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悪の種子  作者: ひよこ1号


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38/69

母と息子、そして邪魔者

ディーンは迷っていた。

いや、状況からすれば迷う事は許されないのだが、それでも母、ディアドラは怖い。

殆どその恐ろしい矛先は自分へ向けられたことは無かったが、それは偏にディーンが後継だからだ。

自分の息子だから、という愛情もなくはないだろう。

だが、公爵夫人でいる為の繋がりだというのは大きい。

ディアドラは確かに恐ろしいが、それ以上に怒らせたくないのは娘のシヴィアだ。

幼い頃から、娘は優秀だった。

天才と言われればそうかもしれない。

優秀な家庭教師をつければ、地に水が染み渡るかのように知識を吸収して、礼儀作法は元より多言語を習得して、読書の幅を広げた。

更に、算術を修めて、領地の運営にも携わるようになったのだ。

お陰で、公爵位は無事、病身の父から娘へと譲渡された。

全ては順風満帆。

だったはずなのに。


廊下をノロノロと歩きながら、母の部屋の扉をノックする。


「入りなさい」


声を聴いてから部屋に入れば、ディアドラは警戒するような目を向けた。


はぁ、面倒くさいなぁ。


ディーンはため息を大きく一つ吐いてから、困ったようにディアドラを見つめる。


「母上、あれはやり過ぎだ」


「何のことです?」


分かっている癖に、ツンと横を向いて澄ましているディアドラに、ディーンは扉の横の壁に寄りかかりながら続けた。


「お分かりでしょう。フローレンスの事ですよ。私の子供を殺す気なのですか」


「まっ、あの位では死にません。現に生きているでしょう」


「瀕死の状態でね。シヴィアは怒っていますよ」


だからきた、と言わんばかりにディーンは言う。

公爵位を譲られ、王家とも懇意にしているシヴィアがいなくなったら、困るのは自分達だ。

実務を取り仕切れる知識と才能を持っているのも、シヴィアなのだから。

彼女が居なくなることも、仕事を放棄されることも、どちらをされても困る。


「……そう。…それはやり過ぎたわね」


珍しく、横暴な母親が自分の非を認めた事に、ディーンは驚きを隠せなかった。

一応、自分の状況は理解できるだけの冷静さはあるようだ。


「いいですか。機嫌を損ねられたら困ります。あといくら何でも貴女の手で娘が殺されたなんて事になったら、醜聞どころの話じゃなく、捕まります。あの事だってあるのですから」


「お黙り!もう分かったわ。シヴィアにはきちんと対応します。もう出てお行き」


「分かったよ」


溜息を吐いて、ディーンはのろのろと身体を起こして、退出して行く。

反対側の壁際には侍女と小間使いが並んでいるが、皆目を伏せて立っている。

イゾルデだけが、公爵夫人の冷めたお茶を取り換える為に、小さな卓に近づいた。


「本当に次から次へと面倒なこと」


呟いてため息を吐くディアドラに、好みの紅茶を好みの温度に仕上げて目の前に置いて、茶器を片付ける。

イゾルデはディーンの言葉が気になっていた。

「あの事もある」とはどういう意味なのか。

公爵の毒殺未遂か、それとも異母兄夫妻の事故に見せかけた殺人か、その他にまだ罪があるのかもしれないし、分からない。

だが、何らかの不祥事に、彼も関わっているのだろう可能性は高まった。


「イゾルデ」

「……はい、大奥様」


思考の最中に声をかけられて、イゾルデは危うく反応を返してしまうところだった。

返事をしたイゾルデを見て、苦々しい顔でディアドラが問いかける。


「貴女、シヴィアに呼ばれたのですって?何を話したの」

「特に何も聞かれませんでしたので、フローレンスお嬢様をお守りできなかった事だけ謝罪致しました。シヴィアお嬢様からは、お咎めも無く。……ただ、大奥様には近々シヴィア様よりお話があるかと存じます」


「……そう。下がっていいわ」


やはり、殺すなら事故にしなければいけないし、中途半端な暴力はふるうべきではなかった、とディアドラは後悔した。

それに、未だに決めかねている。

フローレンスという邪魔な娘の存在をどうするか、を。


シヴィア←自慢の孫ちゃん 大事

カッツェ←目障りだけど、脱落したからもういいわ

フローレンス←邪魔

ディーン←無能だけど可愛い

リアーヌ←どうでもいい


ディアドラお婆ちゃんはこんな感じ。

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― 新着の感想 ―
息子と孫への認識がマトモでよかった。 (息子が無能ではなく主人公には劣る程度にしか認識していなかったら面倒だし)
ひぃいいいいい
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