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派遣聖女3〜バリキャリ秘書〜

作者: 神楽

今年もボルテノバ大陸では春の訪れを告げるゲーテの花が咲き始めた地域から新春のお祭りが盛大に行われた。クーキセージョーキをもたらしてくれた聖女降臨から、賢者の一族の未知の薬品を始め、沢山の作物、商品が出回り、経済を潤した。

一時、調子こいた悪徳勘違い貴族共によって摂取され続け、激しい貧困の差が生まれてしまった時代もあったが、それを憂いた青年王族と貴族達によって、2人目の聖女が降臨され、今では平民でも当たり前に簡単な計算も出来、文字も読めるようになった為、騙されることが少なくなった。

お陰で少し余裕が出来、結婚出来る若者が増え、人口増加に加え、税収も増えた。

更には、少し都会に行くと、家督を継げない貴族の子息令嬢主催で、裕福な平民向けの婚活相談所が出来、娯楽の少ない時代に婚活パーティーが生まれた。

持ち寄った自社商会の自慢の製品を持ち寄り、子息による貴族との橋渡し、令嬢による製品のアイデアが生まれ、益々経済が回った。


だが、やはり人の常。どこにでも抜け道を探し、悪い事を企む者達がいる。

いくら捕まえてもどこからともなく湧いてくる。知恵を付けた事により、詐欺が多数発生したのだ。

その者達によって善良な者が割りを食うのはおかしい。

平民との関わりが深い、パーティーの主催者側が相談を受け、親族や知り合いに相談し、取り締まりを強化しているが、一度味をしめた詐欺集団の元を中々経てないでいた。


遂には、パーティーを利用した結婚詐欺まで起こり、貴族が関わっている以上、大きな問題になったのだ。

そこで、こんな時の聖女様。

第3回、聖女召喚が行われる事になった。



賢者の一族によって、儀式が行われ、各国代表者が居並ぶなか、史上3人目の聖女様が降臨された。



光が収まり、現れたのは髪型にもメイクにも一部の隙間もなく、体のラインにしっかり合ったピシッとしながらも女性らしさのある服装を身にまとった人物が現れた。


「少々お待ち下さいませ。」


高過ぎず低過ぎない落ち着いた音色で一声会場にいる者達に声をかけると、手に持っていた黒い板を何回も指でなぞっていた。


待つ事半刻 。


「お待たせ致しました。」


コツコツコツとヒールの足音を響かせ、1人の男性の前に進み出た。

この者主催国の王であった。


「お初にお目にかかります。こちらの国の王様でいらっしゃいますね。代表してご挨拶させて頂きます。わたくしこういう者にございます。本日は短いお時間ではありますが、どうぞよろしくお願い致します。」


と、小さな長方形の紙を渡されたが、生憎なんて書いてあるかわからない。


「早速ですが、今回の案件、法の抜け道対策、詐欺集団の摘発でよろしかったでしょうか?

法を一から学ぶにはお時間に限りがございますので、勝手ながらこちらの資料を用意させて頂きました。

数十通りの対策事例がのっています。

そして、こちらが簡単なQ&Aになります。よくある質問と回答をまとめたものです。」


どこからともなく現れた冊子を各国の王の元に一部づつ配りながらも、目配せし、お茶の用意を促している。渡された用紙には其々の国の言葉で事細かに書かれており、更に、グラフを使って一目でわかるようにもなっている。さりげなく表紙には国花が色付き、香り付きで描かれ、心配りに感心した。


「わたくしの用意出来る限りの資料にございます。わたくしの役割は王陛下方のお仕事が円滑に回るお手伝いです。

お渡しした資料がお役に立てれば幸いです。

最後に、わたくし事ではありますが、9年に渡りお付き合いをさせていただいている殿方がおります。

若い頃から役者を目指し、バイト生活の為、収入が安定せず、周りからは早く別れろと言われていましたが、この度、役者ではなく声優としてレギュラーを勝ち取ることが出来ました。

落ち着いたら結婚しようと言われたのを信じ、散々周りに結婚をチラつかせた詐欺だと言われましたが、今回、レギュラーをとった事で遂にプロポーズしてくれたんです。」


仕事をキッチリこなす宰相と女官長を掛け合わせたような女性が、ハニカミながらも、記者会見の芸能人よろしく指輪を見せてくれた。


「一見悪意を持った詐欺に見えても、努力の結果が伴わず、詐欺と周りから見える者達も少なからずおります。どうか、公平な判断を切に願います。

薄紅色の冊子は其々のお国で今後行われる詐欺のスケジュール、拠点の場所が書かれています。

お役に立てれば幸いです。

では、お名残惜しくはありますが、帰社の時刻が迫っておりますので、こちらに派遣終了のサインをお願いいたします。

まあ、結婚祝いですか!ありがとうございます!

こちらの宝石が似合うような夫婦になっていければと思います。

本日は良いお取引、ありがとうございました。」



そしてサイン記入後、爽やかな笑顔で光と共に還っていった。


何とも言えない爽快感が会場を支配した。


あの方の用意したものなら信じられる。


女性らしさを持ちながらも有能な手腕。


何も言わずとも必要としているものをスマートに同意しつつ、女性らしい心遣いも感じられた。


全てを詐欺と決め付けず、キチンと調べてから判決せよと釘も指し、何とも可愛いらしい笑顔で去って行った。



聖女帰還後、受け取った資料を元に、悪を取り締まり、聖女の恩に報いようと晴れ晴れとした顔で解散した。



が、改めて事細かに書かれた資料に目を通すと、ドンピシャな事例がいくつもあり、疑問に思った事もQ&Aで全て解決していくうちに、どこまでこちらを読んでいたのかと少し怖くなってきた。

そして、トドメとばかりにスケジュール通りに詐欺行為が書かれている時間と場所で起こり、拠点も資料通りの場所にあった。構成人数までピッタリだったのだ。


皆一言簡潔に思った。




聖女コワっ!








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