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第27話 土の精霊界の風景

 違和感が凄い、何の違和感は解らないが確かに違和感が有るのだ。


 まず気が付いたのは火の精霊界では無かった湿気を感じる。


 そして火の精霊界では見当たらなかった背の高い新緑の広葉樹が生い茂り、綺麗に植物が生えている山々が周りを囲んでおり、流れている川には綺麗な水が流れて心地良い音を奏でている。


 さらに道は火の集落と同じようにレンガの様な物で舗装されている。この距離をよく舗装したものだと感心するし、今の光景を傍から見れば楽しいハイキングに来ている様に見えるだろう。


「な、何と言うか、テレビでよく見る人気のハイキングコースって言葉がピッタリの景色だね。道の舗装だけがキレイ過ぎて違和感有るけど……」


 ヒジリが辺りをキョロキョロと見回しながらつぶやく。俺も火の精霊界とのギャップが激しくてビックリだ。ただ、先程から軽い違和感の正体が解らない。


「そうですね、土の精霊界では風がほぼ吹きません。なので風化する事がほぼ無いので、こうやって一度道を舗装すれば半永久的に持ちますから。」


「違和感の正体は風が無いからか……。」


 リィムに言われてやっと気が付いた。風が全く吹いてないから空気の流れみたいなモノに違和感を感じていた訳だ。


「土属性の弱点は風属性。だからここには風が無い。」


 ハッキネンの簡単な説明が入るが相変わらずザックリだな。まぁ何となくイメージ出来たから良いけど。


「つまり、土の精霊は風の精霊界だとこの前のハッキネンみたいになるって事か。」


「そうなると、私やタツミ君が気を付けないといけない精霊界ってどの属性なのかしら?」

 

 簡単に事情を把握したつもりでいたがヒジリはちゃんと先も考えた発言をする。そう言えば考えるのを忘れていたが、勝手に水とかだと思ってた。


 思い込みは良くない。予想が外れてた時に思わぬトラブルに巻き込まれるし。


「火の消滅属性は水で合ってる。歩きながら説明する。」


 ハッキネンがこちらの思考を読んで先に答えてきやがった。あんまり思考を読むのは勘弁して欲しい。意外と心臓に悪いのだ。


「火の弱点は水、水の弱点は雷、雷の弱点は土、土の弱点は風、風の弱点は氷、氷の弱点は火で循環している。」


「6属性は円を描くような弱点ループなんだな。」


 良くあるゲームの相反属性の考え方では無いのだな。覚えるのややこしそう。


「残った光と闇はどうなっているんだ?」

「その二つは特殊で、相反属性として存在してますね。」


 あ、相反属性も有るのね。とりあえず相性の勉強会はこれで終わりで良いだろう。後は実体験でもしないと解らないからな。


「ポンコツ、勉強嫌いだな。大雑把に理解すれば良いとしか考えてない。」

「え? いや、ホラ。百聞は一見如かずって、ハッキネンも言ってただろ?」


 俺は図星を付かれて焦ったが、良くも悪くも経験しないと解らないのは事実だろうと、前にハッキネンが言った言葉を返してやる。


「タ、タツミ君。べ、勉強が苦手なのですか?」


 ヒジリが声を掛けて来たが、相変わらず俺に向かって話す時は微妙にどもっている。何でだろう?


「ああ、正直スポーツ推薦で入学したから勉強はあんまり得意じゃないな。特に英語はいつも赤点で補講受けている。」


 俺は嫌な現実を思い出してうなだれてしまう。大学目指すならちゃんと勉強もしなければいけないのだ。


 ぶっちゃけインハイに出れそうにも無いし、今は肘をケガして休部中の俺に大学からのスポーツ推薦が来る訳が無い。


「よよよ、良かったら、わ、私が教えましょうか? い、いつも一人だったので、べ、勉強だけは得意なので。」


 下を向きながら顔を真っ赤にしてヒジリが提案して来る。確かにそもそもの勉強の習慣が無いので誰かと一緒なら強制的に勉強が出来るだろう。


「そうだな、良かったらお願いするよ。」

「え? い、良いんですか?」


 意外そうな顔をされた。何で? 俺ってそんなに勉強しない様に見えるの?


