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第81話 いつもケガだらけ

 爆音と熱風で方向感覚が無くなっていた。顔は地面と仲良くしているのに背中が痛い。地面に伏していた筈だが、吹き飛ばされて壁に背中を打ちつけらたのか火傷をしたのか不明だ。


「レン、生きてるか?」


 肺に空気を吸い込んで声をあげるが、土煙が凄くてすぐにむせてしまった。


「タツミ、そこは無茶をした私を先に心配するところだと思うんだけど?」


 ティルが妬いた表情で話しかけて来たが、お前と同化してるんだから大丈夫かどうかなんてすぐに解ると言うのに。


「よし、ティルは大丈夫だな。」

「扱いが雑! 酷くない!?」


 ティルの抗議は後にしよう。レンの方は耐性が有るから大丈夫だとは思うがどうだろう? むしろオオミズチはどうなった? 今の状況で追撃されると危険すぎる。


「オオミズチは完璧に吹き飛んでいるわね。空気の乾燥が凄いからこの空洞内では生き残れてないと思うわよ。」


 ティルは感情を読んで冷静に状況を教えてくれた。


「なら、後は結合結晶を見つけるだけか。」


 節々が痛む体を起こして土煙の中心部の方へと視線を送ると土煙で何も見えなかったが、すぐ後ろに壁が有ったので端まで吹き飛ばされているのが理解出来た。


 自分の体の状態を確認すると左腕が動かない。脱臼しているのか骨折しているのか痛みが酷くて良く解らない。しかし両足は何とか動く様だ。


「タツミー! 生きてるか! 耳が変になって何も聞こえないんだが。」


 レンの大声が聞こえた。俺も爆音による耳鳴りが酷いが何とか聞き取れて安心する。返事をしてみたがレンには聞こえてないのか、くり返し声が聞こえたので土煙が引くまで待つしかなかった。


 数分ほどすると中心部の土煙が収まったので見渡すと。中心部にはクレーターが出来ており相変わらずの破壊力に良く生きていたなと我ながら感心してしまった。


 しかし溶岩で塞いだ壁も崩れず、天井も崩壊しなかったのは、オオミズチの中で爆発した上にブツ切りにされた体を大量にその上に置いて威力を殺せたおかげだろう。


 普通に考えれば、いくら消滅属性の精霊界で撃ったとしても無事では済まない破壊力だが倒しきるにはこれしか思いつかなかったのだ。無事でいられるかは賭けだったが何とか勝った様だ。


「あ、タツミ! あそこに結合結晶が有るわ!」


 そんな事を考えているとティルがクレーターの真上に結合結晶がめり込んでいるのを発見した。


「随分と高い位置に行ったな……。」


 中心部へと歩きながら右手で月虹丸を構えてると、月穿鞭を使って周りの岩を砕いて結合結晶を天井から落とす。


 結合結晶が目の前へと落ちてきた瞬間に、動く右腕と残った力全てを使って結合結晶を横一文字に斬って破壊する。今度も結合結晶は砕けた瞬間に霧散して月虹丸の中へと消えて行った。






「とりあえず目的は達成したな。後は帰るだけだが……レンは動けるか?」


 レンの方を見ると、大の字になって寝転んでいた。いや、よく見ると右足が曲がってはいけない方にうっすら曲がっている。


「お前、爆発の余波で足折れたのか……。」

「何言ってるか、全く聞こえないんだが? 俺の耳がやられたのか?」


 恐らく鼓膜をやられたのだろう。しかし呼吸は落ち着いているのが分かるので命に別状が無いのは確かだ。


「ガラント、レンと変わって動いてくれ。お前なら動けるだろう?」

「ん……そうしよう。」


 ガラントが表に出て立ち上がると肩を回して自分の体の動きを確認している。


「取り合えず二人との合流を目指すか。出来ればティルちゃんと一緒に行きたいところだが、無理はさせられないからな。」


 相変わらず軽いノリで言って来たが……うん、水の精霊界じゃなくてもティルは表に出てこないと思うが?


