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第35話 買い物パート2

 俺らがルリに鍛冶を依頼した初日は全員旅の疲れでぐっすりと眠っていた。


 二日目は俺はヒジリと買い物をして、三日目はルーリアと日本刀の扱い方の稽古をした。そして四日目の朝を迎えた。


「タツミさん、行きますよ!」


 朝から元気なリィムの声がリビングに響いた。


 昨日散歩から帰って来たリィムに自分も何かアクセサリーが欲しいと言われたので見に行く約束をしたのだ。ヒジリにプレゼントしたのはケガの治療のお礼だとは言ったのだが、だったら自分もハッキネンを貸して助けたのだからと言われたのだ。


「しかし、女の子ってアクセサリーが好きだよな……。」


 ボヤキながら俺は街中へ行くリィムの後ろをついて行く。まぁ、楽しそうにしてるから下手に水を差すのも野暮と言うものだろう。


「しかし、どんな物とか希望は有るのか?」


 しばらくして、街並みの店先をキョロキョロと見ながら前を行くリィムに希望する物が有るのか確認してみる。


「そうですね、出来れば無くしずらい物が良いですね。何かの拍子に外れて無くしたとなったら立ち直れないでしょうから。」


「外れないモノと言ったら……何だろう?」


 指輪、ネックレス、ペンダント、腕輪等色々有るだろうが、何かの拍子に外れない様な物となると意外に少ない様な気がする。考えながら街中を探索しているとこの前のアクセサリー屋さんが目に入った。


「あ、ヒジリのはここで買ったんだ。結構良い物が揃ってたから、ここを見てみるか?」


 俺がそう言うと、リィムは少し考えた後で少し渋い顔をして却下して来た。


「辞めておきましょう。昨日ヒジリさんと来たのなら、最悪私は妹扱いされるのが目に見えてます。それは面白く無いので別のお店を探しましょう。」


「??? そうか? まぁ別の店が良いなら探すけど。」


 そう言ってそのまま通りを進みだす。街の店はどちらかと言うと防具を作っている人が多くてアクセサリーや武器を置いている店はかなり少ないようだった。


「たくさんの店が有るが、何でこんなに武器が無いんだ?」


 見ながら思った事をリィムに質問してみる。回復術が無いから防具が結構重要なのか?


「それは、ただの趣味ですからね。」


「え?趣味? 使うんじゃないのか?」


 意外な答えが返って来た。実用性ないのか?


「武器を使う人がごく少数ですから。そもそも武器を使うよりも精霊術を使った方が早いのです。わざわざ武器を使って接近戦を挑むのはかなり効率が悪いのですよ。」


 言われてみればその通りかもしれない。距離が有る状態でティルと戦ったら近づく前にやられる自信が有るし、リィムに至っては罠を設置してしまえば相手の行動も制限できる上に接近戦の切り札も有るしな。


「確かに、普通の精霊術の方が強いわけだ。だから趣味の領域ね。」


「作るとしても使用する人の戦闘スタイルに合わせて作らないと意味が無いのです。だからただ作る武器と言うのは最早娯楽の領域なのですよ。」


 精霊達の娯楽の結晶がこの街なのか……、どれだけ暇を持て余しているのだろうか? いや、持て余すしか無いのだろう。


 しばらくして店先のディスプレイを見てとあるものが目についた。 


「ん? リィム、これなんかどうだ?」


 そう言って立ち止まると飾られていたイヤリングを指差す。


「これ、イヤリングですか? 余計に落としそうじゃないですか? 落とさないならピアスの方が間違いないのでしょうが。」


「まぁ、精霊界でピアッサーとかは無いだろうから、ピアスは無いんじゃないか?」


 まさかと思って冗談めかして言うとリィムはそれを否定して来たのだった。


「ピアッサー有りますよ? ピアス自体はローマ時代? から有る物ですから道具も有りますよ。」


 何と、ピアスってそんな歴史が深かったのか。驚いている俺にリィムは説明を続ける。


「元々は魔除けの意味が有ったそうです。ん~私もイメチェン? とかやらに挑戦してピアスを着けてみるのも有りでしょうか?」


 随分と現代語を理解しているな……ハッキネン経由でこちらの現代情報を共有したかららしいが、何故こっちの情報だけが一方通行なのだろうか? 微妙に不満である。


「物は試しですね、入ってみましょう!」


 そう言ってリィムは店内へと入って行った。俺も後ろから追いかける。




 店内に入ると室内は思ったよりも明るくて、店全体が良く見渡せた。テーブルや棚の上には様々は種類のイヤリングやピアスが多かったが、その他の装飾品も置かれていた。


「いらっしゃい。おや、珍しい人間とは。兄妹かい?」


 奥から中年の土の精霊さん(おっさん)が声をかけて来た。


「違います! どうやったら兄妹に見えるんですか!」


 リィムはそのセリフを聞いて怒って抗議した。まぁ傍から見れば兄妹と言う感じの身長差だからな……見た目も含めて。


「タツミさん、今、何と考えてました?」


 リィムが怖い目でこちらを振り向いてきた。いや、だから氷の特性の『心理投影』で心を読むの禁止にしてくれませんか? こういう時の対処法が無いんですが? とりあえず誤魔化すしかない!


