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悪の種子  作者: ひよこ1号


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20/69

その罪は誰が負うべきものなのか

王太子妃ルディーシャもディアドラを嫌う一人である。

そろそろ引退を考えている国王の隣に座している王妃も同じだ。


王妃の話によれば、当時のディアドラの振る舞いは凄まじく苛烈で、気に入らなければワインをかけ、物を投げつけるような性分で、蓮っ葉な言葉遣いもまた嫌われる原因だった。

公爵家という権力を振り翳して脅し、結局すぐに人々から距離を置かれた。

公爵の友人でもあった国王陛下に、王妃の目前で迫った事すらあると聞いて、気分が悪くなったものである。


それだけではない。

王太子と公爵の息子ヒルシュは友人だったし、王太子妃のルディーシャと侯爵令嬢のフローラも親友だった。

とても幸せそうな二人の結婚も、継母のディアドラに邪魔をされると分かっていたから、全て水面下で事を運んだ。

晴れて婚約した後も、二人に対する嫌がらせや嫌味は絶えなかったという。

人を悪く言わないフローラが顔色を悪くして口篭もるほど酷かった。

それは孫が出来てからも変わらず。

二人が事故で亡くなったと聞いた時は、絶対にあの女の仕業だと確信した。

王家の伝手も使って調べたけれど、確たる証拠はあがらないまま。

親友達の子供が虐待されていると聞いても、他家の事情にはたとえ王族といえど介入できない。

何も出来ないまま、執務に追われていたある日、突然状況に変化が訪れた。

病で臥せっていたヒルシュの父エルフィアが、城に孫娘のシヴィアを伴って現れたのだ。


公爵と話した義父の国王も、孫娘と話した息子のアルシェンも、二人共がディアドラによく似た色の娘シヴィアが良い娘だと言っても、王妃も当然ながらルディーシャも信用できなかった。

何か魂胆があって、アルシェンに近づいているのだと疑心暗鬼になる。

きっとあの醜悪な女が、裏で糸を引いているのだと。

アルシェンを呼びつけて、シヴィアについて話をしてみると、呆れたような顔で言われた。


「祖母の罪を何故、孫娘が背負わなければならぬのです。それに色や姿かたちが似ているからといって、同一視するのは偏見ではありませんか。その様なお考えをお持ちだったことに、私は失望しています」


あまりに辛辣な答えに、ルディーシャは顔色を失くした。

そして思わず、売り言葉に買い言葉のような提案を突き付ける。


「ならば、その為人を試してみましょう。もしも、お前の思うような人物でなかった場合は二度と交流は叶わぬと思いなさい。当然、公爵位も取り上げます」


「良いでしょう。そこまで仰るのであれば母上、その疑念が晴れた際には母上にも責を負って頂きます。自分に不利益がない立場から、他人を暴いた時にだけ罪を科すなど公平ではありませんから」


優秀な息子に強い調子で言い返されて、ルディーシャは更に愕然とさせられる。

言っていることは正しい。

騙されていたとしたら、その者達から守る義務だってあるのだが、確かに濡れ衣を着せているのと同じだ。

痛くも無い腹を探られるのは、確かに気分の良い事ではない。

「試す」と言ってしまった手前、何らかの働きかけを無実かもしれない者に行うのだから。

気持を落ち着けて、ルディーシャは頷いた。


「良いでしょう。王太子妃として、次期王妃として、力の及ぶ事ならば叶えます」

「無理難題は言いません。交流しない、公爵位を取り上げると二つ条件を出されたので、こちらも二つ条件を出します。一つ目は、彼女がデビュタントになった際には、私と踊る許可を頂きたい。私の名ではなく、母上の名での指名です。もう一つは、彼女の望みを母上に叶えて頂きます」


「分かりました。それで構いません」


それだけの価値があるのかは分からないが、息子が相当信頼を置いているのは分かった。

けれど、叶えたい望みというのさえ、彼女の人品を試す機会になる。

それを推してまで、アルシェンは勝ち誇った笑みを見せていた。


偏見を持たれるほどディアドラが酷かった!

明日は更新お休み、短編シリーズを更新します。

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