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第31話 結合結晶

「さあ行くよ! 鑑定開始!」


 そう言うとルリは目を閉じて一人でフムフムと頷きながらしばらくの時間が経過した。そして目を開いたか思ったらルーリアにもう片方の手を差し出して何かを要求している様だった。


「はい。」


 慣れた手つきでルーリアは紙とペンを出してきてルリに手渡す。するとルリは石をテーブルの上に置いて紙にメモを凄い速度で書き込んでいく。


「よし!出来た!これがこの石の鑑定結果だよ!」


 そう言って書き上げたメモを俺らに見せて来る。


 何かしらのエフェクトが入るかと思ったら物凄く地味な光景にだったな……それは置いておいて俺達はその結果を見てみる。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 名称 結合結晶

 加工 可能

 特性 付近の精霊力の吸収と結合

 説明 精霊力の濃い所に発生し付近のエネルギーを吸収・結合する。

    使用したい場合は使用者が砕いて従える必要が有る。

    一度砕かれた後は主の意向に沿ってしか吸収をしなくなる。

    加工してもその性質は失われない。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「意味がよく解らない鑑定書だな。従えるって動物か何かか?」


 俺が率直な感想を述べるとルリが不服そうな顔をする。


「いやいや、これだけ解れば十分じゃないか。しかしクセが凄い性質の石だね。」


 正式名称が結合結晶か、確かに名前と能力を考慮すれば集合精霊体を作れる位の性能が有るのは何となく解った。


「しかし説明の『使用したい場合』ってどういう事だ? あのミノタウロスみたいな集合精霊体になって助けてくれると言う事か?」


 想像してみるが、正直ありがたくない能力だと思う。能力を見ると吸収と結合と書いているが、分解、放出とは書いてないから一度出てきたらずっとそのままの気がする。


「多分、ポンコツの考えで正しい。作り出すだけで分解は無い筈。そのまま使えば騒動の元凶になる。」


 ハッキネンが思考を読んで答えて来る。リィムも納得して困った顔をしている。


「ちなみにこれを砕いたのは誰だい? 主とか書いている以上、加工してもその人の専用武器にしかならないだろう。」


「直接砕いたのは俺かな?」


 答えるとルリは意外そうな顔をしている。いや、確かに最後の美味しい所だけ持って行った感じで心苦しいが事実だし……。


「へぇ、意外だね。ではこいつはタツミのあんちゃん用の材料か。性能的に精霊術前提のようだがね。ちなみにどれ位精霊術の才能が有るんだい? 大体は最初に分離できる様になるまでの時間で解るもんだが。」


 そう言えばさっきルリは半日で分離が出来たとか言ってたな、才能が有ると速いって事だよな。待てよ、そうなると俺って……。


「ポンコツはポンコツだと言う事の証明。」


 ハッキネンが俺の顔を見て現実を述べる。そして落ち込む俺を察して隣に座ってたリィムが優しく肩をたたいて気にしないでと言う様な残念そうな笑顔を向けて来た。


 お前ら俺の心をへし折りたいのか?


