表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドラゴンデュアル  作者: 名無先戦士
第1章 舞い降りる竜の少年
4/7

第3話 竜牙VSアクトウ

「久しぶりだなぁ…?テメェら…」

地面に響くような低音の声がマイク越しから伝わってくる。

…奴等が、虐殺集団か…。体格がそこらの選手とは全然違う…まるで、マイクが1本の枝みてぇだ。

「とりあえず、自己紹介とでもいくかぁ…。一人ずついくぜ?1人目は詐欺の達人…ギサだ」

「あらあら…怯えなくともだいじょぉぶ…後で八つ裂きにして…あ・げ・る♡」

女装のつもりだろうか、ガタイの良すぎる体格では、女性の服がピチピチしずぎてまるで似合っていない様子だった。

「二人目は…殺人鬼…ガイサツ…」

「へへっ!この刃の餌にしてやるぜ…」

ガターを長い舌で舐め回すように自己紹介の後、喋り出す。まるで蛇が擬態化したかのようだった。

「三人目は、盗みの天才…セットウ…」

「貴方の心…いや…心臓を盗んでやろうか?」

パッツパッツのタキシードに身にまといながら荒い口調、紳士的な態度で喋り出す。

「最後に…この俺、虐殺集団のリーダー…アクトウだ…そして!この人質ショーのゲストが居るぜ!?」

セットウの方へ『こっちに寄越せ』と言わんばかりに手の動きだけでアピールし、従うかのように背負っていた袋を投げ渡した。

「ゲスト…その名も…アリス!」

そう名前を告げると観客は一斉にして騒がしくなる。

「アリスって子そんなに有名なのか?ソイ」

「確か…ウワサに聞くとこの街ギルドの看板娘だったような…」

「そんでもって…このアリスってやつは、四天王…シアムちゃんのお友達だとよ!?」

『シアムのお友達』というワードに驚きを隠せないソイ。

…なるほどな、だからシアムって女の子は今日不安気な表情って訳か…。

ソイの驚きを一度見し、その後虐殺集団の様子を、苛立ちを抑えながら見ていた。

そんな中、四天王観覧席では…。



「アリスぅ…アリスぅ…ど、どうじよぉ」

ガラスに泣き崩れるように座り込むシアムを片手で宥めながら虐殺集団の方を見つめるバトルト。

…くそっ、奴らめ、また人質ショーなどと…今日という今日は許せない…が、勝手にこの場から外すことは出来ない…畜生!どうしたら……。

バトルトは、四天王という邪魔くさい立ち位置のせいで助けてあげたいのと、助けてあげられないという葛藤。そして、醜い虐殺集団に対して二重にして怒りを密かに込み上げていた。

そんな中、ふと、ある記憶を思い出す。それは、自身が口を零した『四天王と同等の並々ならぬ強さを持った者がいる』という言葉にはっ!と閃いた。

…そうだ!奴が居たじゃないか…!頼む…!その力で憎き虐殺集団を倒してくれ…!

