第786話 弁明
涼花さん、エルーちゃん、ソーニャさんの三人に問い詰められ、僕は言い訳くさく説明することになってしまった。
「というかエルーちゃんと涼花さんは私が『ニャンダカード』持ってる経緯、知ってたはずでしょ……?」
「どちらかというと、問い詰めたいのはあの青年達と肩を組んで悪巧みをしていたことさ」
「肩を組んで顔を近づけるなんて、破廉恥です……!ソラ様から好きにはならずとも相手方がソラ様のこと好きになってしまったらどうするのですか!?」
えっ……心配するのはそっちなの?
「いやいや、彼らは人種族には興味ないでしょう?」
「ソラ様は、もっと御自身の魅力を知るべきです!」
「ソラちゃんは命を救われたことへの恩義があるからモテていると思っているのかもしれないが、そうじゃないことをいい加減自覚してほしいな」
「いじらしいほどの可愛さがあることをもっとご自覚ください!」
「そうだそうだー」
ソーニャさんほどの棒読みでそんなこと言われても響かないよ……。
いじらしいほど可愛いのはあなた達のほうでしょうに。
「そ、そんなに褒めないでくださいよ……」
「そんな些事より、今はソラちゃんのことだ」
「どうかなさったのですか?」
そういえば涼花さんに無理やり連れてこられてきたの、忘れてた……。
「まぁ、ソラ様!お髪に潤いが足りません!まさかお風呂をサボって……」
「そういうレベルじゃないんだ。聞いてくれ、エルー君――」
「――な、なんてこと……!?」
「すまない、私が余計なことを言ってしまったばかりに……」
「いくら颯爽と助けてくださったソラ様にときめいていたとはいえ、お化粧で隈を隠されていたことに気付かないなんて……メイド失格です」
ときめいていたんだ……。
「ひとまず本日はもう帰って寝ましょう?」
「でも、エルーちゃんとはしばらく合わないって約束……」
「申し訳御座いません。私が間違っておりました……。こんなことでソラ様を苦しめるなんて……」
「いやでも、流石にこんなことでエルーちゃんに迷惑をかけるには……」
休日には会う約束しているのだから、これは僕の辛抱が足りないだけだ。
「迷惑をかけてくださいませ!私達はもう家族なのですから!」
「エ、エルーちゃん……」
手に触れた瞬間、心がふわっと軽くなる。
今まで眠るのが怖かったのが嘘のようだった。
やっぱりエルーちゃんには、一生かなわないな。
「今は、一時休戦です。もっと甘えてください、私の旦那様――」
甘く優しい言葉にお祖母ちゃんが重なって見えたように感じ、僕はエルーちゃんに寄りかかるように倒れ込むと、そのまま意識を失った。