「ちなみに分離まで1週間以上かかるって、かなり才能が無い方なのか?」


 恐る恐る聞いて見る。


「1週間以上? そんな奴見た事も聞いた事も無いよ? 大体遅くても二日も有れば分離できるようになるさ。どんだけ才能無いんだよ……って、アンタまさか……」


 ルリは喋りながら途中で気が付いたらしくて、言葉尻が弱くなっていく。


「ハイ……それ位かかりました……」


「「「「…………。」」」」


 気まずい沈黙がしばらく続いた……。

 誰かこの状況を助けてくれ……。


「まぁ、そんな事は最初から解ってたし、別に私は気にしてないわよ。」


 不意に聞こえた声に驚いてヒジリの方を向き直して声の主を確認する。


「ティル、回復したのか?」

「ええ、何とかね。でも本調子には後少しって所かしら?」


 ヒジリの方から久方ぶりの声が聞こえた。しかし声は以前ほどの明るさは無くダルそうな声だ。


「ルリさんだっけ? タツミが弱いのは今更よ、でも彼の一番の長所はどんな現実でも受け止めて、それに悪態をつきながらも諦め悪く努力を続けれる所よ。」


 流石相棒だな! お前のフォローが一番しっくりくる。しかし俺ってそんな風に思われてたのね……


「努力を続けるのは得意かい?」


 ルリがニヤリと不敵な笑みを浮かべて俺とヒジリの中のティルを見る。


「諦めが悪い努力か……確かに。自分じゃ自覚は無かったが言われてみるとそうなんだろうな。」


「自覚が無かったのね、自覚してるから寝る間を惜しむレベルで精霊術の練習してると思ってたわ。」


 ティルは呆れ顔なのだろうと推測はつくが、俺の成長ってそんなに遅かったかのか……ハッキネンがポンコツ連呼するのも仕方ないのかもしれない。


「いいね、私は精霊術の才能大事だと思うけど武器を扱う才能は別さね。だから道具を使う技術はどれだけ努力を続けられるかだと思っている。」


 ルリはそう言うと俺の方にゆっくりと近付いて来くると俺の両手を掴んで手の平を確認する。


「ちゃんと鍛錬している手だ。アンタの様な奴なら武器を作ってもいいね。それもとびっきりの奴をね!」


 その言葉に俺は呆気にとられた。土の精霊って弱い奴の武具は作りたがらないんじゃないっけ?


「やっぱりルリに頼もうとして正解ですね。元よりそのつもりできたのですから。」


 リィムがにこやかに言う。ハッキネンも、まぁそうだろうと言う顔をしているのだろう。


「私は人間だからね! 才能にモノを言わせて何を使っても俺最強って奴は面白く無いのさ。どうせなら不器用な奴に合わせた専用装備の方が良いのさ! その方が武器を大事に扱ってくれるからね!」


 そう言って自分の胸をドンと叩いて高らかに語り始めた。


「そして、私の目標は神器レベルの武器を作る事! 今までの鍛冶ならばどうやっても無理だ。だとしたらどうやったら出来ると思う?」


 質問の意味がよく解りません。って答えたら怒られるだろうな。しかし出来上がった時点で性能は決まっているのだから神器レベルのを作るなら、それ相応の素材か代価が必要なのではないだろうか?


「神器の条件に近い材料を使って作ると言う事でしょうか?」


 リィムが小首をかしげながら答えるが、その答えをルリは即座に否定した。


「違うね、それだと結局は誰かの犠牲の上に成り立つ。そんなのは面白く無い。」


 そう言われて、しばらくしてヒジリが結合結晶を見て、何かに気が付いたのか自信なさげに答える。


「もしかして、進化とか成長する武器を作るって事です? この結合結晶を利用して、武器に精霊力を吸収さて成長させると言う事ですか?」


「正解!お嬢ちゃん、アンタ頭も良いようだね!」


 ルリが満面の笑みで肯定する。そして高らかに説明を始める。


「この石の特性を利用して使用者からのみ精霊力を吸う仕様にするのさ! そうすればタツミのあんちゃんの精霊術を吸って進化して行くだろう。面白い事にあんちゃんは火と氷の二属性も使える。どんな武器になるか楽しみだよ!」 


 吸われるって……むしろ何かの呪いの装備じゃ無いよな? 普通に使えるのか?


「何変な顔してるんだよ? 最初から強い武器じゃなくて成長する武器を作るのさ。だからアンタと一緒に成長して最後は神器レベルの武器を目指すんだよ! 性能が向上したら打ち直してやる事だって可能だ!」


 ルリは俺の不安そうな顔を見てもう一度説明してくるが、真っ当に使える代物である事を祈ろう。


 と言うか、神器レベルとかなると武器だけで俺ツエーになる気がするが……それは良いのか? という疑問は言わないでおこう。


「まずはアンタの癖を見ないとね。ルーリア!全部出しておくれ!」


 ルリはルーリアの方に顔を向けて合図を送る。ルーリアは軽くうなずいて再び床につま先をタンと軽く叩きつける。次の瞬間、無駄に広い空間だった工房に大量の武器と防具が置かれた棚が地面から現れたのだった。


「ここが工房なのに出来上がった武具が無かったのはルーリアが大地に格納しているからか!」


 俺は一番最初のに感じた違和感の疑問の答えがやっと理解出来た。


「正解、さぁアンタの適正を探そうじゃないか!」


 俺とヒジリの驚いた表情を見ると、ルリは満足そうに俺達に笑顔を向けた。後ろに居るルーリアも楽しそうな表情に変わっているのが見えたのだった。


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