そう、心の中で願うように希望を胸にしまい込む。


アクトウは、アリスが入った袋を目の前に投げ捨て袋から姿を現させ地べたに正座として座らせた。

「それじゃ…早速…ショーの始まりとでもするか…」

腰に身につけた斧を手に取り、アリスの細い首元に刃の部分をかざし今にでも殺さんとしような雰囲気だった。

…ふっ、私の人生これまでね…。ありがとねシアム。こんな私に泣いてくれて。短かったけどつまらなくない人生だったわ…。悔いは…。

あれ?なんでなの?なんで…悔いなんてないのに…なんで、こんなにも…。

「テメェの人生…ここで終了だ!神でも祈って天界で気楽に住む想像でもしときな…!」

そう言いながら斧を遠心力で切りかかろうとする。

…ふふっ、今日晴天なのに…雨が降ってる。

「…嫌だ…死にたくないよ…」

小さな声で、震えたような声で、呟くように、助けなどないことを知りながら助けを求めて…言葉を零す。彼女の目尻の雫と共に。


「やぁぁぁめぇぇぇぇろぉぉぉ!!!」

途方の方から少年のような声が、疾走する足音共に、聞こえてくるのだった。

黒髪に隠れた希望の赤い瞳がアリスの目に映る。

振りかざす斧を彼方へ蹴り飛ばし、アリスの目の前に着地する。

「あ?誰だテメェ…?」

その言葉と共に、アクトウの方へと睨みつける。

「お前…さっきのあんちゃん…か?」

「あの大柄のおっちゃん…あんただってのは知ってんだよ…。女の子を殺す訳にはいかねぇんだ!」

大柄に対して小柄の体を全身で威嚇するように立ち上がり睨み続ける。すると、隣からニヤニヤと不敵な笑みを浮かばせたギサが寄ってくる。

「あら?かわい子ちゃんがなんか出てきたわ?もしかして彼氏?ふふっ、いいわねぇ、愛の形…♡それ見るとぶっ壊したくなるわ゛!」

「俺は別にこの子とはそんな関係じゃねぇぞ…ただ…人質の子を助ける為にやってきた…。神龍竜牙だ!」

「竜牙…さん…」

「アリスって言ったか、大丈夫だ。俺がアンタを助ける!」

そんな会話の最中。ギサとアクトウが耳打ちをしていた。

「…ねぇ?リーダー?あの子の排除、あたしがやっていいかしら?やり甲斐があるのよねぇ…♡」

「ふっ、邪魔者がいなくなるなら構わねぇ、思う存分暴れろ」

「了解♡」

耳打ちをし終わった後、アクトウは自分に被害が及ばないよう引き下がる。

「さぁ?竜牙ちゃん?あたしと遊びましょ?♡」

「何言ってんだ?おっさん。俺は遊びに来たんじゃねぇ!お前らを倒しに来たんだ!」

おっさんという言葉に額に怒りを込み上げる。

「あんたねぇ…!アタシはおっさんじゃない!美少女なの!わかる!?レディーにそんなこと言ったら嫌われるわよ!?」

「どう見ても服がピチピチのおっさんじゃんか…」

「テメェ…優しくツッコンであげたら調子にノリやがって…このクソガキが!!」

先程までの声とは想像もつかない程の漢の声が会場をコダマする。

「いぃ!?低っ!?」

「それに、クソガキなんかにオレを倒せる訳ねぇだろ!?」

「…た、倒せる…!それに、倒せそうになくても立ち向かう!この子が救えるのなら!絶対に諦めない!それが俺だ!」

「あっそ、これでも喰らって諦めな」

余所見をしながらのアッパーを繰り出される。

攻撃がくるのがわからず対応できずに上空へと投げ飛ばされる。

「竜牙さんっ!」

ビタンっという音と共に地面に叩き落ちる。

…つ、強い…。いや…?大柄だからなのか…?とりあえず…本気でやらねぇと人質の命を守るどころか俺が、俺の命が無くなる…!

「終わりか?えぇ?!何か言ったらどうなんだい?」

そういいながら竜牙の頭を踏み潰そうとする。その行動を読み取り、横へと転がるようにし、攻撃をかわす。

「ちっ!まだ生きてたのかい…!」

「へっ…アンタらは悪いやつだからこうするのはわかってる!」

これまで雑用という身分でされてきた事が今となって活躍するとはな…。そんでもって相手は大柄だ…。

「これでも喰らいな!クソガキ!」

砲丸のような重たい右拳が顔面かけて放ってくるその一撃を、上半身を後ろへ背けるようにし交わしていく。

「そんな…!なんでこんなクソガキに!」

「…くっ!喰らえ!」

そのままの体制で、右腕にかけて左脚で上空にかけ打ち上げるように蹴り上げ、遠心力でバク転し、着地する。

「アンタらの大柄が遂に足を引っ張ることになったな」

「どういうことよ!」

「知らねぇのか…?」

「大柄にとっての特徴はその火力…!だが、誰にでも欠点はある…それは…速度だ!」

自信気に笑みを浮かばせながら身構える。



シアムの背中に手を置きながら、その対面を観覧していたバトルトにだけ、その理由が伝わった。

…そうか…!虐殺集団は大柄故にその強靭な力でねじ伏せていたが…大柄だからこそ身軽さという欠点を抱いている。奴はそこを見つけ、自身の小柄である特徴の身軽さを利用させた。だからかわすことが出来たっていうことか…!

