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悪の種子  作者: ひよこ1号


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接待不要にて釣りを楽しむ


「大任を仰せつかってしまったわね」

「大したことはないさ、シヴィ。向こうだって子供だ」


肩を竦めるアルシェンを見て、シヴィアは形の良い眉を顰めた。

お茶会の招待状には既に断りの返事を入れていたけれど、おずおずと誘ってきた母親はきっと、シヴィアが母親を嫌っていて避けているのだと思っているだろう。

一応、防犯上の為、口には出来なかったのだが、海を挟んだ大陸の覇者であるイグナティウス帝国の皇女と皇太子の歓待をアルシェンとシヴィアが命じられたのである。

使節団と共に訪れた皇女と皇太子は馬車で数時間ほど離れた場所にある離宮で、一週間ほど滞在されるのだ。

最初の四日間は過ぎ、話し相手として歓待に駆り出されたのが二人である。

二日間、泊まってお相手をする事になっていた。

他の日はそれぞれ、別の高位貴族の子女も歓待という名の顔合わせに訪れている。

森に囲まれた優美な象牙色の城が現れて、その城の塀の内側にも広い庭園と小ぶりの森と湖を抱えていた。


「あら、池……というよりは湖かしら?お魚はいるの?」

「分からないが、多分いるんじゃないかな?」

「ふうん」

「釣る気だろう」


興味なさげに相槌を打ったのだが、ばれてしまっては仕方がない。

巻き込むべく、シヴィアは勝気な笑みを浮かべた。


「これでも領地では色々と経験しているもの。高貴な王子殿下についてこれるかしら?」

「まあ、優秀な王子様だからな、勝負をするなら受けて立とう」


乗ってきた王子に微笑みを返して、まずは大国であるイグナティウス帝国の二人がいる建物へと挨拶に行く事にした。

入り組んだ迷路のような廊下を案内されて、二人は大きく豪奢な部屋に通される。

部屋はイグナティウスの賓客が用意したであろう家具が置かれ、きめ細かな刺繍が施された絨毯が敷いてあった。

部屋の奥には大きな枕が幾重にも積み重なり、それに寄りかかる様に皇子が座り、その横には皇女が寝そべっている。

浅黒い肌に、灰黒色の髪、金色の瞳の良く似た二人が、部屋に通されたアルシェンとシヴィアに視線を注ぐ。


「オルファン国第一王子、アルシェンと申します」

「オルファン国レミントン伯爵家が息女、シヴィアと申します」


「歓待ご苦労。出て行け」


それだけ言って、皇子はしっしっと手を振った。

その横でくふふ、と楽しそうに皇女が笑う。


「………最低限の礼儀も無い様だな」


ピリ、と静かな怒りを向けるアルシェンに、シヴィアはくすりと微笑みを向けた。


「ちょうど良かったではありませんの。さ、釣りに参りましょう」

「良いだろう。何を賭けようか」


シヴィアの笑顔の誘いに、アルシェンも気分を直して笑いかけて立ち去ろうとすると、不遜な皇子の声がかかった。


「釣り、だと?」


無視しても良いのだが、これは外交である。

振り返ってシヴィアは冷たい微笑みを向けた。


「ええ。帝国では網で捕まえると聞いておりますが、釣りをご存知でしたか」

「フン、見た事は無いが知っている。一匹ずつ捕まえるとは効率の悪い事だ。頭も悪いとみえる」


皮肉気に笑う姿に、シヴィアはうふふ、と笑った。


「わたくし達のような貴族が何故、効率を求めて働かねばなりませんの。狩りと一緒で釣りは遊びですのよ。勿論命を粗末には致しませんので釣果は食事として頂きますけれど。……もう宜しいかしら?わたくし達も折角のお休みを無為に過ごしたくはございませんのよ」

「失礼する」


うきうきとした顔を向けて、アルシェンがシヴィアの手を引いた。

扉の方へ歩き出すと、再び声がかかる。

今度は皇女の方だった。


「貴女達、わたくし達を歓待しに来たのに何なのですか?」

「……それを不要としたのはそちらだろう?気分を害さない為に出て行くのですよ。では失礼」


部屋を出て、二人はくすくすと笑い合う。


「きっと怒られてしまうわ」

「いいさ、あいつらが出て行けと言ったんだ。私達は泣く泣く従ったのだから」

「あら、わたくしったら、貴方の貴重な泣き顔を見そびれたわ」

「勝負に負けたら見せてやろう」


二人は手を繋いだまま、最短距離で庭に出ると、湖へと走り始めた。

9歳と7歳がおてて繋いで走ってます。

割と育ってるけど、まだ大丈夫、なはず!

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― 新着の感想 ―
ここまで一気に読みました。 これからのシヴィアの奮闘が楽しみです。 その善良さ故に自分さえも断罪しようとするのは、 潔い半面、悲しいものがありますね。 どうか皆が幸せな結末になりますように。
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