第2話 バトルコロシアム 開幕。
「あんた、初参加か?」
そう曲がり角の方から話しかけるように声がする。
「そ、そうだけど」
恐る恐る様子を伺いながら答えた。すると、曲がり角の方の暗闇から姿を現す。前髪を上げた男がハニカミながら俺の目の前に歩いてきた。
「俺の名前はソイだ、よろしくな」
「俺は、神龍竜牙だ」
「へぇ、珍しい名前だな」
「そうなのか?」
「あぁ、そうだぜ?とりあえず立ち話もなんだし参加部屋行こうぜ?案内するからよ」
そう言いソイと共に参加部屋へと向かっていった。向かう際、あることについて話し合うことになった。
「なぁ?あの噂知ってるか?」
「噂?それってなんだ?」
「噂だぜ、噂、虐殺集団の恒例行事人質殺害ショーで女の子が選ばれたらしいんだ、あの子も可哀想だよなぁよりにもよってあんな奴らに人生終わらせられるんだからさ」
「な、なんだと…?人質が殺される…?」
竜牙は、勢いよくソイの両襟を引っ張り出し怒号を叫ぶ。
「なんで止めねぇんだよ!殺されるんだぞ!?なんで呑気にいれるんだ!」
ソイはその怒号に返すように喋り出した。
「俺だって止めてぇよ!でも、アイツのショーを邪魔なんかしたら俺が殺されちまう…」
「だったら!俺が止める!止めて女の子の命を救う!」
「そんなもん無茶だぜ!お前だって殺されるかもしれねぇんだぞ!それでもいいっていうのかよ!」
「たとえ無茶だろうがなんだろうが!救える命があるんなら何がなんでもやる!そうじゃないのかよ!」
竜牙の一喝に堪えたのか、『頑張れよ』と言い残し先に参加部屋と入っていった。
俺は、女の子を救う為、コロシアムが始まるのを待つことにした。
数時間後のこと。参加部屋に設置されていたモニターから映像が流れ始めた。そこに映るのはマイクを持った男性と、残りの四人が背後に居ながら喋りだした。
「さぁ!この会場に四天王達がやってきてくれました!右から紹介致しましょう!」
四天王に疑問を抱いたのか、ソイに質問をし始める。
「四天王って…なんなんだ?」
「そりゃ…このバトルコロシアムの最強戦士のことだぜ」
「へぇ…じゃあ、あの虐殺集団も倒せるのか?」
「さぁ?わかんねぇ、けど倒せたとしても多分救ってはくれねぇだろうよ」
「どうしてなんだ?」
「そりゃ…四天王は、このコロシアムで最後まで勝ち続けた選手としか戦っちゃいけねぇルールがあるからな…」
「変なプライドだな…。命はどうだっていいのかよ…」
「コロシアム自体、死人は少なからずいる。それを毎年見りゃ大したことじゃねぇって思うんだろうな」
「変な奴ら…」
再びアナウンスが四天王を紹介するモニターへと視界を映し、見始める。すると、チャラそうな男とボサボサの男が映り出した。
…なんなんだ?こいつら…全く正反対の姿してるけど…本当にこいつら強いのか…?
