終わった後の、その世界(2)
どうやら、ここは所謂異世界の「ジパングちほー」らしい。否、正確には異世界でのメインストリームであるナーロッパ的な、つまりは中世欧州乃至は近世欧州的な世界観ではなく、ナーロッパがあるであろう世界の中の、日本的な地方だと思われる。と、いうのも、だ。
「これ、じゃがいも警察的な人間が見たらまた騒ぐだろうなあ……」
まだ目覚める前乃至は目覚めても物心つく前であろう七五三的な写真を見て、結構な頭痛がする。え?七五三は江戸時代以降?さらには写真機となると幕末?だから言ったろ、「じゃがいも警察」辺りが騒ぎかねない無視っぷりだって。
と、いうのも、だ。この世界はどうやら、様々な時代の日本を組み合わせた、いわばヨーロッパ諸国の莫迦共から見た、「架空日本」であろうことが頷ける、文字通り忍者がいたりするニッポンポーンなのだろう。忍者がいる日本ってどこの日本だよ。いやまあ居ましたけど、江戸時代までは。でも忍者って言わねえぞ普通。お庭番とか、あるいは伊賀者とか。
……まあ、そういうわけで、だ。当然ながら天皇家は世界最長の魔法が使える家系だったり、藤原家に相当する公家の主流派なんかも当然ながら、特殊な術が使えたり、そういった人物を仕えさせている強力な貴族だったりする。当たり前のように安倍晴明が伝説の魔法使いとして扱われているのは、もう何もかもを諦めることにした。……なお、当たり前だが、「天皇家」にせよ、「藤原氏」にせよ、「安倍晴明」にせよ、全員名前他は異なる。所謂、「それっぽい立場にいた人物」を憶えやすいように渾名を付けているだけだ。
ちなみに、その喩えで行くならば、おれの立場は、朝廷に仕える女官乃至は朝廷出身の巫女とか、まあそんなもんだ。当然ながら、魔法が使える。少なくとも、認識は出来るだろう。ちなみに、年齢もだいたい理解できた。正確な数値まではわからないが、3歳~7歳のどこかだろう。と、いうのも、先程書いたとおり七五三の写真が一枚しかなかった。否、正確に言えば複数合ったのだが、全部今よりも背は小さそうだった。つまりは、3歳から7歳までの間の、次の七五三が来るまでの間だということだ。すると、次の問題が存在する。今の服である。……何で死に装束なんだ?一応、白衣で右前だから妙な気はしたんだが、頭にかぶせてある三角巾でそれは確定だと思われる。
……おかしいな、三角巾は仏教系統だからおれがかぶっているのはいろいろな意味でおかしい筈なんだが。
「…………」
「…………」
と、悩んでいるとふすまが開いた。あ、こっちを見ておびえている。うん、気持ちはわかるぞ。死んだと認識している人間が起き上がってうなっていたら、普通はビビる。
「ひっ、姫様がーーっ!!」
……あ、やっぱ「姫」なんや。記憶からしておそらくはそれっぽい立場かと思っていたが。