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第21話 トラップ大作戦

「準備は出来たか?」


 リィムに声を掛けて上から見えない位置に陣取って罠を設置してもらう。


「小型の罠は設置完了です。大物の罠で精霊力を大きく使いますよ?」


 下位精霊は精霊力を喰うために襲って来る筈。と言う事で強い精霊力に反応するのかどうかの第1実験だ。


 俺が合図を送るとリィムは地面に手を当てて精霊術を起動する。そして氷の小さな霜柱みたいな物が地面に出来上がる。


「反応しませんね。精霊力を狙って動いているわけじゃないようですね。」


「やっぱりか……出会い頭も精霊力が強いティルやハッキネンじゃなくて明らかに俺を狙ってたよな。」


 1つ目の実験は完了だ、あいつは精霊力を狙っていない。そもそもダンジョンは精霊力が豊富だから要らないのだろう。


「つまり、狙われているのはこのポンコツと言う事。」

「人間と言えよ、悪意があるだろ……。」


 ハッキネンが相変わらずの毒舌で話しかけて来る。リィムはちょっと困った顔で苦笑いをしている。


「まぁまぁ、でも人間狙いとなると今回は私も含まれますから、行動の誘導は難しい可能性が高くなりますね。」


「次は同化している人間か分離している人間が優先かで話が変わるな。後は純粋に近い奴から狙っているのか……よ、弱そうな奴から狙っているのか。」


 こっから先はどっちを追いかけて来るかで作戦が変わる。俺が一番弱いと言う自覚が有るだけに最後のセリフはちょっと心に痛かった……


「精霊力に反応しないなら罠は設置し放題。可能な限り準備。最後の問題はこっちに降りて来るかどうか。」


 そこだけは謎だ。ミノタウロスはずっと上の層に居る。様子を見るためにこちらに降りて来る事が無いのだ。待ち伏せの方が確実に捕まえられると考えているのだろうか? 


 後者なら知恵が随分回ると言う事になる。降りた時に隠れられて、ダッシュで逃げられたらそれで終わりだからだ。



「準備完了です。行きましょうか。」


 リィムが罠の設置が完了してこちらを見て来た。命を懸けた戦いを前にして自身の感情が高ぶっているのが解る。しかしどこか落ち着いている自分もいる不思議な感覚だった。



 まずは第2実験だ。襲われる優先が何かの判断だ。リィムを下に残して俺が先行する。


 大きな空洞に出るとなだからな坂道が続いている。道半ばあたりまで進んでミノタウロスを挑発する。


「おい!牛野郎こっちだ!」


 大声で叫ぶとミノタウロスはこちらに気が付いて物凄い勢いで突進して来た。動きが早いが今度は覚悟が出来ている。


 精神を集中。使い慣れた木刀をイメージする。刃物は使った事が無いから敢えて刀ではなくイメージがしやすい木刀だ。


「来い!」


 左手でしっかりと具現化した氷の木刀を握り右手は添えるだけで頭の上で構える左上段の構えを取る。高校から始めた構えだが精霊相手に通用するかどうかはこれからだ。


 ミノタウロスが突進しながら腕を振りかぶり殴りかかって来た。巨体から繰り出される拳は俺の頭上から振り下ろされてくるが、慌てずに拳の内側の側面をなぞる様にこちらも突進しながら氷刀を打ち込む。


 当てた瞬間に氷刀は腕なぞりながら刀の向きを変え、勢いに乗って腕の下に潜り込んでそのまますり抜ける。相手の攻撃をいなす技だ。


 切り落としの応用技だが上手く行った。下手に切れると刺さってそのまま吹き飛ばされる危険性が有ったので敢えて刃を入れなかったのだ。


「これは効くかな!」


 隙が出来たミノタウロスの左太腿に今度は氷刀を左手一本で横薙ぎに払う。もちろんこのタイミングで刀には刃を入れて斬る一撃を打ち込む。そして斬撃は確かにミノタウロスを切ったがミノタウロスは平然としてこちらを向き直す。傷もすぐに癒えた様だ。


「あそこは弱点じゃないと……。」


 再び間合いを取ってミノタウロスをリィムと挟む様に対峙する。しかし深さが10cm位は有った傷がすぐに治るのかと呆れてしまう。


「随分慣れてる。素人は根元から斬れると勘違いして大体ケガをする。」


 ハッキネンが感心しているが、そりゃ全くの素人じゃ無いからそれくらい知っているわ! 振り抜いて斬る場合は剣先の10㎝前後しか切れない。剣道でも剣先の打突しか有効にならないのはその為だし!


「こっちも居ますよ!」


 気付かせる為にリィムは氷の手槍を勢い良く投げると槍はそのまま背中に刺さる。が、平然とすぐに抜かれて傷は癒えていた。


 ミノタウロスはリィムの方を振り返った。さて、どっちに来るのかと待ち構えるとミノタウロスは想定外の行動に出た。


「ブモォォォォォォォォ!」


 咆哮と同時に長柄のトマホークをいりなり具現化した。それは想定してないんだが!?


「あれは流石に受けれない! リィムも距離を取れ!」


 俺はすぐに二人とも回避行動に移る。坂道を回る様に走って下層に戻ろうとするが。直後に元居た位置から凶悪なトマホークが横薙ぎに襲って来た。


 俺は慌てて転がる様に坂道を回転して何とか回避したが……アレは当たったら間違いなく死ぬ!