奴ならやれると思いながら観覧を続ける。その最中、竜牙はその考えと共にギサをあとちょっとの所まで追い込ませる。

「ぐっ…こんなクソガキに…ここまで…やられるとわね…」

「ふっ、おっさんもなかなかやるな」

「だから…おっさんじゃ…ないわよね…?」

そんな対話しているとギサを遮るようにアクトウが現れる。

「なによ…?悪党のくせにヒーロー気取りのつもり?」

「違ぇよ…なぁ、あんちゃんよ、俺と戦ってみねぇか?」

「はぁ?アンタと?なんでだ」

「元よりお前は虐殺集団を倒すんだろ?ならリーダーである俺を狙うのは当然の筈。それに俺を倒せば、そいつを殺さずに逃げてやるよ…こんないい条件…テメェには有難い話だろ?」

「ふっ…アクトウ…あんた、あの強さに賭けてみたくなったんでしょ?」

「ふっ…まぁな」

「…今まで無敗だった自分とやり合えるかもしれない相手が現れたから…やり合ってみたいってね!♡」

「なんだか知らねぇけど…その条件…約束するってんならやってやる!」

「あぁ、約束するぜ?まぁ俺を倒せたらの話だけどよ?」

互いに構え始め、互いに睨みつける。周囲に緊張感が走りだす。


コロシアムの選手通路の方で観戦していたソイは焦りをみせるように竜牙に声をかける。

「無茶だぜ…!竜牙!アクトウになんか叶うはずねぇ!そいつはギサよりも強いんだぞ!」

「無茶じゃねぇ!やるしかねぇんだ!絶対に負けられねぇ戦いなんだよ!」

「ふっ、良い心持ちじゃねぇか!あんちゃんよ!」

「いくぞ!」

お互いに疾走し始め、アクトウは左拳、竜牙は右拳を前に出し殴り始める。

互いの拳同士がぶつかり合いそこから衝撃波が放たれる。

「ぐぐぐっ!」

「そんなもんか?あんちゃんよ」

アクトウは余裕の笑みで声をかける。

…やっぱ、火力的には負けてるのか…!速度も殆ど同じだったし…どうすれば…!

相手の拳を受け止めるように掌にし、そのままそこを重心とし弧を描く様に自身の身体を持ち上げ頭頂部へかかと落としを喰らわせるも、ビクともせず。その足を掴まれ途方へ投げ飛ばされる。

「がはっ!」

「弱ぇな!残念だなぁ!」

そう言い狂人じみた走りで近付いてくる。

…クッソ!倒せねぇ…。このままじゃ…。あれに賭けるしか…ねぇか…!

ボロボロの身体を持ち上げるように起き上がり、右拳に力を込める。

その様子にいち早く気付くバトルト。

「あの黒髪…なにか仕掛けるぞ…!」

竜牙の腕には緑色のオーラが着火するかのように出現し始める。

「これで最後だぁ!!あんちゃんよぉ!!」

右拳を振りかざしながら攻め込んでいく。

「最後なのはアンタの方だ…おっさん…。ドラゴン……」

緑色のオーラを腕に纏った右拳を大きく振りかざすように放つ。

「ショットォォォ!!!」

力強い衝撃音と共に放たれる緑色のオーラは、徐々に龍の形に変化していきアクトウにかけて襲い掛かるように放たれる。

「な、なんだ!ぐっ、ぐあぁぁぁぁ!!」

オーラに身体を奪われ仲間の方へと向かってくる。

「ちょ!?待って!」

「り、リーダー!!やべぇ!ぶつかる!」

「いぎゃぁぁぁ!!!」

緑色に光り輝く龍のオーラは、天空へと登るように放たれ、爆発する。

遂に、竜牙と虐殺集団の対決は見事、竜牙が勝利を収め人質のアリスという少女を救う事が出来た。

その後、大歓声に包まれた会場の最中、竜牙は力を使い果たしのか倒れてしまう。

竜牙はソイに担ぎ込まれコロシアムの応急室へと運ばれる。





もしよろしければ、評価とブックマークよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