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「本当に大丈夫?」
シモーヌが僕に問いかける。彼女は何かの薬草をゴリゴリとすりつぶしていた。その音が頭蓋骨に反響する。
僕は再び家の寝台に寝かされていた。頭の調子が悪いだけで、体はなんともないのだから、寝ている必要もない気がするが、シモーヌがどうしても僕を自由にしてくれない。
先程の水面に映った自分の顔を思い出す。あれは紛れもなく、昔の自分の顔だった。もう一度、何かに移った自分の顔を見る勇気がない。アイソプロトフォビア(鏡恐怖症)になってしまったようだ。
「妻に会いたい」
ぽつりとつぶやく。あの宴の席以来、妻には会えていない。何度か会いに行こうと思ったが、どこにいるのかわからないし、誰も居場所を教えてくれなかった。それでも、妻の姿を探して村の中をうろついたが、ついぞ彼女の姿を見ることはなかった。
目が熱くなり、涙がこぼれた。いい大人が情けない――タオルケットを引き寄せて、グイと顔を拭った。シモーヌが気の毒そうな顔をして、僕の顔にハンカチを当ててくれた。
「どうして、みんな妻に会わせてくれないんだ」
シモーヌは答えない。みんな、僕の本当に知りたいことには何も答えてくれない。この島は僕に優しくない。
みっともなくワンワン泣いてしまった。メンタルのバランスが崩れているのを感じた。