「ほら、せっかく来たんだから楽しく選ぼうぜ?」


 そう言って店内の商品を見回すように言うと、リィムも仕方ないという顔をしながら商品を見始めた。そして俺は店主のおっさんに目で余計な事を言うなと合図を送る。


「おっちゃん、アクセサリーで戦闘中でも外れずらい物で、何かお勧めな物って有るかい?」


 リィム要望を考えて、まずはプロの話を聞いて見よう。何か思いつかなかった良い物が有るかもしれないし。


「外れずらいアクセサリー? それならピアスかチェーンがしっかりしたネックレスじゃないか? 後は特注品な物くらいか?」


その言葉を聞いてリィムは聞こえない程の小声でボソボソとつぶやく様に独り言を始めた。


「ネックレスですか、それだとヒジリのと近いので面白く無いですね……それだとお揃いも無理ですし……、でもピアスもそれはそれでお揃いは難しい……。」


「どうする? それとも何か他に気に入ったものが有ればそれでも良いんだぞ?」


 独り言が終わる気配が無いので声をかけると、リィムはこちらを見て考え込んだ。


「そうですね、あまりこだわり過ぎても良くないと思うので、店主さんのお勧めは何か有りますでしょうか?」


 そう言って店主の方を向く。それを見た店主はニヤリとした顔をして親指と人差し指で丸を作りながら言って来た。


「それなら値は張るが良い物が有るよ。このブレスレットはどうだい?」


 そう言って店主が居るカウンターの下から二つのブレスレットを取り出した。両方ともシンプルな装飾だが、埋め込まれている青色と乳白色の小型の石が奇妙に光り輝いている。


「随分とシンプルな装飾だけど、石が特別性なのか?」


「流石、お目が高い。質の良いサファイアとムーンストーンに加護を打ち込んだブレスレットですよ、特殊加工で作ったので付けると持ち主の腕にピッタリになる様に伸縮する逸品です。」


 おっさんが物凄い自慢気に話してきた。と言うか、伸縮する金属って何だよ!? どんな素材使ったらそうなるんだよ!


「え! あの貴重な伸縮金属を加工したのですか!?」


 えー、そんなのも有るんだ……もはや何でも有りだなこの精霊界……


「ああ! 運よく手に入ったんだが対価になる様な物を持ってる奴が居なくてな! アンタ達は相応の物を持っているのかい?」


 そう言われても、貴重な素材は全部ルリに渡したし、今の手持ちの精霊石で交換できるような代物なのだろうか? しかしリィムが凄く欲しそうな目をしている。ダメ元で聞いて見る事にした。


「今の手持ちの素材はこれ位しかないんだが……。」


 そう言って残っていた精霊石をテーブルの上に出した。


「ほう、中々良い火の精霊石じゃないか。普通の品だったら十分におつりが来るがこれだと少し足りないな。」


 おっさんの顔が明らかにもう一声欲しいと言った顔をしている。しかし無い袖は振れない。リィムは残念そうな顔をしているが仕方ない。


「済まないがこれで全部だ。これ以上は素材を持ち合わせていないんだ。」


そう言うと店主はニヤリとした顔でリィムの方を見て言ってきたのだ。


「それじゃあ素材を取って来たら良い。街から少し離れた所に宝石の採掘場が有るんだが、そこにはぐれ精霊が住み着いて迷惑しているんだ。加工用の宝石の流通にも影響が出ている。」


 このおっさん物凄く悪徳な笑顔で言って来てるが、つまり相当面倒な案件なんじゃ無いのか? 少なくともこの街には相当数の精霊が居るのにそれを追っ払えていない訳だろう?


「それを退治して材料を持って来いと? リスク高すぎないか? 町の精霊達が追い払えない相手と言う事だろう?」


 俺が不服そうに言うと店主は気付いたかと言う顔をした。しかし諦めずに食い下がって来たのだ。


「そこの嬢ちゃんは龍位精霊使いだろ? あいつは土属性同士じゃ相性が悪いんだ。本当は火の龍位精霊が最適なんだがな。」


 そのセリフを聞いて俺とリィムは顔を見合わせた。どういう事なのだろう? 同じ属性で相性が悪い? そして最適が風属性では無くて火属性?


「同属性で相性が悪いという事は、珍しい能力なのですか?」

「アレは、能力と言うか……山だ。」


「「山?」」


意味が良く解らないが店主はそのまま話を勝手に進めていく。


「まぁ行って見れば解るさ。もし、退治してくれたら街の方からも何か貰えるかもしれないぞ。一応組合でも困っているからな。」


 組合とか有るのか、まぁルールが有るのだからそう言う組織が有っても不思議ではないか。でないと先日のリィムの様な被害者が続出するという事になるだろうしな。


「解りました! ではそれは予約にしておいてくださいね! 絶対ですよ!」


 そう言ってリィムは張り切って外へ出て行った。買い物の付き合いの連続と言い、ま~た何か面倒な事に巻き込まれてないか俺? 最近この手のパターンが多い様な気がする。


 一応ティルを呼んだ方が良い様な気もするが、あいつ起きたのかなぁ? 今の俺って誰とも同化してないからかなり足手まといだと思うんだが、大丈夫なのだろうか?


 一抹の不安を覚えながら俺も後を付いて行った。


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