第784話 獣人
神樹国立学園の生徒達を縛り付けたまま生徒指導室までつれていき、詳しい話を聞くことにした。
「それで、どうしてソーニャさんが狙われるなんてことになっているんですか?」
「ナンパされた」
「は……?」
「私、案外モテる」
いや、確かにスタイルいいしモテるのは分かるけど……聖女学園じゃ他にもモテる人はいるような……。
「ソーニャさん、獣人種の中では、相当モテる方なんですよ」
「あっ……」
そういえば種族の事とか全然考えていなかった。
梓お姉ちゃんが普通に獣人種とカリモフえっちをしていたし、王族であるハイエルフのソフィア女王とハーフエルフのサンドラ女王が卵子転換で子供授かっていたから忘れていたけれど、異種交配って結構特殊で、一般に受け入れられている訳じゃないんだったね。
人工子宮などで子を生むまではハードルが減ったものの、そこでゴールではなく、子を育てるところにもまだハードルがある。
具体的には魚や虫を食べる魚人種と肉食の獣人種のハーフが生まれたとして、どちらを好んで食べるのかなんて分からない。
要するに異種交配は、生まれた後の研究があまりされていない種族がまだまだ多い。
だからこそ養育費にもお金がかかるかもしれない博打のような子作りは、聖女や王侯貴族のようなお金のある人達でないとできない。
ともあれそんなわけで普通の人種族なら人種族同士で子を生むし、獣人種なら獣人種同士で子を生む。
だから獣人種であるこの子達にとって、ソーニャさんは他の人種族よりもずっと魅力的に映って見えていたのか。
「あれ?でも獣人種って人狼族とか兎人族とか猫人族とかリス人族とか色々いるけど、そういうのって関係ないの?」
「そこは関係ないみたいですよ。獣人種同士なら両親の五分五分どちらかとして生まれるみたいで、ハーフ種にはならないんです」
この世界では成人が15歳なので、そういった種族の常識とか性教育っていう授業は中等学校時代にまとめて行うらしく、僕はそれを知るよしもない。
ゲームでも端折られるしね。
「分かりやすいのが、精霊種のようなものですね」
「ああ、そういえばイグニス王とアクア王妃は炎の精霊と水の精霊か……」
魔力が尽きない限り基本的に寿命がない彼らにとって子を生むことはあまり必要なことではなく、今のソレイユ王家にも子はいない。
でも成そうと思えば子はできるらしく、炎の精霊と水の精霊の子は炎の精霊と水の精霊どちらかになるそうだ。
これは染色体的な考え方と同じらしく、人の間でも男女の違いみたいなものらしい。
「草食か肉食かくらいの違いはありますが、それも好みの違いくらいで片付きますしね」
「それに共通して、発情期がある」
「あっ……」
発情期の獣人種がなかなかにヤバいというのはソーニャさんと神流ちゃん達で分かっていたけれど、女性ですらそれなら、思春期の青少年にはとっても辛いことだろう。
「つまり今回の原因は、この子達の発情期?」
「そう。でも断った」
「ソーニャさんにはソラ様がおりますから」
「それで手を出してきたところを、エルーが庇った」
それで守護の指輪が発動したのか。
「エルーちゃんも無茶するね」
「騒ぎにしてしまい申し訳御座いません……」
「いや、二人が無事でよかったよ」
事情を理解した僕は神樹国立学園生の方を向くと、少し震えていた。
流石に僕の婚約者だとは知らなかったようだ。
「さて君たち、私の婚約者かどうかは置いといたとしても、合意なしに手をあげようとしたことは流石に擁護できない」
「ひ、ひぃっ……!?」
「でも思春期の青少年の獣人の子のそういった欲を押さえきれないのも、まぁ分かるからさ……」
女の子に囲まれるこのような空間で過ごすということは、いわば焦らされているようなもので、色々と我慢することが多いのも事実だ。
だったらここは、ゲームの知識とアイテムの出番だ。
「ここに『にゃんだふる』の『ニャンダカード』があります」
「「!?」」




