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「すまない」
僕は傍らで眠っている彼女の寝顔をそっと撫でた。僕が彼女に謝ったのは、ハッピーエンドをプレゼントできなかったからだ。
「でも大丈夫。これからは、ずっと一緒にいよう」
船が海からの風を受け、荒い波に船体を震わせている。
空を見上げる。不穏な空模様だが、二人一緒であれば何も怖くない。たとえ、あの空が落ちてきたとしても。
彼女の手をぎゅっと握り、船の上から空を見上げた。今度こそ、僕はハッピーエンドを探すのだ。
どこにもないハッピーエンドを。
僕は目をぎゅっとつぶった。
僕たちの乗った船は難破した。