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第13話 目覚め

「ど、どうしよう!? このままじゃタツミが死んじゃう! お、落ち着くのよ。私が適切に動かないと助けられないんだから。」


 1人取り残されたティルが慌てふためいていたが、しかしすぐに落ち着きを取り戻すと大きく深呼吸をする。


 そしてすぐに下層へ向かうための道を探そうとするが、目の前に招かれざる客が現れたのだった。


「また下位精霊? 下手に精霊術が使えないこの状況で……意地悪にも程があるわね。」


 まるで通せんぼする様に大量の下位精霊が湧き始めた。まるで意志を持ってタツミ達を殺そうとする様にも感じた。


 時間も精霊力も無い。だったらこの場合はと最小限の身体強化を発動させて前方へと一気に駆け出して隙間を縫う様にすり抜けて行く。


「すぐ下の2層に落ちたのかしら? いや、この様子から見てもっと下。明らかにこの龍穴は私達に敵意を向けているわね。」


 冷静さを取り戻したティルは現状を冷静に分析し始めた。明らかに偶然で片付けるには都合が良すぎる。だとしたら精霊石を取りに来た自分達への敵意?


 いや、それでは今ままで取りに来ていた人達も同じじゃないと変だし、集落の精霊からの助言があっても良い筈だ。


 だとしたら考えられるのは、タツミ個人を狙ったかリィムと言う氷の精霊を狙ったかの2択に感じたのだった。





 ティルは駆け抜けながら2層へ降りる道を見つけたが、そこには大量の下位精霊がひしめいていた。


「この量は……すり抜けて行くのも無理そうね。本気でヤバすぎる。こんな時に彼女が起きてくれたら。」


 無い物ねだりをする様にティルは呟くが、すぐに覚悟を決めて駆け抜けて行く。


 流石に今度は数が多過ぎて攻撃を回避し切れずに大小様々な傷を負って行く。傷の回復への力も最小限にしているティルの動きが鈍って行くのが目に見えて分かった。


「グッ!? 何よこのスタンピードの様な状況は!」


 駆け抜けるティルの足へと深く下位精霊の爪が食い込むと同時に激しく回転しながら転がった。その全身は切り傷だらけの満身創痍だった。


「私もヤキが回った様ね。約束守れないのは心残りだけど。」


 感慨にふける間も無く周りに居た下位精霊が畳み掛ける様に襲いかかる。その時だった。


「ギリギリ回復したわ! ()()()()()! 精霊術を使って!」


 誰かの声が響くと同時に空間が大爆発を起こした。


「やっと起きた様ね! ヒジリ!」


「ゴメンね、ちょっと余計な力を使ったから遅くなっちゃったね。」


 爆煙が引いて行くと同時に傷が全て治って元気一杯のティルが満足気に立っていた。


 そしてゆっくりとその髪と瞳だけが黒色に変わって行くのが確認できた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「私が寝ててどれ位経ったの? タツミ君は無事だった? と言うか何で1人で行動しているの? タツミ君はどこ?」


 私はアルセインに確認をしたのですが……アルセインは怯えた様子で中に隠れてしまいました。


「アルセイン! 少しは答えて!」


「ひぃ! ごめんなさい! タツミは今のところは無事なのは分かるんだけど下層に落ちちゃって……」


 ん? ちょっと待って。今呼び捨てにしなかった? いつの間にそんなに仲良くなったのですか!? 私だって知り合って仲良くなりたいのに!


「ヒジリ! 感情がダダ漏れで怖いから! ちょっと落ち着いて!」


「あ、契約しているから感情が伝わるんだよね。忘れてたわ、でも言いたい事は伝わったかしら?」


「取り敢えず分かったから、一刻も早く下層に降りて探そう。恐らく時間もそんなに無いから急ぎましょう。」


 思ったよりも状況は深刻そうですね。取り敢えずあの時にタツミ君を助けるのは間に合った様でなによりです。しかし前より状況が悪化してませんか!?


「では私は裏に下がるから頼むね。私の精霊術は戦闘向きじゃないから。」

 

 私はアルセインと交代して行動を任せました。起きた瞬間からすぐに能力が理解できたからです。コレが契約して同化した効果なのでしょうか。


 そして自分の得意な分野も何となくイメージが湧いてきたので理解できました。恐らくですが自分の感情で具現化した精霊の力だからでしょうか? 頭に流れ込んでくる様に精霊力の使い方が手に取るように分かります。


 そしてそれはアルセインも同じ様でした。


「ふふふ……体が軽い! 精霊術が使いたい放題! 雑魚どもは全部蹴散らして行くよ! 今までお返しだ!」


 駆け抜けながらフレアボムとエクスプロージョンを打ち分けて下位精霊を蹴散らして行きますが……何でこの洞窟の壁は崩落しないのでしょうか?


 何か特別な力で守られている? それとも単純に頑丈なのでしょうか? 本当にこの世界は謎が多いです。


「そう言えばさっき余計な力を使ったって言ってたけど、何に使ったの?」


「アルセイン、誰か瀕死の人に触れてた? 生命の危険だと感じたから回復の精霊術を使用したんだけど……明確な意識は無かったから誰に使ったのかは分からないけど。」


「え? 瀕死の誰か? 記憶に無いけど?」


 おかしいですね? 確かにアルセインの手の先から瀕死の誰かを感じたのですが……ほぼ眠っていたので分かりませんが誰だったのでしょうか?


「そんな事よりもタツミに会った時に言うセリフ考えておきなさいよ! 人見知りを発動させてお話出来ない事だけは無い様にね!」


「え? あ、あああ、そうか! 強制的に会う事になるんだもんね……え、ええっと……ど、どうしよう? アルセイン何から話したら良いの?」


 助ける事ばかりに気を取られて会う事を失念していました! 何を話せば良いのでしょうか? 私は彼の事を色々調べていますがタツミ君は私の事を全く知りません!


 え? どう言う意味かですって? それは……私が一方的に知って彼をス……ストーカーの様に調べたからです。


 そ、そんな目で見ないで下さい。昔から病弱で人の輪に入るのが上手く出来なかったんです! 子供の頃から友達の輪に入れなかったのがそのまま中学まで引きずってしまったのです。


 結局は対人スキルが磨かれないまま私は「ぼっち」化してしまったのです。そして原因は私の生まれつきの体が悪い、世の中の普通の人が妬ましいと考える様になってました。


 そんな負の感情に私は支配されていました。でも中学2年の時に偶然にタツミ君の試合を見学した時に私の考え方は変わりました。


 その時からです、勝手な片思いをしていたのは。だからこの出会いのチャンスを何とかして生かさないといけません!


 でも緊張します! 誰か助けてください!


「1人で悶々としないでよ! 私も居るんだから何とかなるから!」


 アルセインに激励されましたが……元は私の感情から生まれた精霊ですから不安しか無いのですが?


「ヒジリ、今の感情はどう言う事かしら? 一応私の性格はあなたの潜在願望から生まれているんだからね?」


「知ってるよ……だから不安なのよ暴走しそうだから。」


「暴走って酷くない!? 流石にそこら辺は考えるって!」


 私達の口論は続きながらも奥へと、タツミ君の元へと駆けて行くのでした。

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