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悪の種子  作者: ひよこ1号


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王族の家族会議

船が離れていく姿を見送って、再びルディーシャがぐるぐると考えていると、ぼうっとした声でフローレンスが言う。


「お姉様……どうしよう……」


「どうかして?」


地上を見れば、黒髪の少女が手を振り返し、足下に居るフローレンスもそれに振り返している。

シヴィアの隣に立っていたアルシェンは国王に何事か囁けば、二人とそれから王妃もこちらを見上げて来た。


きっとわたくしに気が付いたのね。

でも、隠されたままでなくて良かった。

この子達の悲惨な境遇を見過ごしてしまうところだったのだから。


泣きじゃくりながら絞り出されるフローレンスの声に、ルディーシャは意識を戻す。


「お姉様と王子殿下は仲良しなのに、フローのせいでお城に来られなくなってしまうわ」

「あら、何故?」

「だって、お祖母様が約束を守るかどうか、分からないもの。フローの所為で……お姉様は沢山お勉強して、みみずの字も読めるのに……」


ぽろぽろとベールの下から零れ落ちる涙が、白い服に染みを作る。

ああ、とルディーシャは耐えきれずにフローレンスを抱きしめた。


この姉妹はお互いを大事に思って、こうして泣いてきたのだろう。

周囲の大人達が手を差し伸べてあげないと、将来までゆがめてしまうのだわ。


そのままルディーシャはフローレンスを抱き上げた。


「ね、泣くのはお止しなさい、フローレンス。わたくしが、貴女とお姉様を守ってあげますからね」


「……ほんとう?」


ひっくひっくとしゃくり上げながら聞き返す姿に、ルディーシャははっきり大きく頷いた。



***


フローレンスのいる部屋を見上げた時に気が付いた。

母上が、その背後に立っている事に。

迂闊だった、と舌打ちしたくなって、アルシェンは祖父に言った。


「母上に、話しませんでしたか」

「何も話しておらんな」

「何のことです」


二人のやり取りに、傍らの王妃も眉を顰めた。


一触即発の気配を敏感に察して、シヴィアが膝を負って礼をする。


「わたくしが妹を家には置いておけずに、我儘を申しました」

「違う。それは良いんだ。こちらの手違いで、はぁ、面倒な事に」


護衛を廊下ではなく、部屋に入れて鍵をかけるよう指示をすれば良かった、とアルシェンはため息を吐いた。

ただ護衛をしろ、何人たりとも部屋にいれるな、と指示をすれば、普通に廊下に立つだろう。

それを見れば王太子妃である母が見とがめない筈も無いのだ。


「まあいいでしょう。今から説明をして貰います。此処では何ですから上に参りましょう」


王妃の一言で、恐縮するシヴィアの手を引いて、国王と王妃が連れ立って歩く後ろを行く。

ちなみに父である王太子は、ぽつん、と中二階にある露台に立っていた。

何故、並んで見送る予定だった王太子妃が、二階の露台で幼い少女と船を見送っているのか訳が分からなかったに違いない。

母のいる場所を指させば、父も分かった、というように頷いて踵を返す。


「シヴィ、今まで伏せてきたが情報を共有する事にする」

「ええ。王子殿下の良きようにお計らいくださいませ」


素直に頷いたシヴィの顔は僅かに緊張していて、アルシェンは握った手にぎゅっと力を込めた。


自分がいる、と言う様に。


はっと顔を上げたシヴィアも、穏やかな笑みを浮かべて、ぎゅっと手を握り返してきた。

視線はアルシェンに向けないまま、まっすぐ前を見据えていたが、思いが伝わったようで差し迫った場なのに心が浮き立つようだった。


階段を上がって、二階へ行くと、扉は開け放たれて、両脇にアルシェンが配備した騎士が申し訳なさそうに立っている。

落ち度は自分の所為だ、とばかりにアルシェンは首を振った。


中に入れば、長椅子に座る父と、立ったままフローレンスをぎゅっと抱いている母が居る。


「さ、家族会議を致しましょう」


にこやかな王太子妃の声で、緊急の王室家族会議が始まった。

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