「バンガーさんとランガーさんで〜す!」
二人は手を観客の方へと振るが振り方も正反対のように小さく振ったり大きく振ったりしていた。
すると、モニターに向かってソイが大きく反応を見せ始める。
「よし!来るぞ!あの子が!また再び見れるぜ!」
「あの子?あの子って一体?」
「お前もあの容姿を見たら惚れるぜ?」
興奮をしながらモニターにかけて飛び跳ねるソイを横目に、再度モニターの方へと向ける。
「さぁて、いよいよお待ちかね…戦える美少女!シアムさんで〜す!」
「よ、よろしくね…」
竜牙にだけなのか、彼女が無理に作り笑顔をし、裏で何やら不安を抱いているということに気が付いた。
あの子…初めて見るが、なんか思い悩んでる様子だな…。
「なぁんか今日のシアムちゃん元気ねぇな…」
「わかるのか!?ソイも!あの子がなにか思い悩んでる様子を!」
「そりゃ…長年のファンだからな、推しの様子を気づけないなんて序の口だぜ」
「あの子があんな様子って初めてなのか?」
「そりゃ!勿論だ!いつもはこう…元気なんだけど…どことなく…作り笑顔というか…うっ…なんかそう考えたらこの後想像をも遥かに超える大災害が起きる予兆かもしれねぇな…」
「元気がないにせよ…そこまではいかねぇんじゃねぇかな…?考え過ぎだぞ」
「それほど滅多にねぇんだよ!」
会話してる途中、ある男の声がモニターから聞こえてくる。
「今回はよくぞお越しくださり誠にありがとうございます…良い大会になるよう期待してくださいませ」
キザにも思える口調で喋り出す男が気になったのかモニター方へと向ける。
「毎回アイツあんな口調なんだよなぁそれもシアムちゃんのお兄ちゃんだから悪く言えねぇし…シアムちゃんと一緒にいれて羨ましいぜ」
「アイツ…あの金髪の女の子の兄なのか?」
「あぁ、バトルトつってこの四天王の中でも最強らしいんだ、誰しもやつに勝ったことがねぇっていうぐらいに」
「そうなのか…それは凄いな」
自己紹介が終わったのかモニターの画面が真っ暗になる。
「あ、そうだ。竜牙。お前に話さなくちゃいけねぇことがあるんだけど…」
「えぇ!?勝ち続けないと人質のショーで救えない…!?負けると即退場!?」
「あぁ、言うのが遅くなった。実はそうなんだ」
ソイの話によれば、ここのコロシアムでは生き残りのサバイバル式らしく、勝ち続けないとこのコロシアム会場にいれることは出来ず退場させられるシステムだったらしいのだ。そして、急なタイミングでそのことを伝えられたのだからか、竜牙は驚きを隠せずにいたというのがこの現状に至る。
竜牙は人質の女の子を救う為、必ず生き残るというのを決心し、戦いの準備をし始める。
その頃、四天王特別観覧席では、見下したような態度をとるランガーの姿と注意するバンガーの姿があった。
「結局、生き残ったやつが現れてもどうせ四天王に負けて終わるのが目に見えてるんだよ…」
「そんなこと言っちゃダメだよ…お兄ちゃん…参加者が可哀想だよ…もしかしたら今日四天王に勝てる人だって…いるかもだよ?」
「あ?そんなのいるわけ…」
「いや?バンガーの言う通り今日四天王と対等に戦えるやつがいる…」
二人の会話に割り込む形で話を入れ込む男の声がする。
「バトルトさん…それって本当なんですか?」
「あぁ、先程闘気で調べたら一人、その才能を持った者がいた。」
「チッ、例のなんとかオーラってやつか」
バトルトは"闘気"というオーラを所持しており、そのオーラによって強さを測れる能力を持っていた。
そして、遂にコロシアムの生き残りをかけた戦いが今始まろうとしていた。
竜牙とソイは別のグループに振り分けられ、そこで次々と敵をなぎ倒していった。
その様子に驚きをみせる観客と四天王、そしてアナウンサーがいた。
「今回の参加者は一味違うぞ!?」
そう、盛り上がりをつけたアナウンサー。二人の強さに驚愕するランガーは手元にあった飲料を床に落とす。
そして、午後の部にかけた長めの休憩時間となった。見事生き残った竜牙達は他の参加者との戦いに向け体を休めており、その後、午後の部が始まろうとしていた時だった。
アナウンサーが声をかけようとマイクを取り出そうとする。
「さぁて、午後の部がやってきて…」
話出そうとした途端舞台の上空から四人組の人影が落下していくのがみえた。
四人組は強い衝撃音と共に着地し、一人の男がアナウンサーのマイクを奪い話し始める。
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