「ポンコツは勉強する様には見えない。」


 ハッキネンまでツッコんで来やがる。流石に必要最低限はやりますよ?


「いや、タ、タツミ君って、そそ、そう言う誘いを全部断っていたから……いい、い、意外というか。OKが出るとは思って無かった……。」


 えっと、顔真っ赤にされて俺は何を言われているんだろう? そんなに勉強のお誘いを断っている様に見えるのか? そろそろ泣きますよ?


「いや、流石にたまには勉強会位はするぞ? 赤点は流石に困るし……って、断っていたって言った様な……? あれ?」


 今の言い回しだと断っている現場をよく見ている様な言い方だったような? 気のせいなのか?


「あ、あ、あ、た、たまたまそう言う場面を見かけた事が有るだけです!」


 ヒジリが慌てて言い訳をしている様だが、同じクラスでも無いのに何で俺が断っていたとか覚えているんだ?


「楽しそうな所すみませんが、そろそろ集落に着きますよ。まずは目的を忘れないで下さいね。」


 リィムが俺とヒジリの間に割って入って不機嫌そうに言って来た。えっと、何か俺変な事したっけ?


「やっぱりお前はポンコツで十分。」


 ハッキネンが呆れた顔で溜め息をついているが……真面目に意味が解りません。


(こいつ、あの時代の人間が「自分の家で面倒を見る」とか「両親を説得する」とか言われる意味を理解してないのか?やっぱり馬鹿だ。状況を完全に理解しているのは私だけか……)





「ここが、土の精霊界の集落? 火の精霊界とは大違いだな。」


 そう言って周りを見渡すと、本当に精霊界なのかと思う光景が広がっていた。


 建物は木造が基本ながらも建物の土台は地面にコンクリートでしっかりと補強されており、壁はレンガや木の壁に壁紙を付けたモノが主体だったが、屋根には瓦や現代風の金属の板が使われていたりしており、色んな時代の建物が混ざっている感じだ。


 流石に壁紙とかは無いだろうと思ったらよく考えたら木が潤沢にあるなら和紙とか作れるよね……植物も色々育っているなら染料なども有るだろうから可能か。


 道も相変わらずレンガできれいに舗装されており、通りも格子状に整備されている。交差点になる所はコンクリートでならしている所さえ有る。街灯もキレイに並んでおり美しい街並みと言って過言では無かった。


「ほとんど人間界と言われても違和感がない位な集落ね。」


 ヒジリが茫然と辺りを見回している。流石にこれは俺も同意見だった。風による風化も無いから壁なんかもキレイな状態だ。


 建築資材も潤沢だから色々出来るのだろう。水の有る無しだけでここまで建物に差が出来るのかと驚きを隠せなかった。


「土の精霊は鍛造・加工系のスキルがメインになりやすいので、他の精霊界の集落に比べても建造物は立派ですよ。」


「なるほど、土の精霊自体の特性も有るせいなのか、火の精霊界とのギャップがあり過ぎる……」


 リィムの説明に納得はするがこの差は凄い。他の精霊界に行った時に更なるギャップを別の意味で受けそうだな。


「さて、ルリの所に向かいましょう。早く行かないと土の精霊達に絡まれますからね。」


 「ん? 絡まれるってどういう事だ? 気性が荒くて喧嘩っ早いのか?」


 リィムがとてもソワソワしているのが見て取れた。言葉の意味が解らずに小首をかしげているとハッキネンが説明を始める。


「違う、土の精霊達は鍛造・加工系スキル持ちが多いと言った。そして土の精霊達は職人気質が多い、つまり私達の今持っている材料を勘付かれると面倒。」


「素材を持っていると言う事は……。俺らは格好の獲物の様なものなのか?」


「そうだ、そしてしつこい上に諦めが悪い。」


 ハッキネンがウンザリしたような顔で言って来る。これは余程なのだろう。


「確かに私達の持っている素材でも、特にアレは異質な物のようですからね。」


 ヒジリも納得している。と言うか俺と面と向かって話さない時はどもらないね? 俺なんかしたっけ? でも悪い事したなら勉強一緒にしようかなんて言わないだろうし……よく解らん。


「そういう事を口にするのはフラグとタツミが言ってた。」


 ハッキネンそう言うと同時に、フラグ回収が始まった。


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