「下手に動くよりも待った方が良いと思うんだけど? 全員が満身創痍なんだから普通のミズチすら危険よ。ここは幸い水が無いから安全だしね。」


 ティルが真面目な表情で伝えて来た。確かに、俺は左肩の脱臼と腕の骨も多分折れてるな……、後間違いなく肋骨もやってる。結合結晶を破壊する時にも物凄い激痛に襲われたからな。


「よく見てるな。実は俺も精霊力を使い切ってる状況だから、まともに戦えるとは言い難いんだ。流石にいい女は目の付け所が違う!」


 ガラントもレンのバックアップで大量に精霊力を使っていたらしい。恐らくあの刀の形状変化している間はガラントも精霊力を消費し続けているのだろう。


 レンが5分しか持たないと言ったのは、流水刀はガラントの精霊力の補助で変化している事の証拠なのだろう。


「さて、どうやって二人に知らせる? ただ待っていても壁が出来ているせいで気付かれないんじゃないのか?」


 俺達は塞ぎきれなかった出入口の上部を見るが、高さが数メートルは有るので今の俺達ではとてもじゃないが登れない。


「大丈夫よ、先程の爆発で亀裂が入ってる様だから、もう少し衝撃を与えたら壊れると思うわよ。」


 ティルがそう言うので出入口の近づいて見てみると、確かにあちこちに亀裂が入って今にも壊れそうになっていた。


「うわ、ギリギリだったな……これが壊れていたらオオミズチが復活してたって事だろう? 何だかんだでギリギリの勝利だったって事か。」


 状況を見て冷汗が出て来るのを感じた。本当に薄氷の勝利だった。


 ケガはティルの技のせいだが、それ位の火力でなければオオミズチの決定打にならなかったのは俺もレンも理解していたので仕方ない。


「しかし、さっきまで外にミズチが居たよな?」


 最後の出入り口を塞ぐ時の事を思い出して、ふと考える。あの時は地摺り残月で押し返したが倒せたかどうかは不明だ。生き残ってたら外の水で回復してるだろうし、この壊れかけの溶岩の壁もすぐに破壊されてしまうよな?


「タツミ、そう言うフラグ的な事を考えるのはダメよ!」

 

 ティルが言うと同時にミズチを追い出した所の壁が大きな音を立てて崩壊する。そして大量の水が流れ込むのと同時に2匹のミズチの姿が確認できた。ミズチはこちらを確認すると同時にすぐに襲い掛かって来た。


「1匹しか倒せてなかったか! クソ! ガラント戦う準備を!」


 俺は月虹丸を右手で構えて月穿鞭を生成する。ガラントも自分の前に水圧弾を何個か展開すると両手が掴んで投げる準備をする。


「座標固定、引力展開。」


 さらに後方からタブレスの声が聞こえると同時に、ミズチ達は見えない力に引っ張られて一瞬で離れた。そのままタブレスの『天命圧殺崩壊トゥプシマティ・カタストロフ』に握り潰された。


「ギリギリ間に合ったか。ふむ、オオミズチは倒した様のか。しかし最後の詰めが甘いな。」


 タブレスは冷静に周りを見て状況を把握する。相変わらず皮肉めいた物言いだが、今は命拾いしたので文句も出ない。


「タツミ君、大丈夫!? それにレン君も!」


 後ろから遅れて別の声が奥の方から聞こえたので視線を移すと、駆けて来るヒジリの姿が有った。


「ああ、ヒジリも無事の様で良かった。」


 ヒジリの姿を確認すると緊張の糸が切れたのか精霊力と生命力を使い切ったせいなのか不明だが、立っていられなくなり倒れた所までは記憶がぼんやりと有った。


(結局いつもボロボロになるよなぁ……)

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