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第70話 親友との再会

 俺達はタブレスの案内でレンが居ると言う家の前に着いた。


「あんまり離れていないんだな。思ったよりも集落が小さいのか?」


「中心のに有る大きな集落から水の流れに沿って円状に集落が点在するので、他の精霊界に比べても数が多いかわり1個当たりの集落の規模は小さいのです。」


 リィムの説明を聞いて良く周りを見渡すと、確かに建物や水路の眺めに圧倒されて気が付かなかったが大きさ自体は火の精霊の集落もかなり小さいと気が付いた。


「確かに、集落が1個しかない土は除外するとしても火の精霊界に比べて規模が小さいな。」


「そうだ、だから集合場所を一番大きな集落にしたのだ。そうでないと点在する集落が多すぎる上に、集落に名前も無いからどれか分からなくなってしまうからな。偶然最初に訪れた集落が一緒なら楽なのだがな。」


 タブレスが集合場所を指定した理由を説明してきたが、そう言うのは精霊界を移動する前に説明して欲しいものだと思う。


「タブレスが言っていたのが本当にレンなら俺は奴との腐れ縁を信じる事にするか……。」

「腐れ縁と言いう程の付き合いなのですか? そのレンさんと言う方は。」


 リィムがウンザリしている俺の顔を不思議がって質問してきた。


「もう小学校……6歳の頃からの付き合いだよ。お互い6歳から同じ剣道のスポ少に通ってずっと同じ中学・高校と剣道を続けて来た仲だよ。」


「小学校とかの知識はハッキネン経由で得ているので年齢に直さなくても大丈夫ですよ。そうなると10年以上の付き合いという事ですか。」


 そう言えば基礎的な知識はハッキネン経由で渡ってるんだもんな。多分理解できてないのはタブレス位と言う事か。


「まさか精霊界まで一緒に行動するとなったら……言うのも気味が悪いが運命を感じるぞ?」

「さて、いい加減に入るぞ。」


 タブレスはそう言ってドアをノックして家に入る。俺とリィムも後に続いて家の中へ入るとそこは簡素な作りの家だった。


 入って目の前に有るリビングに、椅子に座ったままテーブルの上に突っ伏して動かなくなっている男の姿があった。


「寝てるのか?」

「暇すぎてそれ以外やる事が無い。下手に出歩くなと言われてたからな。」


 男は文句を言いながら顔を上げた。その顔はやはり良く見知った顔だった。


「ヤッパリか……」


 俺は予想どうり過ぎて手で顔を覆うと、運命と言う物が有るなら何でコイツと縁が有るのだろうかと思ってしまう。


「まさか……タツミか? 普通はもうちょっと違うリアクションをする所じゃないか?」

「それを言うならお前だって久しぶりの再会で何か言う事は無いのか?」


 お互いに苦情を入れ合う。むしろ精霊界と言う特殊な場所での再開の方に何か言うべきなのだろうが、この方が俺達らしい気がした。


「まぁ座れよ。俺も勝手に借りている家だけど折角だから少し話そうぜ? 暇で仕方ないんだ。」


 レンは俺達を手招きして椅子に座るように促したので俺達は適当に座って会話を始めた。


「で、レン。お前もあの台風の日に精霊界に飛ばされたのか?」

「ああ、そうだ。と言う事はお前もか。ちなみに他に誰かと会ったか?」

「ああ、火神かがみ ひじりという女の子に火の精霊界で会って、今は別行動しているが基本一緒に行動している。」


 ヒジリの名前を聞いた瞬間にレンが急に驚いた顔をした。ん? もしかしてレンの奴ヒジリを知っているのか?


