第6話 神話小説
「ん…?ここは…?」
見上げる景色は、見知らぬ天井だった。どうやら俺は白雪銀河との戦いの後、気を失っていたらしい。
見知らぬ天井を頭上に、個室の扉を開き階段の方へと向かっていた。
ここは何処なのだろうか…?
シアムの家とは全く似ても似つかない間取りだった。
階段を降りると、リビングの所だろうか、そこでテーブルを拭いているシアムの姿があった。
シアムは、一度此方に視線を向けると心配そうに声をかける。
「大丈夫?アルシを助けてくれたんだよね?ありがとうね」
「お、おう」
「あ、あと、おじいちゃんが竜牙を呼んでるみたいだよ?」
「おじいちゃん…?」
どうやら、そのおじいちゃんというのはシアムの祖父らしく、そして、ここの主だという。
俺は、とりあえずここで休ませてくれたというお礼と共に、シアムがおじいちゃんの居る所へと案内してくれた。のだが、着いたところは、変哲もない棚の所だった。
「シアム…、意外と方向音痴か?」
「ふふっ、違うよ、ここであってる。ちょっと待っててね」
棚と棚の間の隙間に手を入れれば、こじ開けるように開こうとした。すると、なんということか、地下へと続く階段が現れたのである。
「さ、行きましょ?」
「お、おぉ…」
どうなってるんだ?ここの家は…?地下もあるのか…。
俺は、恐る恐るシアムの跡を着いていくことに。
すると、何かをくっ付けているような仕草をしている老人が居た。
「おじいちゃ〜ん!呼んできたよ〜」
「ん〜くっつかんな…ん?おぉ、シアムか、大丈夫なのか?休んでいた少年は」
「あぁ、俺は大丈夫だぞ」
「おぉ、君か…」
「あ、そういえば名前教えてなかったね、私のおじいちゃんの…」
「メットじゃ、よろしくの」
「俺は、神龍竜牙だ、よろしく」
「神龍…!?じゃと!?」
「お、おう、そうだけど?」
「あのお方と同じ苗字じゃ!」
メットは慌てて机にあったボロボロな本を取り出し、ペラペラと捲って竜牙に本の文があるところの方を見せる。
「ほれ!これじゃ!」
「神龍…竜翔…?」
「知り合い?」
「いや…?」
「そうなのじゃな…いや、しかし!同じ苗字がいるということは…この…この神話小説は真じゃ!嘘偽りもない!真実なのじゃ!」
「おじいちゃんったら、冗談はやめてよぉ、偶然、苗字が同じってだけで、そんな大昔にあったんじゃないかっていう物語が本物なわけ…」
「確かに神話小説は、そもそも神話自体夢物語のようなものじゃ…じゃがな?シアム、偶然にしては、漢字が一文字しか違わないというのは、例え作り物語にせよ、こんな奇跡、本物じゃなきゃありえんのじゃ!」
「でも…」
「あるんじゃねぇのかな?」
「じゃろ?」
「竜牙まで…」
「シアムが信じなさすぎなのじゃ」
「えぇ!?私のせいなの!?」
「そこでじゃ!竜牙君、君にはあるお願いを頼みたいのじゃが、いいか?」
「頼み事?いいけど…ここに来たばっかだしな…」
「じゃ、シアムが案内してやるんじゃ!」
「わかった…って言いたいところだけど…四天王としての役目が…」
頼み事が断念せざる負えない状況に至ろうとした時、階段の方から声が聞こえてくるのだった。
「そのことについては、俺に任せろ」
声がする方を向くと、バトルトの姿だった。
「お兄ちゃん!」
「あいつは…、確か…四天王一強い奴だったか」
「お兄ちゃん…それってどういうこと?」
「俺が、シアムは武者修行へと旅立った、と言っておく、そうすれば違和感なく納得してくれるだろう」
「しかし、バトルト。お主…こんなわがままなワシの願いを…」
「なぁに、身勝手な親父に変わって、俺がじいちゃんに親孝行だよ」
「うむ…そうか…なら孫の甘えにのるかの」
「それで、俺らに頼み事ってなんなんだ?」
「そうじゃな、言っとらんかった…それがな、この神話小説を読んでもらいたいのじゃ」
「えっ、これを?」
ボロボロな本の内容を見ると、所々文字が掠れて読めなかったが、読んでみると。
『今から、約数百万年前。最高神の位……神龍竜翔とのもの…性…竜…と仲良くなりし後…く泣く…印することに…。眠るは…あるほこら、そこにて、属…大…王が…』という文字だった。
「竜牙君という、まるで神話の生き残りのような者が居るということを信じるとすれば!この竜が眠る祠があるんじゃないかと、ワシはそう思うのじゃ!」
「それを、私と竜牙とで探しに行けばいいっていうこと?」
「そういうことじゃ!よろしく頼んだぞ!」
メットに頼み事を頼まれた後、城下町の外へ旅立つということで買い出しへと向かっていた。
そして、旅立つ準備をし終わり、朝を迎えた。
俺達はいざ祠探しへと向かうべく、スータト城下町の外へと向かったのだった…。