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悪の種子  作者: ひよこ1号


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33/69

本当に欲しい物は誰かに貰いたくはない

「どちらが怪我をしても国同士の問題に発展しましてよ。もし勝負をなさりたいのなら弓になさいませ」


国同士の問題に言及するにあたり、シヴィアは姿勢を正して、言葉遣いも戻した。

アルシェンもアジフも、ふむ、と一考する。


「それもそうか」

「折角だから賭けをしようではないか」


納得して頷いたアルシェンに、ニヤリと不敵な笑みを浮かべてアジフが提案する。


「何を賭けるんだ」

「欲しい物に決まっているだろう」


うーんと、アルシェンは悩んで天井を見上げる。


「お前から欲しい物なんて、ないんだよなぁ」

「はぁ?世界屈指の富豪だぞ。何でも好きな物を望めば良いではないか」

「うーーーん??」


欲しい物、とシヴィアも思い浮かべた。

金に飽かせて手に入れたい物など、王子という身分ではなさそう、と思いつつ。

シヴィアにとって欲しい物は何なのか、考える。

目標にしているカッツェの幸福は、誰かに叶えて貰うものではない。

お金は公爵家にも潤沢にあるし、ドレスも宝石も今はまだそれほど必要にはなっていないし、最低限で良いのだ。


傍らのアジールに目を遣れば、アジールもうーん?と考え込んでいる。


「改めて聞かれると、そんなに無いものね、欲しい物なんて」

「ええ」


アジールの呟きにシヴィアも頷いて見せる、が嬉しそうなアジフの声が上がった。


「俺は決めたぞ。シヴィアを貰おう」

「駄目だ!シヴィアは物ではない」


うん?とシヴィアは首を傾げる。

欲しい物って人間も入る物なのかしら?

ばっとアジールも起き上がる。


「シヴィア、良いだろう?」

「ええ、宜しいですわ、わたくしの参加を認めて頂けるのなら」


「シヴィ!自ら賭け物になるなどと言うな!」


悲痛な声と真摯な眼で言われて、ずきりとシヴィアの胸が痛む。


「そうですわね。以後、気を付けます。では、わたくしの戴きたい物はジルに致しますわ」

「えっ?わたくし!?」


対岸の火事を楽しんでいたアジールが仰け反った。


「さあ、最後にお前の欲しい物を言え」

「分かった……俺が勝ったら、シヴィアに一生触れるな」


氷点下の冷たさで言い放った言葉に、アジフは呆気にとられた。


「それは欲しい物とは違うだろうが」

「では、触れないという約束を頂こう。お前の名に懸けて」

「クッ……面白みも遊び心も無い奴め……良いだろう。勝てば良いだけの話だ」


そして、男同士の思ったよりも真剣な勝負を制したのは、まさかのシヴィアだった。


「弓の名手だなどと聞いていないぞ!」

「ここまで得意だったとは……」


怒るアジフに、驚くアルシェン。

二人にシヴィアは微笑みかけた。


「あら、乙女には秘密が多うございましてよ」

「領地の狩りではそこまでの腕ではなかっただろう……」


何だかしょんもりとしながら言うアルシェンに、悪戯っぽくシヴィアは笑った。


「ふふ。花を持たせる程度の腕はあるという事ですのよ」

「くっそ……弓を指定したのはその為か!」


やさぐれて、どかりと地面に胡坐をかいてアジフが言う。

その言葉に穏やかな笑みでシヴィアは答えた。


「あら、何のことだか分かりませんわ。さあて、ジル、貴女はわたくしの物よ」

「ええぇぇ!ジフ、この馬鹿!貴方が女装してお相手なさいよ!……でも、約束は約束ね…何をすればいいの」


どんな事を要求されるのかしらと、眉間に皺をつくりつつシヴィアを見れば、シヴィアはくすくすと笑った。


「お国に帰られましたら、お手紙をくださいませね。わたくしのお返事にはかならず返事をして貰います」

「……まあ……わざわざ貴女の物になどしなくても、喜んで出しますのに」


もじもじ照れ照れとアジールは満更でもなさそうに身体を揺らしているが、むすっとした顔でアジフが言った。


「そこは普通、俺を望むだろう」

「……いえ、特には要りません」


一瞬考えて、シヴィアはにっこりと答えた。

アルシェンも嬉しそうに頷く。


「不用品だな」

「俺に対して冷たすぎやしないか」


文句を言うアジフに、呆れたようにアジールも言った。


「自分の言動を省みなさいよ、馬鹿ジフ」


不貞腐れたアジフ以外の三人がくすくすと笑い合う。

穏やかな時間が流れ、別れの日は明日に迫っていた。

皆様、良いお年を。

フローレンスが不憫過ぎるので、年明けと共に救出することにしました。

しばしお待ちくださいませ!

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― 新着の感想 ―
別にキマシエンドでもええんだよ(百合馬鹿
しびーイケメンすぎわろすw
新年早々更新ありがとうございます!!グレイシアシリーズからこちらのお話に流れついたのですが、とても面白く読んでいてうきうきします。
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