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「村長とは話せた?」
家の外に出ると、シモーヌが立っていた。
「待っていたのか?」
尋ねると、彼女は「うふふ」と笑った。
「森の奥へ行く気?」
僕は答えずに歩き出す。
「止めておいたほうが良いわよ」
彼女は僕が無視したことを気にもせずに、僕の背中に投げかけた。彼女の思惑通りなのは癪だが、僕は振り返って彼女に尋ねた。
「どうして?」
「あそこは聖域だから」
「君も、昔からそうなっていると言うのか?」
「うーん、それは正解ではあるけれど、答えとしては満点ではないわね」
「どういうことだ?」
「あなたは幸せ?」
シモーヌが近付いてくる。
「質問の意図がわからない」
「意図なんてないわ。今は幸せかどうか訊いているの」
笑顔ではあるけれども、何か圧力のようなものを感じる。彼女の問に思い浮かべたのは、妻の顔だった。彼女と暮らすことが出来て、僕は幸せを感じている。
「答えなくてもわかるわ。あなたは今、幸せを感じているはず。もし、あなたが知らなくても良いことを知ることで、その幸せが壊れると知ったら……あなたはどうする?」
体がくっつきそうなほど、彼女は僕に近付いてきて足を止めた。僕よりも少し背の低い彼女が、僕を見上げて微笑む。彼女の温かい吐息が顔に当たった。
「脅しか?」
シモーヌは弾けたように笑った。
「そんなんじゃないわ。ただ、何かを得るためには、何かを失うのは世の道理。タダで欲しいものが手に入ることはないのよ」
「何が言いたい?」
「今にわかるわ」




