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第62話 聖と凪の出会い

 この日は少しだけ懐かしい夢を見ました。


 あれは忘れもしない中学3年生の時の中総体。タツミ君の試合を見る為に私は補助員に立候補して見に行ったのですが、そのお昼の時間に初めての親友との出会いが待っていたのでした。



「もし一人なら一緒に食べない? 実は同じ学校の子居ないから一緒に食べる相手が居ないの。」


 不意に声を掛けられて振り向くと、補助員で一緒に作業していた子から話しかけられました。


「え、え、ええ、良いですよ。わわわ、わ、私も一人なので。」


 ハイ、声がどもります。もうお約束ですね。初対面の人と話すのはやっぱり苦手です……。


「良かった。私は『六波羅ろくはら なぎ。宜しくね。」


 六波羅さんは小柄な可愛い系の女子で髪はセミロング位でしょうか? 後ろでお団子ヘアーにしているので予想ですが。そしてちょっとだけ癖毛が入っているのか良い感じで全体のボリュームがあり、ふんわりとした感じを受ける。


 目元もおっとりした感じで癒し系の塊かと思う程です。そして、気になりましたが……胸が大きい。いいなぁ、自分の残念なサイズの所に視線が無意識に向いてしまいます。


「わわわ、私はか、『火神かがみ ひじり』。よよよ、よ、よろしくお願いします。ろ、六波羅さん。」


「ふふ、ナギで良いわよ。私も名前で呼ばせて貰うから。と言うそんなに緊張しなくて良いわよ。もしかしてヒジリちゃんって人見知りなのかしら?」


 私の緊張が伝わったのかナギさんはクスっと笑いながら答えて来た。


「で、では、ナギさん。ヨロシク。」


「さん付けはちょっと……ヒジリちゃんは何年生? 私は3年なんだけど?」


 ナギさんは少し不服そうな表情をしながら顔を近づけて来ますが、この人は私の逆で人懐っこく無いですか?私にもその才能を少し分けて欲しいです。


「わわ、わ、私も3年生でしゅ。」


 恥ずかしい! 噛んでしまった! 本当に初対面の人と話すのは苦手です! 私が恥ずかしがっていると、ナギさんはクスクスと笑いながら手を差し出して来ました。


「同い年なら呼び捨てかせめてちゃん付けにしない? 私はこのままヒジリちゃんって呼ばせてもらうわよ、宜しくね。」

「あ、ははは、ハイ! よ、宜しくナギ……ちゃん……。」


 手を握り返すと満足そうに微笑んでいますが……何ですか? この子は? 可愛いんですけど!? 天使か何かですか!!


「うん、そうそう。宜しくねヒジリちゃん。ところで気になった事が有るんだけど聞いても良い?」

「え、ええと、ななな、な、何でしょうか?」

「もしかして、ヒジリちゃんって同じ学校の工藤君と付き合ってるの?」


 いきなり何をストレートに聞いて来るの!? って言うか何故そんなにピンポイントで聞いて来るののですか!?


「え、ええ、えええ!? つ、付き合ってません!? な、ななな、何でそう思ったんですか?」

「付き合っては無いのね、でも好きなんでしょ? 分かり易いわね。」


 ナギちゃんはニヤニヤした笑顔でうつむいた私の顔を覗き込んで来ます。


「だってねぇ、隣の試合場の補助員なのに、彼の試合の時だけ視線がガッツリ向いてたし。あれは流石に気付く人なら関係者か何かと思うわよ。」

「え? えええ!? 私そんなに見てました!? 」


 その言葉を聞いて自分が無意識にやっていた行動を知らされました。


「え? 無意識にやってたの? まぁアピールしたいのなら間違って無いと思うわよ。」


 しまった! さらに墓穴を掘ってしまいました! もうバレバレじゃないですか!


「あ、あああ、あの。こ、この事は内緒に……」


 恥ずかしさの余り声も出ない状況だが、何とか声を振り絞ってナギちゃんにお願いする。


「ん? 別に構わないわよ。それに学校も違うんだから喋る相手も居ないわよ?」

「そ、そうよね。でもホラ! 高校が同じになるかも知れないし!」

「それもそうか、分かった内緒にしておくわ。それと、同じ高校だったら楽しそうね。ヒジリちゃん見てて面白いし。」


 そう言ってナギちゃんはコロコロと表情を変えて笑いながら言う。本当に表情が感情豊かな子で、見ててこちらも飽きない。こんな子が友達だったら学校生活も楽しいだろう。


「そそ、そうだね、ナ、ナギちゃんみたいな友達が居たら学校生活楽しそう。」


 私も思ったままを口に出して答えると、ナギちゃんは嬉しそうな顔をしてくれた。


「よし! では今、友達になるわよ! 連絡先交換しておきましょう!」

「え? えええ!? 良いの? ととと、友達ってそんな簡単に決めて良いの?」


 友達付き合い自体が皆無な私にとってこんなに気軽に友達が出来て良いのでしょうか? 一人で困惑してしていると、ナギちゃんは私のリアクションで噴き出すように笑いだしました。


