや、私も気になりましたが、精霊術と言わずに能力と言う所が気になります。


「彼女は嗅覚が異常に鋭敏らしく、風起こしで周囲のニオイを自分の方へと集めて距離や、一度認識した相手なら特定することが出来るそうです。」


 そこまで話すと、ナギは顔を真っ赤にして下を向いて俯いていますが、諦めた様子でポツポツと話し始めました。


「元々の私の能力と言うか、生まれつきニオイに対して異常に敏感なのよ。だから言い方は悪いけど人間界に居た時だって、半径1メートル位の人のニオイは判別がついてたわ。特に中学生になってからは余計にね。」


 それは、何と言うか狩りをする時とかにはとても便利そうです! むしろ私的には羨ましいとも言える能力だと思うのですが、今の現代だと違うのでしょうか?


「あー! もう! これはヒジリちゃんやレンにも言って無いのに! ちなみにレンとの関係はもう聞いてるんでしょ!? ええ! レンは初対面からとても良いニオイだったのよ。ごく一部だけど、人との相性もニオイで何となく解る様になっちゃったのよ!」


 えっと……どこから突っ込めば良いのでしょうか? え? 人との相性もニオイで解るって動物レベルでしょうか?


「へぇ~、別に変じゃないだろ? 人間なんて本能的にニオイで好き嫌いが決まると言われている位だから、そこの部分が鋭敏なだけなんだろ? 特に好きな男のニオイは特に良く感じるらしいからね。」


 ルリはニヤニヤしながらナギを見ています。フォローしつつも楽しんでますねこの人は……。


「まぁそう言う事で、ナギさんは『風起こし』で自分に風を集めれる範囲の周囲1~2km程ならほぼ正確に索敵が出来るそうです。」

「それは凄いですね、どんなに感覚が鋭敏な精霊でも相手の精霊力を感知できるのは精々数メートルですからね。」


 エル君の説明に私が感心していると、ナギはまだ何か有ると言いたげに口を開いて来ました。


「後は……精霊界に来てから余計にニオイに敏感になって、敵意有るとかそう言うザックリとした事も分かる様になったわ。」


 物凄く恥ずかしそうに言ってますが、まぁ現代ならニオイで色々分かると言われたらドン引きするのでしょうか?


「多分、ニオイを集める際の風起こしに何かしらの精霊力が付与されて判別出来るのだと思うのですが、風は使う人次第で色んな補助作用が有るし。」


 エル君がフォローを忘れません。こう言う所は気使い出来る様になりましたか。


「で、私がそれを元に相手を狙撃するって訳よ! もちろん百発百中よ! 凄いでしょ!」


 いつの間にか部屋から出て来たパティが居ました。部屋の奥の方を見るとハッキネンとルーリアが口を開けて天を仰いでます。魂みたいな物が口から出てる気がしますが見なかった事にしておきましょう。




「パティさん、百発百中は言い過ぎでしょう?」

「クリューエルは黙ってなさいな! 的を狙わせたら百発百中でしょ!」

「いやいや、それは動かない物限定でしょう?」

「動くのは反則でしょうよ? まぁ動いてもそこそこの命中率は有るから気にしないで大丈夫よ!」

「いやいや、そこはナギさんが弾道修正を行ってくれているからの結果で、パティさんは攻撃担当だから言い方が正確じゃ無いですよね?」

「え~、うるさいなぁ……。別に結果が同じなら良いじゃない。クリューエルはもう少し相手を立てる事を覚えた方が良いわよ。」

「それだと、パティさんが単独の時でも同じ事が出来るとみんな思いますよ? いざと言う時に別行動でカミングアウトされた方が危険でしょう?」

「ああ言えばこう言うのね。まぁそんな絡み方して来るクリューエルも嫌いじゃ無いわよ。」

「俺は正確に物事を伝えているだけです。と言うかこの流れ絶対にわざとですね?」




 エル君、このハイテンションについて行ける君は凄いとお姉さんは思いますよ。そして満足げなパティの顔を見てナギが疲れた顔をしています。


「クリューエルさん、いつもスミマセン。パティも毎回最後まで付き合ってくれるからって困らせるんじゃないわよ?」


 ナギがエル君に頭を下げてます。と言うか、このやり取りを毎回ですか……何かタツミさんとティルのやり取りのパワーアップバージョンの様な気がします。


「で、パティちゃんの狙撃ってどんな風にやるんだい? 私はむしろそっちに興味が有るね。弓系? 銃系? どっちなんだい?」


 ルリが話を本線に戻しながら質問してきました。確かに狙撃と言うとその二種類が主流ですから気になりますね。


「よくぞ聞いてくれました! パンパカパーン! 私の狙撃は2種類あって片方はこの指鉄砲です!」


 パティはルリの方を振り向くと指鉄砲のポーズを取って家の壁の方に指先を向けました。


 そしてその指先に家の中の空気が集まって行くのを感じます。指先に空気が圧縮された様な歪んだものが見えました。


 そして次の瞬間、「パシュン」と静かな音が鳴ったと同時に壁に直径数ミリ程度の穴が開いたのでした。


「物凄い小さい穴が開いたけど、これは圧縮した空気の弾を飛ばしたのかい?」


 ルリが穴の開いたところに近づいてその様子を間近で見ています。穴は確かに小さいのですが、音の静かさと貫通力が凄いのは解りました。


「銃のサイレンサーが付いたレベルの音の少なさで狙撃位置を分かりずらくするのと、貫通力が高いから障害物を気にしなくて良いのが売りらしいわよ。」


 ナギが後ろから説明してくれましたが、サイレンサーって何ですか? 取りあえず音を静かにすると言うのだけは伝わりましたが……。


「説明がザックリ過ぎよ! もっと凄いと言う事を伝えてくれない!? 本来ならもっと発射音うるさいのをあそこまで静かに撃てるようにした私の精密な精霊術をもっと誇張してよ!」


 ナギは充分な説明をしたと思うのですが、それでは賛辞が足りないと騒いでますね。


 うん、やっぱりこの子はティルと比較にならない程に……



 うるさいです!


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