 リィムもすでに広い空洞まで誘導するように逃げていた。しかし後髪をトマホークの風圧が襲ったらしくて軽い悲鳴が聞こえた。


 そしてどちらに襲い掛かって来るかギリギリまで観察していると近いからか、少し悩んだ後に俺の方にトマホークを構えて再び横薙ぎに振りかぶった。


「まずは近い方か!」


 俺は身体強化を使って急いで罠を設置したエリアへと回避しながら駆けていく。リィムも既に予定の位置へと移動していた。




 回避しながら誘導に成功すると設置していた罠に氷刀を刺し込む。すると氷柱が横へと向かって発生して俺を吹き飛ばす様に奥へと運んでくれた。


「リィム!今度は距離を入れ替えるぞ!」


 リィムがミノタウロスとの距離をトマホークの射程ギリギリまで詰める。逆に俺は更に移動して距離を取る。これで次の行動で奴の行動が俺を優先しているのか、近い方を優先しているのかが判断が付く。


 ミノタウロスは俺とリィムの両方を確認して今度はリィムの方にトマホークを構えて突進していく。


「どうやらヘイトは攻撃した方でも無く、近い人間を狙うが正解か。」

「その様だ、でもリィムに向かったのは愚策。」


 俺とハッキネンは安心してその様子を見ていると、ミノタウロスが踏み込んだ瞬間に地面から1メートル程の大きいタケノコの様な氷の棘が生えて踏み込んだ足を貫いていた。そして体勢を崩して膝をついたところにさらに罠が発動して膝に再び地面から生えた氷の棘が突き刺さる。


「牛では知能も低そうですね。私は強いですよ?」


 余裕の表情で挑発している。これでヘイトが俺に移らなければ近い人間から狙うのが確定する。リィムを危険視して俺に移ればある程度知能を持って判断して戦っていると言う事になる。


 ミノタウロスは棘を握り潰して立ち上がると傷がすぐに癒えていく。あそこら辺も弱点では無いらしい。


 そして再びリィムを見た後、後ずさって今度は俺に向かってきた。しかも俺が移動した時に歩いたルートを選んで突進してくる。結構知能は高そうだ、面倒だな……。


「だけど、俺はお前ほど重くないぞ?」


 再び氷の棘が地面から生えてミノタウロスの足に突き刺さる。


「私たち位の体重じゃ起爆スイッチを入らないようにしましたから!」


 本当に器用なトラップだと感心する。さて、どうするのか見ものだ。


「ブモォォォ!」


 ミノタウロスは吠えると同時に刺さったトゲを砕くと、トマホークの面積の広い方を縦にしてジャイアントスイングの要領で振り回して地面を削っていく。


 思ったよりこいつは知能が高い! 付近の罠が全て発動して棘が生えて来るが、そのままトマホークで粉々にされていく。そしてそのままこっちに突っ込んで来た。


「ほぼ最悪の予想と一緒だが、これも作戦に入っているのさ!」


 ある程度潰されるのは想定内なので問題無い。


 俺は足元の大型の罠に氷刀を突き刺して発動させる。大きめの氷柱を斜めに発生させて、それに乗って俺の背丈の倍以上は有るミノタウロスの頭上を飛び越えてリィムの方へと自分を飛ばした。


 そして落下用の氷柱の罠をリィムが発動して階段の様になると駆ける様に降りながら後方を確認する。


「そして急には止まれないだろう! お土産だ!」


 俺を飛ばした氷柱にミノタウロスは急に止まれずにそのまま突っ込むと同時に氷柱が爆散して大量のつららが襲い掛かかった。衝撃で土煙が立ち込めて視認出来ないが確実に決まった筈だ。



 シュミレーションで数カ所におびき寄せる位置を決めておいて、回避用と誘い込んだ相手を攻撃する為に発生後に衝撃を与えると内側に爆散する2重トラップだ。


「そろそろ弱点に当たってませんかね?」

「そう言うのはフラグだな、用心して次のプランの位置へ行くぞ。」


 リィムがつぶやくがそれはフラグにしか感じない。俺はリィムの少し後ろに着地した瞬間、それは不意に飛んで来た。


「え?」


 声を出すと同時に数メートル前に居たリィムをトマホークの柄の部分が横薙ぎに脇腹を捉えて壁まで吹っ飛ばしたのだ。そして次の瞬間には斧の部分が俺の目の前に迫っていた。


「あ、これは避けれな……」


 そう思った瞬間、ハッキネンが表に出た。背が縮んだ事でトマホークは頭上をすり抜けてリィムが吹っ飛んだのとは別方向に飛んで壁に突き刺さった。


「言いたくないけど小柄で助かった。」


 ハッキネンがそう言うと、すぐに俺が表に戻る。危なかった……、ミノタウロスの奴トマホークを投げやがった。時間的に考えると攻撃と同時に投げているな。


「リィム!大丈夫か?」


 返事が無い、大丈夫なのか!?俺が内心焦るとハッキネンがすぐにフォローを入れる。


「ポンコツ、敵を見ろ! 死にたいのか! リィムなら生きてる。契約精霊の私には解る!」


 ハッキネンに言われてミノタウロスを確認すると、傷跡が無数に有るが平然と動いている。さらに傷も治っていくのが視認できた。


「あんだけ当てて、まだ弱点に当たって無いのかよ。コレで終わってくれたら楽だったのに。」


 不穏な第2ラウンドが始まる。

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