「プッ……あははは! 面白いわよ! ヒジリちゃん面白過ぎ! 友達なんて気軽で良いのよ、そんなにかしこまるのは彼氏彼女になる時くらいにしておいた方が良いわよ!」


「そそそ、そう言う物なの……かな?」


「そう言う物よ。後はただの知り合いになるか親友になるかだけよ。気にし過ぎて人付き合いを決めるのはナンセンスだわよ。」


 そう言ってナギちゃんは笑い過ぎて出た涙を拭きながらスマホを差し出して来た。


「そうか……ありがとう。」


 何だろう、出来ればナギちゃんとは仲良くやっていきたいと思います。私も納得してスマホを出して連絡先を交換しました。中学に入って初の友達です! ちょっとワクワクしてします!


 ん? 前にも言いましたが、私基本的にぼっちなので中学の友達いませんが何か問題でも?


「でも、あれだけ分かり易い行動は控えた方が良いかもしれないわよ? 逆に私の男に手を出すな~って意味なら構わないと思うわよ。」


「え? えええ!? いや、そそそ、そ、そんな事無いわよ。だってタツミ君と話した事すら無いし……。」


「へ~、タツミ君って言うんだ……ってちょっと待って? 話した事も無いのに好きになったの?」


 ナギちゃんが驚いた顔でこちらを二度見してきた。まぁ、それが普通のリアクションだよね……。


「ひひひ、ひ、人に話しかけるの苦手で、話したいんだけどきっかけが無くて……」

「そこは私みたいに気軽に話しかけてみたら? 何事も考えすぎは良くないわよ?」

「だ、だから、それが出来ないから困ってるの。だから今出来る事は彼の情報を集める事位で……。」


 私がモジモジしながら今の現状を伝えると、ナギちゃんはちょっと引いた顔をしている。


「ヒジリちゃん。それってストーカー状態になってない? 大丈夫? 犯罪は犯しちゃダメよ?」

「ししし、しませんし、迷惑もかけませ……」


 そこまで言いかけてバレンタインの事を思い出しました。あれは迷惑だったのかしら? 人によっては迷惑だよね?


「ヒジリちゃん……まさか……。」


 ナギちゃんの顔がドン引きになっている。これは一応話を聞いて貰った方が良さそうだ。


「いや、実はね……タツミ君って自分への告白もお兄さんへの橋渡しの為の告白みたいに勘違いしているフシが有ってね……同じ学校の三上さんって人が屋上に呼び出して告白しようとした事が有ったのだけど……話の途中で勝手に勘違いしたタツミ君が振ったのよね……」


 ナギちゃんは興味津々になって身を乗り出して来ます。


「へ~そうなんだ。ちなみにその三上さんって友達なの?」

「ぜ、全然面識が無い子だよ?」

「ちなみに何でそこまで知ってるのかしら?」

「じょ、情報収集して知ったので……つい先回りしてました……」

「まぁライバルになりそうなら気になるわよね。解るわ。」


 ナギちゃんは引くどころか納得してきました。


 その様子に安心した私はその一件で普通に告白してもダメだと思って、バレンタインにお兄さんへのチョコアタックが終わる夕方まで待ってから名指しでチョコを置いてピンポンダッシュをした話をしました。


 そしてお兄さんが凄すぎて女性関係は全部お兄さんへのアプローチと勘違いしている事や、お兄さんのモテ具合を説明しました。


 ……え? どこで調べたかですか? ぼっちのストーカーまがいをしていればすぐに集まりましたが何か? 別に好きな人の情報を集めるのは普通ですよね?


「うわ~、何その攻略が面倒臭そうな男。それが彼なのね。」


 ナギちゃんもタツミ君の事情を話すと面倒臭そうな顔をしていた。


「お兄さんのせいで突然の告白は無効化。プレゼント攻撃は反射ダメージを受ける。そして特殊スキルのフラグクラッシャー持ちと、どこのボスキャラよ?」


 ゲームのキャラの様な解説なのですが、あながち間違いでは無いのが悩ましい所です。




「うんうん、よく観察している。ほぼ正解だな。」


 不意に建物の影から声を掛けられて二人でそちらを振り向くと一人の男子が居たのでした。


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