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悪の種子  作者: ひよこ1号


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40/69

友との別離

「ごめんなさいね、アルシェン。ご迷惑をおかけするわ」

「いや、いいんだ、シヴィ。あの野郎、シヴィが見送りに来れないかも、って言ったら何て言ったと思う?俺に会わせるのが怖くて隠したんだろうって言いやがった」


憮然として言うアルシェンの顔を見て、シヴィアはころころと鈴を転がすような笑い声を立てた。


「あらもう、アルシェンたら。ジフの悪い口調が移ってしまっていてよ」

「これなら俺も庶民に溶け込めそうだな」


ずっと一人称は丁寧に私、と言っていたのに、この間から少し崩れている。

でも、男の子らしいといえばらしいのだろうか。

きっと、公的な場面ではきちんと紳士の仮面をつけられるのだから問題ないだろう。


「わたくしまで移ってしまいそうだわ。さっきも大声で笑ってしまってはしたなかったもの」

「いいじゃないか。笑っているシヴィの方が好きだ」


真正面から好きだと言われて、思わず驚いてアルシェンを見れば、アルシェンの方が多分驚いた顔をしている。

かあっと赤くなって、言い訳を開始した。


「いや、違う、どんなシヴィでも好きなんだ!……ではなくてだ、な、その、悲しい顔よりは笑っている方が、いいと、そういう意味で……」


しどろもどろになるアルシェンを、周囲の騎士も侍女達も微笑ましそうに見守っている。

衆人環視の中で言われては、流石にシヴィアも頬を赤く染めてしまった。


「わ、分かっておりますから、落ち着いてくださいまし」

「そ、そうか、すまない」


フローレンスはずっと馬車の中でも良い子にしていた。

アルシェンの用意してくれた護衛騎士が二人と侍女がいて、身の回りの世話と警備をしてくれるという。

騎士の一人に抱き上げられたフローレンスは小さい手をばいばい、と振った。


包帯で湿布を包んで巻いていた手も、腫れが引いてきたので長くて白いレースの手袋の上に、長そでを着せている。

足もドロワーズの下に同じようにレースのタイツを履かせていた。

頭には頭をくるむ布帽子と、その上からレースのベールを付けている。

網目は細かいので余程近づいて見ないと分からないが、付き添いの三人は既にアルシェンから説明済みだ。

侍女は顔色を変えずにいたが、騎士は何とも痛ましい目でフローレンスを見ている。

大事そうに運ばれて行く後ろ姿を見送って、アルシェンと王家専用の桟橋の前でアジフとアジールの登場を待っていた。


二人が照れていると、ブオォと大きな楽器が鳴らされて、異国の音楽と共に絨毯の上を二人が歩いてくる。

先に進んできた召使が、頭の上に抱え上げた籠から花弁を掴んでは絨毯の上に投げて散らす。

皇女と皇子はその花びらを踏みしめながら歩いてきて、国王と王妃、アルシェンとシヴィアの前にやってくると立ち止まった。


「この度は歓待に感謝する。これからも良き友人として」

「これからも良き友人として」


異国風の挨拶を国王も繰り返して、握手を交わす。

アジフの堂々とした振る舞いは、流石強大な帝国の皇子たる覇気を纏っていた。


「シヴィ。どうやら王子の籠から抜け出せたようだな」

「あら、わたくしはずっと籠の上にいましてよ」


不遜な言い方ではあるが、アジフはゲラゲラと満足そうに笑った。


「ではいつか、攫いに来るとしよう」

「わたくしには翼がある事をお忘れなきよう」


さらっと拒否の言葉を言えば、今度はアルシェンが嬉しそうにニヤニヤと笑う。


「せいぜい楽しみにしているぞ、ジフ」

「くたばれ」


「ああ、シヴィ。貴女と離れるのがこんなに辛いなんて思わなくてよ。国に着いたら真っ先に貴女への手紙を書きますわ」

「ええ、ジル。わたくしも、貴女からの手紙をお待ちしておりますわ」


皇女と公女が抱き合う姿は、両国の平和を象徴とするようで、あちこちで歓声が上がっている。

皇子と王子は、腕と腕を合わせて挨拶を交わした。


「次こそは剣で勝負をするぞ」

「おう!」


そこでもわっと歓声が上がり、アジールとアジフは船へと乗り込んでいった。

船上から手を振る二人を見送りながら、アルシェンとシヴィアも手を振り返したのだった。


四人のわちゃわちゃは和むので書いていて楽しかったです。

またそのうち。

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― 新着の感想 ―
わちゃわちゃ待ち遠しぃ〜
4人とも微笑ましくて読んでいて癒されます笑
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