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雨が降っていた。
ああ、また夢の中だ。すぐにわかる。
なぜなら、僕は今、めちゃくちゃに妻を殴っているからだ。
本当の僕は、こんなことをする人間ではない。
妻は雨の中何かを叫んでいる。
雨の音が大きくて、何を言っているか聞こえない。
いや、これは雨の音じゃない。僕の怒鳴り声だ。
ああ、うるさい。
どうしてこんなにうるさいんだ。
こんなにうるさいと、拳に力が入ってしまうじゃないか。
妻の顔に拳がめり込んだ。頭蓋骨が砕けたのだ。目玉が飛び出して、顔の横にぶらさがる。
妻は何も叫ばなくなった。
ああ、静かだ。
静かになった。