「あ、ああ、そうなんだな。火神さんって言うのか。ちなみにそっちの隣にいる可愛らしい女の子は? 見た感じ人間だと思うんだが?」


 何か不自然に話題を変えて来たな。やっぱりコイツは何か知ってそうだな。


「可愛らしいって……まぁ悪くは無いですけど、一応アナタよりは長生きしてるのですが。貴方達よりも前に精霊界に来た人間ですよ。名前はリィムと言います。」


 リィムは少し不服そうな顔をして答えてる。レンの可愛いと言う言葉が子供に対して向けられる可愛いだったと気が付いているからだ。


「自己紹介がまだだったな。俺の名前は『鳴海なるみ れん』、16歳の高校2年生! ヨロシクな!」


「えっと……宜しく……? お願いします。」


 レンは親指を立ててスマイルを送っているが、リィムの顔は引きつっている。さっきもだが子供相手に話している節が見受けられるので、それを感じてちょっと機嫌が悪くなり始めている気がする。


「レン、一応言っておくが。この子は精霊界に来た時点で16歳だからな? 肉体年齢的には俺らと変わらん。」


 そろそろ教えておかないと色んな意味で手遅れになる気がしてハッキリと言ってしまった。もう少しオブラートに包めば良かったのだろうが、どうせハッキネン当たりからのツッコミが飛んで来ていつものパターンだと諦めた!


「え? 16歳?」


 ハイ! このパターン来ました! もうお約束ですからこの後の事は知りません!


「正直に答えてくださいね。今、何と考えてました?」


 まだ怒り方がリスの様に頬を膨らませている状態だ。素直に謝れば被害は少ないパターンだ。


「ごめん、小学生かと思った! うわー、こんなガチのロリッ子は初めて見た! ある意味感動したわ! 改めて宜しく!」


 思いっきりドストレートに言って来やがった! コイツ昔からそうだったが正直に言い過ぎだろうが! あ、リィムが下向いてプルプル震えている。この後どうなるんだろう?


「…………ップ、アハハハ!」


 リィムが今まで見た事の無い笑い方をしている。お腹を抱えて笑っていた。


「あー、く……苦しい。そこまでハッキリと悪意無しで言って来る人は初めてです。あまりにも正直すぎて、思わず笑ってしまいました。」


 なん……だと……? アレか、逆に振り切れ過ぎててウケたと言うのか?


「ん? 何か変な事言ったか?」


 本人は自覚が無いようだ、まぁ知らない方が良いだろうと言う事で話を進めようじゃないか。


「で、お前の契約精霊は? ここに居るって事は水の精霊か?」

「ああ、俺の精霊は『ガラント=イノディテンス』って名前だ。今切り替わるが……驚くなよ?」


 精霊の質問をするとレンは真顔に戻って答えて来た。そしてレンの黒髪と黒瞳が青色へと変わる。ヤッパリ見た目はレンと変わらずにそっくりだ。


「珍しく表に出してくれたな。よし、そこのお嬢さん。俺とデートしに行こうぜ!」


 変わった瞬間に妙に軽いノリでリィムに向かって手を差し出して来た。もちろんだがリィムはドン引きしている。


「えっと、あなたが『ガラント』さんで良いのですか?」


 引きつった顔のままリィムが困惑している。うん、俺も困惑している。何この軟派な奴は? 後ろから頭を引っ叩いて良いか?


「おおっと、名乗らずに失礼! 俺がガラント=イノディテンス! タツミはレンのダチなんだろ? 一緒に人間界に帰るつもりだろうから俺も付いて行くぜ!」


 メチャクチャ軽快なノリで色んな意味で軽い! 俺も困惑が解けない!


「ああ、そうだな。宜しく。」


 何とか俺がそう言ったところで、再びレンが表に切り替わった。


「アレが俺の契約精霊だ……。」


 レンの元気無くそう言うと沈黙してしまった。うん……かなりお前に聞きたい事が有るんだが良いのだろうか?


「お前、どう言う感情でガラントを具現化したんだ?」

「えっと……説明しなきゃダメか?」

「「詳しく!」」


 俺とリィムの呆れた声が同時に部屋の中に響いた。タブレスはポカンとしてそのノリに付いて行けずに困惑し続けていた。

 


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