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悪の種子  作者: ひよこ1号


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32/69

異なる文化と価値観

手早く四通の手紙を書きあげたシヴィアは、アジフとアジールの待つ広間へと戻った。

国王陛下へのお詫びと、コーブス伯爵家への謝罪、家令と使用人への指示書に、ディアドラへの依頼の手紙である。

先に戻っているように伝えても、ずっとアルシェンはシヴィアの傍らで使者と共に待っていた。


「手紙をお願いね。それと詳細を知りたいから警吏隊の報告書も明日届けて頂ける?」


使者に手紙を渡しつつ、使者にも指示を出す。


「畏まりました」


深く頭を下げてから、使者は手紙を鞄に入れて急ぎ足でその場を立ち去った。


「……大丈夫か?」


「ええ、まあ。何があったのか分からないから、調べてから考えるわ。もうお祖母様に近しい使用人はいないから、フローレンスも酷くは扱われないでしょうけど……」


まさか、数日後の再会で衝撃を受けるほどの暴力をフローレンスが受けた事は、この時シヴィアにも予想が出来なかったのである。


次の日も、朝から双子の皇子と皇女に呼ばれて、アルシェンとシヴィアは共に過ごした。

イグナティウス帝国では双子が尊ばれる珍しい国で、王族も例外ではない。

基本的に長子が家督を継ぐのは基本なのだが、双子が生まれるとその二人が後継となり、共同統治となる。

その場合王族には配偶者は与えられるが、通常王と王妃が座る場所に双子が座す形になっていた。

後継者は二人の子供から選出されるのだが、その場合も先に生まれた双子が優先される。


ふと不思議に思った事があって、シヴィアは二人に尋ねた。


「もし王となる双子が同性で同じ人を好きになってしまったらどうするの?」


砂漠の国発祥の甘いお菓子と苦い茶を飲みながら、双子は顔を見合わせた。


「特に問題は無いな。まあ相手の意思も尊重されるが、交互に枕を交わす事になるだろう」


「何だか全然違う文化だな……」


お茶の所為だけではない苦い顔でアルシェンが言う。

シヴィアはそんなものなのか、と頷いた。


「豊穣の女神を信仰してますものねぇ。妻も夫も何人居てもいいのよ。養える財力があって、親の了承さえあればね」


寝そべったまま頬杖をついて、アジールが微笑む。


「わたくしもこれから何人も夫を薦められると思うとうんざり」


それもそれで大変ね、とシヴィアは頷く。

自分では決められない後継問題は、一人だけを配偶者にする国とは全く異なる苦労があるのだろう。


「まあ、よく言われるな。何人もの美女を相手に出来るとは羨ましい、とか何とか。でも考えてみろ。興醒めだぞ。ずらっと数百人美女や美男が並んでいたとしても、感情が動くかはまた別の話だからな」


「確かに。食卓の上に食べきれない程美味しい料理が並んでいても、食べられる量も決まってますしね」


やれやれ、と両手を広げてため息を吐くアジフに、甘いお菓子の名残を苦い茶で流しつつ、シヴィアは微笑んだ。

アジフもまた頷く。


「そうだ。旨いと思えるのは最初だけ。腹がはち切れそうになれば視界に入れるのも嫌になる」


「そうですのよねぇ。だから、わたくし達、面倒になって貴方達にもよくない態度だったわ」


首を傾けて言うアジールの言葉に、シヴィアとアルシェンは顔を見合わせた。


「何だ、単なる我儘と気まぐれかと思っていたぞ」


「何か訪れた者に失礼でもございました?」


アジールとアジフも顔を見合わせて肩を竦める。

切り揃えられていない後ろ髪を、アジフが掻きながら言った。


「気まぐれと我儘も無い訳でもないが、食傷気味だったのは確かだったな」


「最初は遊んでましたのよ。変な帝国語を聞いてね。でも王国語でも帝国でも言いたい事は同じ。仲良くして、結婚して、美しい、可愛い、綺麗、このあたり」


「変わり映えしなかったな」


それは飽きもするか、とシヴィアはアルシェンとため息を吐く。

アルシェンは偉そうに言った。


「じゃあ、最初の無礼は許そう」


「お前には別に許して貰わんでもいい」


不敵な笑顔で睨み合ってばちばちと火花を散らす二人に、アジールは面白そうな目を向けた。


「何なら剣で勝負をしたらどうかしら?」


火に油を注ぐその提案に、二人の間の炎はあっという間に燃え上がる。

ほぼ同時に立ち上がって言い放った。


「受けて立とう」

「望むところだ」


また厄介な、とシヴィアは困ったように見上げる。


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